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『ご主人様からの愛が欲しくて仕方のないメイドです』




※※※※※



(……はっ? な、なんで泣きそうなんだ?!)



 セリアは小さく唇を噛み締めて、紺碧の瞳を潤ませている。いつもの無表情ではなく、必死に涙を堪えている姿に俺はひどく狼狽えていた。


 

 久しぶりの「カテナの丘」。


 学園に放り込まれ、卒業してからもバタバタの連続でなかなか訪れる事が出来なかったが、やはりここは最高の場所だ。


(兄様に感謝しないとな……)


 先日の晩酌に頬を緩め、色々な思い出が頭に流れては、湖ではしゃぐユノとミーシャを眺めていたのに……、



「お、おい、セリア?」


「はい……」


「なにかあったのか?」


 うるうるの瞳で俺を見つめるセリア。


 その破壊力は凄まじく、いつも必死であるじとして毅然とした態度を貫いている俺には大ダメージだ。


「ご主人様の優しさに心打たれまして……」


「……」

(……はっ? さっきサンドウィッチを貰った時に礼を言った事か? いやいや、いつも感謝の言葉は伝えてるはずだが……?)


「"私"、どうすればよろしいのでしょうか?」


「……!! え、あ、いや……、な、何が?」

(やめろ! その可愛すぎる顔をッ!!)


「……私はメイド失格にございます」


 らしくないなんて物じゃない。これは明らかにいつものセリアではない。


(おい、いつもの"悪ふざけ"はどうした!?)


 心の中では激しく狼狽えながらも、何か悩みがあるなら解決してやるのが、あるじとしてのつとめ。



ポロッ……



 少し染まった頬に流れてしまった涙にそっと手を伸ばし、優しく拭う。


「ご主人様……」


「我慢するな。泣きたいなら泣けばいい。……悪いな、お前の気持ちをわかってやれなくて」


「いえ。"こうして"気遣って下さるだけで……」


「何かあるなら何でも言え! お前が泣いてたら、それは俺の責任になってしまうだろ?」


 セリアは更に涙を溜めるが、グッと唇を噛み締めて堪えようとしている。


(いつも無表情で意味不明な行動ばかりのポンコツのくせに……)


 セリアの姿にドクン、ドクンと心拍数は上がっていく。涙の理由なんて、正直、全くわからない。いや、セリアを理解する事なんて、今まで一度も出来た事はない。


 俺はあるじ失格だ。



「ご主人様……、私は、私は……」


「もういい。全て吐き出せ。俺はお前のあるじ……どんな事でも叶えてやる!」


「……ご、ご主人様……」


 トロンとした紺碧の瞳に俺はゴクリと息を飲む。


(……コ、コイツ……!)


 煽っているとしか思えない表情。無表情で完璧な裸体を見せつけられるより、今の涙混じりの表情の方が、よっぽど"効く"……。



「な、なんだ……?」


「……ご主人様に『一生メイドでいろ』と言って下さったのに、私はご主人様が他のメイドや"ミーシャ様"やユノさんに……、嫉妬してしまうのです……」


 セリアは唇を噛み締めて、濡れた瞳のまま俺の目を見据える。


「……」

(う、嘘じゃないんだな? これは『抱いてくれ』って言ってるって事でいいんだな?)


「……申し訳ありません、ご主人様……」


 仄かに染まった頬にポロリッと流れた涙に、俺の理性は限界だ。


(こ、このポンコツメイドが!! 俺がどれだけ我慢してきたと思ってる!? いっつも全裸で誘惑してきやがって!! 俺の決意を……! クソッ!!)



ドサッ……



 セリアを押し倒し、ジッと目を見つめる。


「……お前は俺のメイドだろ?」

(『違う』と言え! 今だけでいいから!!)


「……はい」


 逸された目に、ゴクリと息を飲む。


「……嘘……なのか?」

(それは、それで複雑だぞ、このポンコツが!!)


 もう欲望とショックでなんとも言えない心境にグルグルと目が回っていると……、



「ご主人様からの愛が欲しくて仕方のないメイドです」



 セリアはふざけた一言を添えた。


 頬を染めて瞳を閉じるセリア。


(も、もう限界だ! こ、これはお前が望んだ事だからなッ!)


 優しくセリアの頬に手を添えて顔を寄せると、


「あ、あぁ!! セリアちゃん! ギル様!」


 ユノは服を脱ぎ捨て全裸でかけてきた。

 その後ろには驚愕したように目を見開くミーシャが立っている。


 久しぶりのセリアとの2人きり。


 逃亡生活を送っていた時の心地よい雰囲気に俺は我を忘れていた。


(ち、ちが……、いや、うぉおおおおおお!!)


 もう、なんだか訳のわからなくなった俺は心の中で絶叫しながら、こめかみからタラリと冷や汗を流した。





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