【SS】 セリアとの…… ①
―――帝国 フランド王国
"寄り道"。
セリアが選んだのは、帝国の南に位置するフランド王国の辺境都市「フランダース」。
漁業や貿易がさかんな港町が一望できる丘の上。
少し古びた教会がポツンと建てられており、隣接する建物を除き、辺りに建物は見当たらない。
「……セリア。"アレ"なに?」
「……"大きなイカ"でございます、ご主人様」
「わざとここに来たんじゃないんだろ?」
「セリアは、ご主人様からの愛を頂くのです。ご主人様がいくら神から愛されていたとしても、これは少し腹立たしい物があります」
セリアは《閃光》による反動で動けないながら、少し怒気を滲ませ、災厄級であるクラーケンを睨んでいる。
コイツはどこまでもポンコツメイド。(もしかしたら、『寄り道』という言葉の意味を理解していないのか?)と疑ってしまった俺をぶん殴ってやりたくなった。
クラーケンは目視できる位置におり、複数の船が布陣を敷き迎撃する瞬間のようなタイミングだ。
ふざけんな! クソ"世界"!!
俺はこれから……やっと……、やっと、コイツを……。
セリアを見下ろすと、無表情のまま俺を見上げていた紺碧の瞳をそっと閉じた。
「満足に動けませんが、頂けますか? ご主人様……」
「……アレが見えないのか!? このポンコツメイド!!」(頂きたいさ! 今すぐにッ!!)
「……セリアは我慢しておりました。ご主人様に口づけを頂いてから、ずっと……」
「……こ、ここ、外だぞ!? 教会あるし、クラーケンがいるし……」
(……煽るな、このポンコツメイドが!)
「セリアは気にしませんが……?」
「……ポンコツメイドが……」
("誰か"にお前の裸を見せたくないんだよ!)
チュッ……
「ん……、あっ……、はぁ、……ご、主人、様……」
セリアの柔らかい唇と甘い声に後悔が押し寄せる。
(……クッソ!!)
軽くキスするだけのつもりが止まらなくなってしまう。"憂い"を消して、完璧な準備を済ませてセリアとの"アレ"をするつもりだったのに、このまま……
クチュ……クチュッ、
「あっ、ん……ご主人様、変な声が……出てしま、います……ん……」
「……」
(コイツッ!! もう我慢できるかッ!!)
ふにゅッ……
「んっ!」
セリアの胸に手を伸ばした、その瞬間……、
ドォゴーーーン!!
街の方から、大砲の音が響き渡った。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
真っ赤な顔で瞳を潤ませるセリア。
大砲の音など、一切気にならなくなり、もう一度顔を寄せると……、
ドゴォーンッ!! ドゴッドゴォーンッ!
船から大砲が放たれる音が鳴り止まなくなった。
「うるっせぇえええええ!!」
「……ご主人様。セリア、はもう……、我慢」
「待ってろ! あの"クソイカ"を処理してからだ」
(俺だって"そう"に決まってるだろ!)
ふわっ……
動けないセリアを抱え上げ、教会へと足を進める。
「ご主人様……セリアからキスしてもよろしいですか……?」
至近距離でトロンとした瞳のセリアにピクピクッと顔を引き攣らせる。
(……ポンコツメイドがぁあ!! これ以上、煽るな!!)
顔に熱が襲ってくる。
「ダメだ……。俺が帰るまで待っていろ」
「……はぃ、ご主人様……」
まだ少し乱れた呼吸のセリアが堪らない。
紅潮した頬にセリアの綺麗な銀髪が映える。
コンコンッ、コンコンッ……
教会の扉をノックすが返事はない。
小さく首を傾げながら扉を開けると、そこはちゃんと手入れされている礼拝堂だった。
「反動が無くなるのは?」
「あと10分程度かと思います」
「ここでいい子に待っていろ。10分で戻るから」
「承知致しました、ご主人様」
セリアを椅子に座らせ、何かあったら即刻逃げるように伝えて教会を出ると、即、《身体強化》を発動させる。
腰に宝剣がある事を確認し、ふぅっと小さく息を吐き、
「……あの"クソイカ"……邪魔しやがって……」
猛スピードでクラーケンの元に駆け出した。
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