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『竜王』と終幕



―――帝都「グランベル」 近郊



「エ、エリア様……さ、先程の言葉は……一体?」

「ハハ! エリア様って女だったんだぁ。おもしろぉい」

「……まさかこのような秘密があったとはな……」



 "黒髪天使"に"白髪美女"、"白黒イケメン"がエリアに詰め寄っているが問題はそこじゃない。



「俺は"ジュラ"。この度、『ギル様』に忠誠を誓った"煉獄炎"の竜です! ギル様に付き従い、ギル様が作る世界が見たい……。これから、よろしくお願いします!!」



 片膝を地面につけ跪く"真っ赤イケメン"。

 赤髪赤眼、目元には大きなギズ痕があるが、普通に整った容姿をしている。


「……」

(な、いや……、はっ? こ、こっわ! 何言ってんだ、コイツ!!)


「……どうかしましたか? ギル様は『竜王』なんです。竜種を従えるのは当たり前でしょ?」


「……"竜王"? な、なんなんだ、それは……」

(無理無理無理無理! ヤバい、ヤバい!!)


「……? ユグドラシルに選ばれてるじゃないですか」



 俺は自分が握っている『宝剣』を見つめて顔を引き攣らせる。


 えっ? エルフの宝剣だろ?

 な、なんで竜種が出てくる? 暴虐竜はなんか関係あるのか? "チア"もそんな事言ってなかっただろ? いや、言ってたのか? 酔っててあんま覚えてない!!


 エルフの長であり、ユノの祖母である"チアド"との会話を反芻するが、"多分"そんな事は言ってなかったはずだ。


 ぶっちゃけ、理想郷ユートピアを見つけた気になっていたし、『予言』が怖かったし……、俺の事を救世主だと歓喜するエルフ達に酒を注がれ続けた記憶しかない。



 沈黙を続ける俺に、"ジュラ"はニカッと人懐っこい笑顔を浮かべる。


「ガッハハ! 気にしないで下さい! 俺がギル様に惚れちまっただけなんで……! これから先、俺はギル様の手となり、足となり、どこまでもついて行きますよ!」


「……ハハッ」

(怖ぇよぉおお!! なんか、マジで怖ぇよぉ!!)


「俺に任せて下さい! 役に立てるように頑張りますよ! まずは何をすればいいですか?」


「……ハハッ……」

(て、て、丁重にお断りしよう)


 何を言っても逆効果にしかならない気がする俺は、乾いた笑いでその場を濁す。



 『竜王』だかなんだか知らないが、そんな物はごめんだ。これ以上、俺に役職を増やすな! 俺はひっそりと自由に、何もせずに、かわいい妻と専属メイドと"可愛い"の権化エルフと……穏やかに暮らすんだ!


 なんで竜種なんかの面倒見ないといけない!?

 このイカれ魔王もだ!!


 ってか、黒髪天使はもちろん、隣にいる白髪美女はなんだ!? 控えめに言って、めちゃくちゃタイプなんだが……!?


 いやいや、違う!!


 もうマジで面倒くさい!!


 もう嫌だ……。……帰りたい。


 セリア……。ミーシャ、ユノ……。


 泣きたい……。

 なんで俺ばっかりこんな目に遭うんだよ。


 もう本当に勘弁してくれ……。



 嘆きに嘆いた俺は『ある事』に気づく。


 

 いや……!! 待て!


 なんかよくわからんが、竜種を従えるって、これからの『不幸』を、コイツに丸投げ出来るって事じゃないか?


 ……!! それだ!

 見つけたぞ! 俺の理想郷ユートピア!!


 上手くいけば、全てが丸く収まる!

 というか、それ以外には思いつかない!!



 『理想郷を自分で作ってしまえばいい!』



 ユノの『幻術』で完璧に隠して、このジュラとかいう竜種に守らせればいい。上手く交渉して魔王も城に帰らせ、たまに頭を撫でて機嫌をとってやればいいだけだ。


 なんで気づかなかったんだ。

 本気で消えてやれば済む話だったんだ!


 よしよし……。コレはいいぞ!

 景色がいい所に豪華な家を建てよう!


 今回の件は、結果として帝国を救ってるし、交渉すればドワーフ達に理想の豪邸を作って貰えるかもしれないよな?


 ハハッ!! ざまぁ見ろ! "世界"!!


 もう巻き込まれようがない!!

 完璧だ!! これこそが『理想郷』。


 スローライフの完成形だ!!


 結論を導き出した俺はほくそ笑み、


(ディナ姉を救出して終わりだ!!)


 『白髪の悪魔』を対処さえすれば『憂い』が消える事を実感する。



「……わかった。期待しているぞ、ジュラ」


「はい! 全てをギル様に!」


 ジュラの笑顔にコクリと頷きながら、ふと疑問が頭をよぎる。


(……ってか、コイツを信用しても大丈夫なのか?)


 あれ? ……なんでこんな危険な生物をすんなりと受け入れてんだ、俺……? ……ま、まさか、『嵌められた』のか!? 世界にッ!? あり得ない事の連続を突き付けて、俺を誘導したのか……!?



ゾクゾクッ……



 キラッキラのジュラの赤い眼。


(ま、待て待て待てぇええええ!!!!)


 今更、無かったことにすると言ったら、ブチギレて襲いかかって来たりするんじゃないのか……?


 ま、まぁ……いいか。

 いざとなれば、ぶった斬ればいいし。

 ふっ……、気が休まらないスローライフなんて、クソじゃねぇか!!



「ギルベルト様! さぁ、《契約》しよう!! ……って、何してるの? ジュラ」



 顔を青くする俺に、何やら話していたエリアはご機嫌で声をかけてくるが、それ以上にジュラの行動が不可解のようだ。



「ああ。今、ギル様に忠誠を誓って、側に置いて貰う事になったんだよ。エリもよかったな。これで、お前との『契約』は完了だ! 落ち着いたら一戦頼むぜ?」


「うん! ギルベルト様に8割くらい魔力を削られてるから、『魂奪コンダツ』なしで行くと、再戦は1万年後くらいになるね」


「そうだな。俺はとにかく、"人間"のギル様に『不死』になって頂こうと思ってんだが、《真眼》はどうだった?」


「種族は"人間"で間違いなかったけど、秘匿されてるところもあったから、なんとも言えないかも……。もう既に"不死"の可能性もあるしね」


「ガッハッハ! まぁ、あの魔力量だ! 可能性はゼロじゃねぇな」


「うん、魔力は無限インフィニティだったよ!」


「……さ、流石、ギル様だぜ」



 目の前で繰り広げられる会話に俺はもちろん、未だ正体不明の3人も引き攣った顔を浮かべたが、



「……ね、ねぇ、"ギル様"? よかったら『血』をくれないかなぁ? なぁんでもするからさぁ!」

「最早、これは天命なのかも知らないな。この天竜"ガル"……、我もジュラ同様、"ギル様"の側近として置いて頂きたく思います!」

「……わ、私は認めていないのだが、エリア様が仰るなら……し、仕方なくなのだからなッ!!」



 魔王軍、帝国侵攻の終幕は……、


(も、もしかしてだけど……、お、俺が新たな魔王になってんじゃねぇか!? ふざけろ! も、もう知らんッ!!)


 全くの予想外な結末を迎え、焦りまくる俺は超高速で頭を回転させ、とにかくディナ姉の救出(この場からの逃亡)を決意した。






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― 新着の感想 ―
[一言] はい。もう魔王ですね。
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