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王国指名手配



 街道に出ると異常なまでの視線を浴びた。


「な、なんだ。『あの子』の美しさはッ!」

「なんて綺麗なメイドなんだ!」

「あの隣の男は何者なんだよ、クソッ……」


 商人や冒険者達の言葉が耳が痛い。


「なに見惚れてるのよ!」

「……い、いや、別に」

「あんなメイドの……、えっ?」

「お前だってあの『クソ男』を見てるじゃねぇか!」

「み、見てないわよ! 見てたのはアンタでしょ!」


 何やら痴話喧嘩を始めた冒険者カップル達。


(セリア〜……。帰ってくれぇ〜……)


 死ぬほど視線を集めてしまうセリアを嘆きながら、俺は苦笑するしか出来ない。


「ご主人様。どの馬車の護衛に付きますか?」


「……そうだな」


 グルリと周囲を見渡すが、周囲のざわめきの中に聞き捨てならない物が耳に飛び込んだ。


「あれ? アイツの『写し絵』……王都に張り出されてただろ? 確か第一王子の、」


 そこまで聞こえた瞬間に俺はセリアの手を取った。


(ふざけんなッ!! まだ5日だろ! もう『王国指名手配犯』にされてんのかッ!?)


 きっと俺を捕まえるのに躍起になっているんだ。おそらく懸賞金などもかけられ、憲兵総出で探し回っているに違いない!


 脳裏にはギロチンに飛ばされる自分の首。

 ゾクゾクッと背筋が寒くなる。


「ご主人様。やはり水浴びですか?」


「違うわ! さっきから何言ってんだ! 逃げるんだよ!! さっきの聞いたろ? 俺は『王国指名手配犯』にされてるんだよ!」


「……そうですか?」


「とにかく『閃光』を使って、この場から消えるんだ!」


「ご主人様に使用を禁じられておりますが……?」


 このポンコツメイドは本当に……。


 俺はグッとセリアを抱き寄せて口を開く。


「許可する! 早く逃げるぞ!」


「……承知致しました。《閃光フラッシュ》」



 セリアが呟いた瞬間に『世界』を置き去りにする。


 まるで世界に2人だけになったような感覚に包まれながら、そのあまりの圧倒的な力に身震いする。


(やっぱり俺の【未来視】なんて比にならない! セリアがいれば、俺はどんな窮地からも脱せれるぞ!!)


 ひどい感動に包まれているとセリアが声をかけてくる。


「ご主人様。『閃光』は1日3度しか使えません」


「……は、早く言えよ」


「申し訳ありません。それに反動で2時間ほど動けなくなりますので……」


「……ひ、人がいない水辺に行けよ?」


「承知致しました。一緒に水浴びですね?」


「水分確保だよ!」


 セリアは無表情のまま淡々と閃光の問題点を伝えてくる。『ギフト持ち』も言うだけで、利用しようとする人間達に狙われる危険性が降りかかる。


 一度セリアが連れ去られた時に「『閃光』の事は一生隠して生きろ」と命じたのは俺だ。それ以来、一切話題に上がらなかった『閃光』の真実に頭がクラッとした。


 ちなみに俺の【未来視】を知ってるのは、セリアと姉である『リリム姉様』だけだ。


(まぁでも切り札としては最強だな……)


 セリアがついて来てくれて、面倒は増える事ばかりだと思っていたが、王国指名手配犯にされた今、セリアの助力は必須になりそうだ。



(それに……、この景色はクセになりそうだ)


 

 『世界』を置き去りにする真っ白の世界。その中で無表情ながら、少しだけ頬を染めているセリアは美しかった。




 2人が去った街道では……。


「お、おい……『消えた』ぞ……」

「何だったんだ、あの2人は……」


 ポツポツと疑問を口にする商人や冒険者達。


「あの男の方は、第一王子に喝を入れた学友だろ? 王宮に招集されてた……」

「だ、だよな? 確かカーティス伯爵家の……」

「何か、ボロボロの服だったな……」

「あ、あぁ……」


 王都から荷物を運ぶ行商人達は不可解なギルベルトの姿に首を傾げているだけだった。








 森の湖を前に俺は木陰からセリアの水浴びを覗いている。俺はセリアが動けなくなった時間で済ませたので、とてもさっぱりとした身体と頭の中、セリアの水浴びを覗いている。


 あえて、もう一度言おう。


 俺はセリアの水浴びを覗いている。


―――紳士じゃなかったのか?


 などと疑問を抱くだろうが、俺は声を大にして言いたい事がある。


『紳士だからこそだ!』


 セリアは俺のメイドなのだ。いつ、どんな危険がセリアに襲いかかるかわかったものではない。だからこそ、俺は常に周囲を警戒しながら、セリアの水浴びを覗いている。



ゴクリッ……


 自分が息を飲む音が身体の内側に鳴る。


 綺麗な形の豊満な胸。

 細くしなやかなくびれ。

 キュッと張りのある美尻。


 美しい銀髪に湖の雫が垂れ、綺麗な紺碧の瞳は水面を反射する陽の光を受けて輝いている。


(……た、たまらん)


 もうこの一言に尽きる。


 俺は周囲を警戒しているだけだ。

 その過程で見えてしまっているだけだ。

 決してムッツリスケベなわけではない!



ピチャッ……



 湖の中のセリアは、ただの女神だ。

 トクンと心臓が鳴り、なんだかセリアが俺のメイドである事を忘れてしまいそうになる。


 ポーッとセリアを見つめていると、パチッと目が合い、慌てて視線を上にあげる。


 すると遠くに煙が上がっているのが目についた。


(む、村があるのか……?)


 今の今まで気づかなかったのは、近辺を警戒していたからだ。決してセリアしか見てなかったわけではない。


 メイド服を纏う事なく、前側だけを隠したセリアが歩いて来た。


「ご主人様。一緒に入られますか? お背中流しますが?」


「……煙だ。近くに村があるんだろう」


「……煙ですか?」


「セリア、早く服を着ろ! 出発するぞ」


「……はい」


 正直、頭の中はセリアの裸でいっぱいだが、俺達は絶賛、迷子中だったのだ。『閃光』で街道から逃げたのはいいが、気がついたら森の奥深く。


 ここがどこで、どうすればいいのか、わからなかった。それに、こんな森の奥深くまで手配書が回っているとは考えにくい。


 つまり……、


(み、見つけたぞ! 俺の『安住の地(ユートピア)』!!)



 住人にして貰うことで、のんびりと暮らす夢が叶うかも知れない。チラチラとセリアの生着替えを見ながら、夢の実現に胸を高鳴らせた。





〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

「次、どうなる?」

「更新頑張れ!」


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[一言] ギルベルト満更じゃないんだな…(笑)
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