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諦めと希望



―――帝都「グランベル」 近郊



 簡易的な自己紹介を終えた魔王軍の四天王達を前に、俺は半泣き状態だ。



「じゃあ、ギルベルト様。あたしを"お嫁さん"にしてくれるよね?」


「……」

(うん、しないよ? するはずないよ?)


 「発言して逆効果になるくらいなら、沈黙してやる」と顔を引き攣らせる俺に、エリアはモゾモゾとして頬を染めている。


「えっと、あの……、もしかしたら妊娠してるかもしれないの……。お腹の奥の方がキューッてしてて……」


「……」

(妊娠してるわけねぇだろ、バァカ!)


「男の子かな? 女の子かな? ……きっとギルベルト様との子供なら可愛くてカッコいい子だよね?」


「……お、お前は妊娠してない」

(セリアァア!! 早く来てえええ!!!!)


「えっ? でもお腹がキューッてしてるよ? ゾクゾクして、熱くて……、なんだかモゾモゾしてるの」


「……」

(た、助けてぇえ! セリアァア!!)



 エリアは小さく首を傾げながら俺を見上げてくる。


 染まった頬と、明らかに最初に出会った時から成長している胸はユノと同じくらいになっている。


 正直、ちょっとかわいいがコイツは"壊れてる"。


 俺の"不幸"を詰め合わせたような存在が、このイカれた魔王だ。もし、万が一、俺にミーシャという妻がいる事がわかれば、何をしでかすかわからない。


(ヤバイ、ヤバイ。逃げたい、逃げたい!)



モニュッ……



 突然、左腕に至福の感触が襲いかかる。



「ハハ! エリア様ぁ。それは、ただ欲情してるだけだよぉ? ウチと一緒だね? ねぇ、ギル様? ちょっとでいいのぉ。少しだけ……、一滴だけでもいいからぁ」


 俺に擦り寄り、近距離で牙をのぞかせながら真っ赤な唇を舐める"白髪美女"、もとい、吸血王の"ミモザ"。


 俺の左腕を豊満な胸に挟み込み、モニュモニュしながら、俺の首筋に唇を当てて呼吸を荒くさせては血をねだってくる。


「ハァ、ハァ、……ウチ……、なぁんでもするよぉ? ギル様がして欲しい事、なぁんでも……」


 耳元の声に理性が飛びそうになるが、俺はミモザの胸を押して突き放す。※軽く理性飛んでる。



「……クフフッ……、ミモザ? 死にたいの? あんた……」


「んー? 死ねないよぉ……。ギル様の血を啜るまではねぇ?」


「あたしの"旦那様"になるってわかっててやってるんだろうね?」


「ハハ! そんなに消耗したエリア様なら、なんとかなりそぉかもぉ?」




ババババッ!!!!



「ミモザ……。貴様を殺す……!」


「やだぁ、ルシちゃん。冗談だよぉ……」



 堕天使、ルシフェルに黒羽を突きつけられたミモザは「冗談」と言うが、目は一切笑っていない。


 つまり、イカれ女が黙ってるはずがない。



「どけ、ルシフェル……! "我"の獲物だ……!」



モアァア……



 黒々とした魔力を放つエリア。黒羽を突きつけたままのルシフェルと、妖艶に微笑んだままペロリと唇を舐めたミモザ。



「ギル様に小石一つでも飛ばせば、消し炭にするぞ? テメェら……」

「……ギル様、我の背中に乗り、上空に避難しておきますか?」



 光り輝く"紅炎"をメラメラと身体に纏わせたジュラに、俺の足元に跪いて小さく首を傾げる天竜の"ガル"。



(……これ……、もう詰んでない……??)



 この場を終息させる事ができるのは、明らかに俺1人。きっと、「やめろ!」という一言でこの場は収まる。


 しかし……、


 それはコイツらに命令すると言うこと。

 つまりは、『新たな魔王』としての第1歩となるのではなかろうか……?


 そ、そんなの嫌だ!!


(セリア! セリア! セリアァア!! なんでここにいない!! ふざけんな! ポンコツメイド!!)


 自分で避難させておいて、無茶苦茶な言いがかりを心の中で叫ぶ、寂しがり屋の俺は逃亡手段がない事に全身から汗が噴き出る。



 いや、そもそも逃亡した所で、コイツら(ルシフェル以外)は明らかに俺を追ってくる。どこに逃げようが、俺を求めて地の果てまで追いかけてくる……ような気がする。


 俺が『俺』である限り、そうなるに決まってる。


(……いっそ、屠る?)


 いや、それは無理だ。

 シンプルにコイツらを一度に相手にするのは、めちゃくちゃ怖い……。


 エリアとの戦闘でかなり自信はついたが、嫌な物は嫌だ。そもそも、俺はのんびりしたいのであって、戦いたいわけではない。


 それに、ジュラとガルは、既に俺を信用しきった瞳……、俺の周りにいる『みんな』と同じ、信頼の眼差しを向けてきている。


 エリアはイカれているとはいえ、好意を示してくれている女。ミモザとルシフェルに関しては、シンプルにめちゃくちゃタイプだ。造形美に傷をつけたくない。


 この者達に剣を突き立てる事は、紳士である俺には出来ない……。


 結局、『詰んでる』って事だ。


 ……時間はかけれない。

 俺には初恋の相手おっぱいと自分のメイドを無茶苦茶にする約束が待っている。



「おい、いい加減に……ん?」

(お、おぉ!! 俺の祈りが通じたのか?)



 念のため《予知プレディクション》を繰り返している俺には眩い光が"見えた"が……、


(……い、いや、待て……"アイツ"、なんで姉様に連れて来てもらわないの? 『閃光』使ったら動けなくなるじゃねえか! 何やってんだよ、ポンコツメイドォオ!)



 ピタリと争うのをやめたエリア達。


 エリアはピクッと眉を顰め、ジュラはそんなエリアに警戒する。俺はそんらジュラを(出来たヤツだ)と少し感心しながら白目。


 残りの3人は特に反応する様子はない。敵意がないことが1番の反応と言っていいかもしれないが、俺はそれどころではない。



スッ……



「ご主人様。お食事の準備が整っております」



 降り立つと共に、地面に転がった俺の専属メイド。


(よく無表情でいられるな、おまえ……)


 もう一周して感心してしまっていると、あと2人の来訪が"見えた"。1人は当然とも言える姉様……、あと1人はディナ姉だった。


(はえっ? ……『白髪の悪魔』は?)


 念のためセリアを守るように移動しながら、とりあえずディナ姉(初恋のおっぱい)が無事でホッと一息ついた。





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