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〜壮絶な戦いの裏で〜




〜【数分前】〜



―――帝都「グランベル」 近郊



「「「「…………」」」」



 魔王軍四天王の残り3人と煉獄炎竜のジュラはただただ絶句し、言葉を失った。


 自分を赤子扱いした"エリア"が、年相応のただのメスガキに成り下がって行くのをただ見つめていた。



 氷のように冷たい青い瞳。

 青白い魔力が漏れ出ている身体に、エリアの《魔手》をいとも容易く処理する『人間』。



「"あのお方"の血が欲しいなぁ〜……。頂けるならどんな事でも、どんな物でも差し出すのにぃ」



 吸血王であるミモザの発言に、



バッバッバッバッ!!



 黒い羽を無数に突きつけ、眼を血走らせたのは堕天使ルシフェル。



「ミモザ、貴様……、エリア様を裏切ろうというのか?! あの『人間』……、『あの者』にひれ伏し、エリア様に逆らうというのか!?」


「"ルシちゃん"は真面目だなぁ。ウチは、別にエリア様に逆らうわけじゃないよぉ。ただ……、"あのお方"の血を啜りたいだけなのぉ」


「……ふざけるな! 何が『あのお方』だ!」


「ルシフェル、少し落ち着くのだ……」


 激昂するルシフェルを宥めるのは天竜"ガル"。


「貴様もだ! そこのクソトカゲも! 同種であるヂンが屠られたのだぞ!? なぜ、そんなに平然としている!?」


「……お前も対峙したのだろう? 我もヂンと視覚を共有していた。"今のお前"と同じだ」



 ガルはルシフェルに手を差し出す。


 その手は小刻みに震えており、ルシフェルは今初めて、自分の身体がブルブルと震えている事を自覚する。



「くっ……。エリア様……、エリア様が負けるはずがない……!!」



 ルシフェルが自分の身体を抱きながらその場に座り込むと、無数に展開していた《黒羽》はユラユラと地面に落ちていく。


 ルシフェルの言葉にガルとミモザは黙り込んだが、



「……俺は決めたぜ」



 沈黙を貫いていたジュラは小さく呟いた。


 3人は一斉にジュラに視線を向けると、ジュラはニカッと笑みを浮かべた。



「『あの人』には敵わねぇ。こんな気持ちは初めてだ。俺はあの人の行き先が見てぇ」



「「「…………」」」



 3人は絶句する。


 誰にもひれ伏さず、誰にも媚びない。

 エリアに敗北してもなお、挑む事をやめなかったジュラが、戦う事もせず敗北を受け入れ、まるで忠誠を誓ったような発言をした事に驚愕したのだ。



「……ガル、分かるか?」


「……ジュラ……、お前……」


「あの人が『竜王』だ」


「……」


「俺は"竜種の掟"に従うぜ……」



 ジュラの言葉にガルはゴクリと息を飲んだ。ギルベルトの持つユグドラシルの枝から作られた宝剣。


 『ユグドラシルを手に入れる』


 これが、「竜王になる」事の条件であるが、それは『ユグドラシルに選ばれる』と同義であり、世界樹……、まさにこの世界の王である事を意味する。


 最上位種である竜種達が生み出されてから、消える事のない本能的欲求がどの竜種よりも強く、竜王に1番近い存在がジュラだった。


 

 そのジュラが決断した。


 『敗者となった竜種達は『王』の手足となり、その全てを尽くす』


 1番、誰かの下になる事を嫌ったジュラが決断した。



「こ、このクソトカゲ……! エリア様に弓を引くのであれば、」


「ガッハッハ!! 乳だけ堕天使! エリは『ギル様』に全てを捧げるぞ? まぁ……、ギル様が受け取るとは思えねぇけどな!」


「……な、なにを、」




グザンッグザンッグザンッグザンッ!!



 ギルベルトに拘束されたエリアの姿に、金眼を血走らせるルシフェルに目を見開くミモザ。顔を伏せたガルと、穏やかに微笑んだジュラ。



「幕引きだ……。2人の結論を待とうぜ? 邪魔すればエリに殺される。それも覚悟で『ギル様』を狙うなら……、俺が相手になってやる」



「ほざけ、クソトカゲ……」



バサッ! 



