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【SS】 セリアとの…… ②


 

 

―――港町 「フランダース」



「この街は終わりだぁ」

「嫌だ! 死にたくない!!」

「おかぁさぁーん!!」

「みんな早く逃げろぉお!!」


 逃げ惑う住人達の顔は恐怖に染まっているが、俺の顔は憤怒に染まっている。


 屋根伝いに街を駆け抜けクラーケンに一直線に進む。


 いつもの俺なら、そのクラーケンの大きさに弱音を吐き、こんな仕打ちをした"世界"を嘆くだろうが、



―――ご、主人、様……。



 頭にはトロットロの表情のセリアしかいない。

 いつもの無表情とのギャップは凄まじい。


 一刻も早く、さっきの続きに……!!


 心のどこかでずっと欲していた。


 逃亡中だったあの頃、何度、セリアと2人、山奥で過ごす事を夢想しただろうか……?



 『一生メイドでいろ』



 あの言葉に少しばかりの後悔を持ち続けた理由を、ずっと見ないふりをし続けた。



ドゴォーンッ! バギンッ!!



 鳴り止まない砲撃の音と、クラーケンの巨大な足に巨船がなす術なく大破される音。



(……お前に構ってる暇はない……!)



「《天眼予知》……」



 スローモーションの世界にダイブする。


 クラーケンの振り下ろす巨大な足。

 唸りを上げる海。

 絶望に顔を染める守備兵と冒険者達。


 その全てがゆっくりと流れていく。



タンッ!!



 高く高く、跳躍し、宝剣の柄を握る。

 創造するのは、数千の刃。



「《千剣乱舞》……!!」



 エリアとの戦闘時に編み出した宝剣の一種の型。




グザッグザッグザンッ………!!



 切り刻んだクラーケンを足場にして俺は地上に戻ると、もう振り返る事はなかった。


 魔力を足に巡らせるイメージのまま、セリアの元へと駆け出した。




ザザザッザザザッ……ザパァンッ!!



 細切れになったクラーケンが海に落ちる。まるで巨大な雨粒が一斉に降ってきたかのような音が鳴り響く。


 

ザザザァア……



 跳ね上がった海水は、また海に戻って行く。


 一瞬の沈黙の後……、



「「「「うぉおおおおおお!!」」」」



 割れるような歓声が沸き起こった。



 




バンッ……!!



