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ミーシャは女神



―――カテナの丘



※※※※※【side:ミーシャ】



 押し倒している"ギル"と、顔を染めながらも歓喜の涙を浮かべているセリアの姿に、私は視界が滲んで行くのを感じていた。


「ミ、ミーシャ! えっと、コレは、」


「"奥様"。セリアがご主人様に、メイドとしてあるまじき言葉を……!! 申し訳ありません! 今後、このような事がないよう……、必死に!! どうか、どうか、これからもご主人様の側に居させてください……」


 慌てて私に駆け寄り、深く頭を下げるセリアに、更に胸が締め付けられていく。


ギュッ……


 私はセリアの肩を掴み、頭を上げさせると、そのままセリアを抱きしめた。



「よかった。やっと言えたんだね、セリア……」



 ずっとわかっていた。

 セリアが苦しんでいる事を。

 でも、私から言うべき事ではないと口をつぐんだ。


 メイドとしてギルに尽くすセリア。

 あるじとしてセリアを大切にするギル。


 2人には私なんかよりも深い絆のような物ができている気がしていた。


 あの"逃亡生活"を終えて、ギルを見つけた時、2人の空気感に深く嫉妬すると同時に、とてもお似合いだと思った。


 ギルの横にセリアが居ないとおかしいし、セリアの側にギルが居ないのもどこか違う。


 昔から、セリアが特別な感情を持っていることに気づいていないのはギルだけで、私は「ギルとセリアはいつか2人で消えてしまうのではないか?」といつも怖かった。

 

 でも、そうじゃない。


 どちらか一方だけじゃない。


 同じ相手を愛した恋敵ライバルだけど、私はセリアの事も大好きだ。


 いつでも、どこでもギルを信頼して付き従い、「私のため」を思い、メイドとして身をひいてくれたセリア。



――ユノちゃんは、"まだ"ダメだよ?



 ギルが私以外を抱くなら、次はセリアがいい。


 ギルの『初めて』はどうしても譲れなかったし、やっぱり少し嫉妬してしまう気持ちもあるけど、それ以上にセリアにもあの幸福を知って欲しい。


 私と同等の愛を持っていない人にはギルからの"幸せ"をあげる事なんて絶対にできない。

 

 でも……、セリアなら。


 いつか、"こう"なる事はわかってた。


 だってセリアも私と同じくらい、ギルを愛しているから。ギルを想う気持ちが負けてるなんて絶対に認めないけど、セリアがギルを想う気持ちは認めてる。


 いざ、その光景を目の当たりにした私に待っていたのは、やっと素直になれた"幼馴染"が自分の幸せを掴んでくれた感動だった。

 

 私をギュッと抱きしめながら涙を流し続けるセリア。


「う、うぅ……、"ミーシャ様"……。ごめんなさい、ごめんなさい……、我慢出来ませんでした……」


「ふふっ……、いいの! いいのよ。セリアだから。……ううん、セリアじゃなきゃダメなの」


 私の瞳からも涙が流れる。


――ねぇ、セリア。なんで笑わなくなったの?

――……ご、ご主人様に変な顔だって思われたくないの。ミ、"ミーシャちゃん"、内緒だよ?


 幼い頃の記憶が頭を巡る。

 ただの仲良し3人組だった頃の記憶。


「ねぇ、ギル」


「……え? あ、いや、」


「いいよ? セリアなら」


 大きく見開かれたギルの綺麗な瞳。

 セリアは私の言葉に更に涙を加速させた。


「セリアは私の大好きなお友達なんだから」


「……う、うぅう……」


 さらさらの銀髪を優しく撫でると、セリアは私の顔を見て、恐ろしいほど綺麗な笑みを浮かべた。


 思わず、キュンとして頬が赤くなってしまったのは、ギル……、いや、"旦那様"には絶対に内緒だ。




※※※※※




(……何がどうなって、これからどうなんだ!?)



 目の前で泣きながら抱き合うセリアとミーシャ。


 紳士として、あるじとして、あるまじき行為をしてしまいそうになったのを"妻"に見られたはずなんだが……?



「うぅ……。セリアちゃん、ミーシャちゃん……」



 なぜか釣られて涙を流しているユノに、とりあえず俺だけが、この状況を理解していない事を理解する。



(……と、とりあえず、ユノのおっぱい触っとくか?)