 ルシフェルが黒羽を広げた瞬間、



ガッ!!!!


 

 ジュラ、ガル、ミモザは、ルシフェルを制止する。


「ダメだよぉ、ルシちゃん。邪魔しちゃ」

「……悪いが、エリア様と『ギル様』の邪魔はさせん」


「貴様らぁあ……!!」



 ミモザとガルの発言と行動に憤怒を滲ませるルシフェルにジュラが小さく呟く。



「ルシフェル……。あれほどの力を持っていれば、単騎で魔領に乗り込み、俺たちを殲滅する事も可能だったはずだ。

 俺達はずっと前から、『生かされてた』んだよ。ギル様の温情と慈悲……本当にすげぇお方だ……。いつでも屠る事ができるんだ。エリの命を奪うような事はしねぇよ……」



 ジュラの言葉に3人は沈黙した。


 尋常ではない勘違いを発動させた4人は何かを話しているギルベルトとエリアを静観した。







「……あ、あ、あの者が『勇者』……。オラリア王国が誇る、この世界を導く者……」


 帝都に高く、高く聳える巨城の最上階に位置する広間。"世界1"が帝国である事を象徴する場所で、冷静沈着で有名な"皇帝"は戦慄し、我を忘れていた。


 リリムが作り出した映像投影を可能にする魔道具でギルベルトの戦闘を見つめていたのだ。



バギンッ! バギンッ!!



 外から聞こえてくる轟音に揺れる広間は、冷静で冷酷なカリスマである皇帝を、ただの無能にするには充分だった。



「……どうお考えに? 皇帝陛下」


 帝国の諜報機関"シャドウ"のおさを勤める"ユリウス"は顔を青くする皇帝に問いかけた。


「どうもこうも……。こ、こ、この者は危険すぎるであろう?!」


 帝国を救ってくれているオラリア王国の勇者。深く感謝しながらも、その危険性は帝国の立場を揺るがす物だ。


(こんな"神の化身"のような者が、世界に存在してはならん……。少しばかりの粗相も許される事ではない!)


 滅亡を逃れた帝国。しかし、更に大きな『脅威』が現れた事が事実であり、皇帝はギルベルトの存在を恐れ、玉のような冷や汗をポツポツと浮かべる。

 


「……て、帝国に引き入れる事は可能か?」


「……言わずもがな、勇者様は"リリム様"の実弟であり、勇者様の妻であるミーシャ嬢……、オラリアの裏を任せられている"ストロフ公爵家"とのパイプも築いております」


「な、ならば! 彼を帝国に、」


「しかしながら、オラリアの国王は勇者様に心酔しているとの調べがついており、彼を手放す事は天地がひっくり返っても……」


「……オラリアの"クライン"か。"賢王"などと呼ばれているが、あやつを怒らせるのは得策ではないな……。くっ、どうすれば……」


「……"カーティス家"への繋がりを強化いたしましょう。皇女殿下をカーティス家の長兄"イルベール"に嫁がせるのが、最善かと……」


「なっ! 帝国が"オラリア王国の伯爵家"に忠誠を誓うような物だぞ!?」


「……誓うべきです」




バギンッ! バギンッ!!




「ち、誓おう……」


「カーティス領は小都市ながら、一国の武力を備えておりますし、そこにリリム様と勇者様が加われば……」


 

 皇帝はゴクリと息を飲む。



「……せ、せめて"勇者"に嫁がせるのはどうだ?」


「……リリム様がお認めになるとは思えませんし、ストロフ公爵家の反感を買います。当主の"ロミオ公"は愛娘であるミーシャ嬢の事になると見境がありませんし、万が一、勇者様と敵対する事になれば……」


「そ、そ、そ、それはダメだッ!!」


「……」


「カーティス家に縁談の打診を……。それから"エリザベート"を呼んでくれ……」


 

 皇帝は、ギルベルトの圧倒的武力の前にひれ伏し、ずっと空席となっていた皇女殿下の婚約者を決めた。





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