 教会の扉を開くと、そこには巨大な十字架の前にポツンッと立っている俺の専属メイドとシスターの老婆が1人。



「ご主人様。おかえりなさいませ」


「おやおや、この人がセリアちゃんが全てを捧げたご主人様かい?」


「はい。セリアの全てです……」


「ふふふっ」


「しばらく離れの建物を貸して頂けますか?」


「ええ。礼拝者なんて年に数人しかこない寂れた恐怖……。好きにお使いなさい」



 老婆はそういうと、礼拝堂の奥の扉から去って行く。


「ご主人様。"離れ"を貸して頂けように取り計いましたが、よろしかったでしょうか……?」


 ステンドグラスから差し込む日差しを受け、薄く微笑むポンコツメイドは世界で1番美しいのではないかと錯覚してしまう。



 誰もいない教会。

 コツッコツッと歩み寄る俺と足音が響く。



ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ……



 心拍数は経験した事がないほどの物だ。

 ミーシャとの『初めて』よりずっと緊張している。



「……ああ。珍しくいい仕事だな」



ポンッ……



 言葉と共にセリアの頭を優しく撫でると、セリアは俺を見つめたまま、ジワァッと紺碧の瞳を潤ませる。



「……ご主人様、セリアの全てを奪って下さい」




 ポロッと流れたセリアの涙に、俺の理性は限界を迎えた。腕を掴み、教会に隣接する建物へと足を進める。



バンッ……



 扉を開くと、そこは綺麗に清掃されているダイニングキッチン。


「こちらです……」


 今度はセリアに手を引かれ、2階の一室に入る。


 まだ夕暮れ時、部屋には西日が差し込むが、おそらくセリアの顔のほうがずっと赤く染まっているだろう。



「ご、ご主人様、セリアからキスしてもよろ、」



チュッ……



 セリアの言葉を遮るように口を塞ぐ。


「ん、……あっ、はぁ……」


 苦しそうに少し口を開いたセリアに舌を差し込む。



クチュッ……クチュ……



「ん、はぁ……あっ、ん……ご主、人様……」


 セリアの甘い声とぎこちない舌の動き。


 必死に俺にこたえようとするセリアの精一杯のキスに、俺は更に煽られる。


「……セリア」


「ご主人様ぁ……」


 唇を離し、セリアを見つめる。恍惚とした表情に濡れた唇と綺麗な紺碧の瞳……。


「……どうする? お前は俺のメイドだ。これは本来、許される物ではない。お前はそれでも俺を望むのか?」


「……欲しいです。なによりも……、どんな物より、ご主人様からの愛が……」


「……ポンコツメイドめ……」


 メイド服を脱がし優しくベッドに押し倒す。



ドクッ、ドクッ、ドクッ……



「……綺麗だぞ、セリア」


 何度も、何度も、見たはずのセリアの裸体。

 いざ見方が変われば、それはとても美しい物だ。


 俺はもう止まれない。

 倫理観も、理性も、紳士としての尊厳も、あるじとしての決意も……。


 今だけはその全てを全てを捨て去り、"セリア・ベル・ロンド"という1人の愛しい女に……、



「んっ……はぁ、あっ……ご、主人様……」


 精一杯の愛を注ぐ。


「はぁ、……ん。あっ、あぁっ……」


 卑猥な音とセリアの甘い声が小さな部屋に響く。


 

「ご、主人、様……ん、はぁ、んんっ」


 涙を流しながら、俺を見つめ続けるセリアの青い瞳。セリアは俺の首に手を回し、ギュッと抱きしめ、


「ん、はぁ……あっ……ご主人様……、心からお慕いしております……」


 耳元で小さく呟くと、俺の顔を両手で包み込み、



チュッ……



 俺を求めるように唇を押し当ててきた。






「……ご主人様。おはようございます」


「……ん、あぁ。おはよう、セリア……」


 言葉を返しながらも、またシーツにくるまり、そっと目を閉じる。


 何度も、何度も、求め合い、交わった"見たことのないセリア"の表情の数々が頭に蘇りバッと起き上がる。


 そこにはいつも通りにきっちりとメイド服を身に纏い、紅茶を淹れているセリアが立っていた。


「……」

(……ゆ、夢だったのか……?)


「……? ご主人様?」


「……か、身体は大丈夫か?」


「……はい。ふふふっ、"微かな痛み"すらも幸福の証にございます」


 恐ろしいほど綺麗な笑顔に、バクンッと心臓が脈打ち、照れたように頬を染めるセリアに煽られる。



 セリアの手を引きベッドに引き入れる。


「……ご主人様」


「セリア。まだ足りないだろ?」


「……はい」


 俺は真っ赤になったセリアにキスをしたが……、




コンコンコンッ。



 寝室のドアではなくこの建物の入口から、ノックの音が飛び込んだ。



「ご主人様、誰か、」


「放っておけ、それよりも、」



コンコンッコンコンッ……



(なんだよ、邪魔しやがって……)



 俺は寝室の小窓から外を見て絶句する。

 尋常ではない数の住人が教会の丘を埋め尽くすようにゾロゾロと訪れていたのだ。



「『神様』がこの地に参られた!」

「神がこの街を救って下さったぁ!!」

「命あることに感謝を!!」


 住人達は満面の笑みだ。



「……セリア。【閃光】で逃げるぞ。どうせロクな事にならない……」


「……ご主人様。もう少し"寄り道"してもよろしいでしょうか?」


「あぁ……」


 言葉にしながら、このままどっか遠くに逃げてやろうかと思ったが、ミーシャとユノの泣き顔が頭に浮かぶ。


「……も、もう少しだけな?」


 セリアの頭に手を置き、そう付け加えた。

 幸せそうに微笑むセリアに軽いキスをした。






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[一言] セリア…おめでとう!
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