 目の前の、綺麗で可愛い小さなお山を見つめながら現実逃避をしようとするが、もうぶっ飛んだ状況すぎて、ユノのおっぱいですら現実逃避出来ない。



 泣き続けるセリアと優しくセリアを宥めるミーシャ。


(と、とりあえず、眼福すぎるな……)


 美女達の抱擁。ミーシャは半裸と来ている。


 俺の中で何かが目覚めてしまいそうになったのは言うまでもないだろうが、そろそろ誰か説明して欲しいのが本音だ。



「じゃあ、ユノちゃん。2人にしてあげようか!」


「うん!!」


「……じゃあ、旦那様? 私たちは帰ってるね?」


「……」

(……はっ?)


 ミーシャに抱きついたまま耳まで赤く染めているセリアと女神のように優しい笑顔を浮かべるミーシャ。


「その"次は"、やっと僕の番です!」


 ニコニコとやる気満々のユノ。


「えっ? えっと、それは……?」


「ふふっ、旦那様もセリアを愛しているんでしょ?」


「……え、はっ!? い、いや、はっ? べ、別に? そ、そりゃ、え? ど、はっ?」


 ミーシャの言葉に激しく混乱する俺に、セリアがトコトコのこちらに駆け寄り、俺に飛びついてくる。


「ご主人様。心よりお慕いしております。セリアを無茶苦茶にして下さい……」


 

バクンッ!!!!



 経験した事のないような胸の高鳴り。


 どこか夢見心地で、正直、妄想した事のある言葉が現実のものになったが……、


「……え? いやいや!! ち、違う! そんなんじゃない!」


 俺はなんだか死ぬほど恥ずかしくなり、尋常ではない顔の熱を誤魔化すように声をあげる。


「ご主人様……」


「そ、その目はやめろ!」

(お前が望むなら、無茶苦茶にしてやる!)


「だ、旦那様!?」


「屋敷まで送るよ。魔物とか出るかもしれないし」

(ありがとう! 女神! 流石、俺の嫁だ!!)


「え、あっ。えっと……」

「う、うぅ。ご主人様……」


「……あぁ! もう!! とりあえず、帰るぞ!」

(何だよ! 最高かよッ!! よ、夜まで待てるか! 今すぐだ!!)


 俺は乱暴に収納袋に荷物を投げ入れ、セリアの手を引いて歩き始めた。

 





 屋敷に着くなり慌ただしい雰囲気になっている事を察知し、嫌な予感が頭をよぎる。


(……ふざけんなッ!! これからセリアを抱くんだよ!)


 

ギュッ……



 セリアは俺と繋いでいる手に少し力を込めた。


 おそらくセリアも異変を察知し、俺との『アレ』が流れてしまうと感じているのかもしれない。


(くっ!! ほ、本当に……。た、堪らん!!)


 心臓がバクバクで、慌ててセリアの顔を見るといつも通りの無表情。(こんな時くらい可愛く口を尖らせろよ!)なんて考えていると、




バンッ!!



 旅支度を済ませて、顔を青くしているディナ姉が飛び出して来て、俺を見つめると同時に、



「……ギル君」



ポロッ……



 涙を流し始めた。


(……クソ。クソッ! クソぉおおお!!)


 大絶叫しながらも、見過ごす事は出来ない。美女の涙を無視するなど、紳士ではない。俺は深く深く息を吐き、



「セリア……。また今度な」


「……はい、ご主人様」


 セリアの手を離す。即座にディナ姉に駆け寄り、泣き崩れてしまいそうな肩を支える。


「どうしたの? ディナ姉」


「私のせいで……」


「……落ち着いて」


「……い、いや、すまない。大丈夫だ……。ギル君、皆さん。しばらくの間世話になった。イルベール君には挨拶出来なかったが、許してくれ。私は早急に戻らなくては……」



 「赤髪の戦姫」「孤高の剣姫」


 涙に滲む真紅の瞳はその二つ名に相応しい物だった。


 調査兵団、団長としての口調は、"勇者"ではなく、ただのギルベルトに向けられた物。



「……何があった? "勇者"として聞こう」


「……」


「……"ディナ"?」


「……調査兵団が『白髪の悪魔』に半壊させられたようです」


「……詳しく話してくれ」



 気丈に振る舞うディナ姉の涙。


 泣いている"初恋の女性"を放置する事は、紳士である俺には出来なかった。




※※※※※



「も、もう一度、報告しろ……!!」


 アルマは帝国に放っている諜報員からの報告に耳を疑い、激しく混乱していた。


 先程、ディナからの『白髪の悪魔』の出現を聞き、(次はノースに旅立つのか)とギルベルトの『巻き込まれ』に苦笑したが、状況はたった今、より深刻な物に変わった。


(クソッ……。リリがッ……!!)


 アルマはカーティス家の武器庫へと走った。





〜作者からの大切なお願い〜


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 お預けですが、後々しますww




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