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盗賊、怖い。



 逃亡5日目にして、俺は死にかけている。



 王都から南の街道を横道に入り森を進んでいる。

 学園から飛び降りる時に小さなバッグを持って来たが、入っていたのは護身用ナイフとセリアの下着だけであった。


「ご主人様が嬉しいかと思いまして……」


 無表情で淡々と言ってのけるポンコツメイドは、本当に色々とやらかしてくれている。


 まぁ正直、『俺が手に取ったバッグ』に食料や水が入っているなんて期待はしていなかったが、果てしなくツイてない。


 小川を見つけ水は確保したが、動物の姿はない。いくらセリアが料理上手でも、木の実だけの食事はもう限界を迎えているし、野営は一切気が休まらない。



 そしていま、『死』に直面している。



「「「「ヒャッハァーー!!!!」」」」


「有金置いてさっさと死ね!」

「その女を連れ帰れば、お頭が大喜びだ!」

「ちょ、ちょっと『味見』してもいいかな……?」

「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」


 いままさに、4人の盗賊に絡まれているのだ。


 確かに質の良い服を着ているが、どう見てもボロボロで手荷物はセリアの下着とナイフだけ。


 この盗賊達の目的は明らかにセリアに見える。


(や、やっぱり、邪魔だった!!)


 チラリとセリアの様子を伺うが、キョトンと俺を見つめて首を傾げているだけだ。


 俺は(やれやれ……)と苦笑しながらも、《予知プレディクション》で常に相手の動きを警戒する。


「有金と女を置いてさっさと死ね!」


「す、少し落ち着いてくれないか? 見ての通り、金になるような物は持っていない」

(殺すなら置く必要ないだろ……)


「うるさい! 有金と女を置いてさっさと死ね!」


「……わかった。じゃあ、いい物をやるから、それで勘弁してくれ」


「……んあ? いい物ってのはなんだ?」


 俺はバッグからセリアのパンツを取り出しながら、こっそりと護身用ナイフを抜き取る。


「ご主人様。それはご主人様だけにしか見られたくありません。あんな『ヒャッハー』な者に見せるなど、死んだ方がマシです」


「……」


「ご主人様がここ数日、『それ』を支えに頑張って下さっているのをセリアは知っております」


「……は、はっ? いや、別に『売れるかなぁ』とか考えてただけだ! に、逃げるにしても金がいるだろ? だから俺はどうすればいいのか思案してたんだよ!」


「……そ、そうでしたか。申し訳ありません。ですが……、それはご主人様にだけ持っていて欲しいのです」


 セリアは無表情のまま少し照れたように頬を染める。


(め、めんどくせぇえ……)


 俺が苦笑を深めていると、盗賊が襲いかかって来るのが『見えた』。すぐにセリアを抱えて、その場を退避しようとすると、セリアは何を勘違いしたのか、俺をギュッと抱きしめてくる。



「ヒャッハー!」


 セリアに動きを制限されている屈んだままの俺は、セリアをそのまま押し倒して攻撃を回避する。


「ご主人様……」


 セリアは少し頬を染め、スッと瞳を閉じて口を少し前に出す。


(バ、バッカじゃねぇえのッ!! 可愛いけど、この状況わかってんのか!! 可愛いけどッ!)


 可愛いセリアのキス顔に心の中で絶叫していると、背後から片手剣を振るう盗賊が『見える』。



「ヒャッハー!!」


「『ヒャッハー、ヒャッハー』うるせぇええ!!」


 俺はチラリと盗賊を確認しながら、『そこに来るタイミング』に合わせて思いっきり後ろ蹴りをしてやった。



グシャッ!!



 見事クリーンヒットしたのは盗賊の股間。

 俺のかかとが、それはもう見事に打ち抜いている。


 

「プギャアアアア!!!!」


 凄まじい表情になる盗賊に、こちらまでブルブルッと寒気が走る。


 リーダーっぽいヤツは股間を抑えたままたたらを踏むとドサッと倒れ、白目を剥いてピクピクッと痙攣している。


「「あ、兄貴ぃ!!!!」」

「ふぅ、ふぅ!!」


 3人はすぐに駆け寄るが、ピクピクッと痙攣で返事をしているようだ。


「セ、セリア。今のうちに逃げるぞ……」


「……ご主人様、ま、まだでしょうか? セリアはいつでもご主人様に全てを捧げる覚悟は出来ております」


 セリアは綺麗なキス顔のまま小さく呟く。


「お前、本当にバカだな……」


「……ご主人様ならあっという間に掃除してしまうはずなのに、セリアに『待て!』をして愉しんでおられるのでしょう? さぁ、セリアはいつまでも待っておりますよ?」


「いやいや、そんな事はない」


「……ご主人様が押し倒したのでしょう?」


「攻撃を躱しただけだ……」


「そ、そうなのですね。承知致しました」


 セリアはパチッと目を開けると、スクッと立ち上がり無表情を装うが、耳まで真っ赤になっている。


「ご、ご主人様の前に立って5分。この者達はかなり優秀なのですね」


 セリアは真っ赤の無表情のまま口を開く。


(え、あっ。なんか可愛い……。じゃ、じゃなくて!! なんで『いつも』、『みんな』、『そう』なるんだよ!!)


 ミーシャや両親や姉兄、使用人まで含めて俺への評価は過大なのだ。


 それは、決して俺が優秀なわけではなく、『運』に見放され続ける俺が、なんやかんやで窮地を脱しているうちに勝手に築き上がってしまった物なのだ。


(……泣きてぇ。信頼が辛い……)


 もう本当に勘弁して欲しい。

 俺はいつだってギリギリなんだ。


 武装している盗賊と鉢合わせるなんて、死を覚悟する物なのに、専属メイドからの絶大なる信頼が辛くて仕方ない。


 セリアの中では俺はムッツリスケベだと思われているし、もうたまったものじゃない。スケベなのは認めるが、スケベである前に俺は紳士だ。普段は毅然とした態度を貫いているはずだ。(※それがムッツリスケベ)


「とにかく、逃げるぞ……」


「承知致しました」


 俺達が逃げる素振りを見せると、3人が慌てて襲って来るのが『見えた』が、放っておいても問題無さそうだ。


「兄貴の仇ぃー!!」

「逃げられると思うなよぉー!!」

「ふぅ、ふぅ、ふぅ!」


 最後のやつは喋れない病気か何かなのだろうか?



ズサァー!!


 先頭の男が石に躓き、後ろ2人も巻き込まれて勢いよく転んだ。


「触れる事なく一蹴するなど流石はご主人様です」


「……いや、どう考えても何もしてないだろ?」


「いいえ。あの石に躓くように、こちら側から逃走に入ったとセリアは考えました」


「……もういいよ。それより、少し走るぞ」


 もう色々面倒なので駆け出すと、


「待てぇえ!」

「ツラは覚えたぞぉ!!」

「ふぅ、ふぅっ!!」


 一斉に立ち上がろうとしてもたついているヤツらの声が響いた。


「……ご主人様。ご覧下さい」


 走りながらセリアに視線を向けると、チラッと胸元に指を食い込ませて、無表情で胸を見せて来ていたので、俺は即座に前だけを見つめ走った。


(本当に何してるんだ、コイツ……)


 不可解な行動に呆れ果てながらも、脳裏にはセリアの胸が焼き付いていた。


 



〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

「次、どうなる?」

「更新頑張れ!」


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