vs.魔王軍四天王 堕天使"ルシフェル"
―――帝都 「グランベル」近郊
「……なっ!!」
ルシフェルの絶句は、『光』と共に現れた"人間"に向けられた物だ。尋常ではない高密度の魔力と無限とも思える"量“。
(……な、何者?!)
自分と同列である暗黒竜"ヂン"が、一瞬にして肉塊に成り下がった光景が信じられなかった。
戦闘と呼べる物ではない。
ただ、触れてはならない『逆鱗』に触れた。
竜種が"人間"の逆鱗に触れた。
(なんの冗談……!?)
ゾクゾクゾクッ……
エリア以外に初めて畏怖した自分を受け入れられない。そんな事が許されるはずがない。
バサッ!!!!
ルシフェルは一瞬にして黒羽剣を両手に携え、"常人"には視認すら許さないスピードで『異端児』へと斬りかかる。
ガキッ、ガキンッ!!
豪華な柄から不自然に伸びた剣に軽々と受け止められ、"青い瞳"に睨まれると背筋にゾクリッと悪寒が走る。
間近で見た異端児の底知れぬ魔力量に冷や汗がこめかみを伝い、一瞬にして距離をとる。
(な、ならば数で……!! 死ねッ、『化け物』め!!)
四方八方から黒羽剣で斬りかかりながら、同時に魔力を纏わせた翼の羽で《黒雨》を放つが……、
キンキンキンキンッ!
身動き一つする事もなく、飄々(ひょうひょう)と処理される。
「"姉様"……、セリアを頼みますよ?」
「任せて! 本当にありがとう!! 大好きよ、ギルゥウ!!」
先程、ヂンとの戦闘で死にかけていた女……、リリム・カーティスが"異端児"に抱きつき、頬に口づけしている。
「……姉様、本当に邪魔です! 元気になったなら、助力して下さいよ! コイツ、めちゃくちゃ速いですよ?」
「ふふっ、大丈夫、大丈夫! ギルに敵うヤツなんてこの世界に存在しないんだからッ!」
「……」
異端児は苦笑し深く息を吐くが、リリム・カーティスと後ろで"寝ている女"は脅威であるはずの自分の方を見ようともしない。
(ふ、ふざけるな!!)
ルシフェルは更に加速し、急所に容赦なく黒羽剣を突き立てるが、
ガキンッガキンッ!!
剣を突き合わせて精一杯の魔力を込めても、一歩たりとも動かす事すら出来ない。
(わ、私はエリア様の側近……、魔王軍の四天王!! こんな、こんなヤツに……)
いくら力を込めてもビクともしない。
明らかに異質な人間。
いや、もはや"人間"ではない。
「くっ……!! き、貴様ぁああ!! 何者だ!?」
「……」
「さ、さっきからどこを見ている!? エリア様の元には行かせんぞ!?」
「……えっ? あ、いや……」
異端児が口を開くと、リリム・カーティスが横から口を挟む。
「ねぇ、ギル。せっかく帝国に来たんだから、帝都で美味しい物でもご馳走させて? なんなら皇帝を脅しつけて、皇帝になるのはどう? 帝国でずぅうっと暮そう!?」
「い、いや、ノースでも何かあったみたいなんです。『白髪の悪魔』が出たとかで、大変な事になってるそうで……。ディナ姉が向かってると思うんですけど」
「……えっ? ……"ディ"に会ったの……? そ、そんなの放っておけばいいのよ! ギルは『帝国を救った英雄』なんだからッ!」
「……? ……まだ戦闘中ですよ、姉様」
目の前で平然と繰り広げられる会話に気が狂いそうになるのを感じる。元大天使である自分が地上に降り立ってから、ここまでコケにされる事は一度としてなかった。
それはエリアとの戦闘においてもだ。
攻撃の軌道がワンパターンにならないよう、あらゆる角度から斬りつけても一切、隙がない。
もう『未来』が見えているとしか思えない。
「なら、見えてても関係ない攻撃を!!」
バサッ!!
一瞬で上空に飛び立ち、即座に《闇炎》を放つ動作に入るルシフェルだが……、
「こんな"美女"に傷をつけれないんだが……?」
最速の自分と同速度、いや、それ以上のスピードで目の前に飛んで来た異端児の言葉に、ルシフェルは大きく目を見開いたが……、
ガキンッ!!!!
空気を劈き、大気が割れるほどの衝撃波が地上から鳴り響いた。
「我とも遊ぼう……『ギル』!!」
横たわる女とリリム・カーティスに伸ばした《魔手》は歪な剣で受け止められた。
ゾクゾクゾクッ!!
(け、桁が違う……)
目の前にいる異端児の魔力が更に跳ね上がったことを理解してしまう。
自分の主であるエリアの一撃を『受け止めた』事を目の当たりにし、ルシフェルは戦意を失った。
※※※※※
姉様が無事である事を確認した俺は、スローモーションの世界でゆっくりと揺れるおっぱいに胸を高鳴らせていた。
ゆっくり、ゆっくり……ゆっくり。
ワユンッ……ワユンッ……
正直、この擬音が合ってるかはわからない。だが……、至高にして孤高の相手。
真っ黒の髪に金色の瞳。
背中には12の黒羽。
控えめに言って、かなりの美人だ。
(……こんな魔人がいるのかよ)
魔人……、いや、『人外』か。
新たなステージに登りそうな俺は、姉様からの面倒くさい絡みで我に返ったが、この魔人の強さにはビビり倒していた。
(ヤ、ヤバすぎるだろ! 無理、無理! セリアぁあ! 早く回復しろ!!)
《天眼予知》を使用しても普通の速度で両手の黒羽の剣を振るう『天使』。
『予知』した俺の死は15回。
(コ、コイツはマジでヤバい!!)
一撃一撃をギリギリで防ぎながらも、反撃することを躊躇った。
決して! ゆっくりと揺れるおっぱいから目を離せず、永遠にこの時間が続けばいいと思ったわけではない。
しかし、真っ黒く蠢く『黒炎』が"見えた"俺は、姉様とセリアから離れたが、
その瞬間……、
ガキンッ!!!!
1番許されない『予知』と、"かなりのスピード"で現れた『幼い少女?』の攻撃を紙一重で防ぎ、尋常ではない轟音と共に大気が割れた。
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