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〜ロリドの慢心〜 ②



ーーー魔王城 「玉間」



 エリアは微笑みながらも怒気を滲ませるルシフェルに苦笑しながら、黒い球体を見つめた。


(……あらら。ルシフェルにすら傷一つつけられないんだ……)


 すぐにでも帝国に攻め込もうとジュラと話していたのに、面倒くさい事この上ない。

 

「ブハハッ!! なんだよ。"エリ"の魔素溜まりから生まれたんじゃなかったのか?」


「クソトカゲが……。"エリア様"だ!!」


「ブハッ! 何、イラついてんだよ? 爆乳堕天使」


「エリア様の配下をたくさん奪われたのだぞ! 貴様はなんとも思わないのかッ!?」


「ハッ! 弱ぇヤツが悪ぃんだよ」


「……」

(このクソトカゲが……)


 心の中では悪態を吐くが、ジュラの正論にルシフェルは押し黙る。



「ルシフェル、あまり気にするな。魔石が破壊されていなければ、この魔素に満ちた魔王城であれば1年もすれば蘇るだろう?」


「ですが、エリア様……」


「ふっ、またすぐに会えるさ」

(勝手に魔王城に棲みついたヤツらなんて、興味ないけど!)


「……ハッ!」


「で? どうだったのだ?」

(魔力量はなかなか多いね。あと3000年もすれば面白いかもしれない)

 

「……」


 ルシフェルはチラリと黒い球体を見つめると言い淀む。


「……我は"そこの者"を子供だとは微塵も思っておらんぞ?」


「"八魔将"程度かと……」


「……そうか」

(……め、めちゃくちゃ弱いじゃん。何だかあたしが、恥ずかしくなっちゃうじゃん!!)


 勝手に生まれたのは確かだが、エリアの魔素溜まりから生まれたのも確か。同族である悪魔として生まれたようなので、関係が全くないとも言い切れない。


 エリアはそんなザコが自分の魔素から生まれた事を恥ずかしく思い、「どうせなら今すぐにでも屠ってしまおうか?」と思案する。



「とりあえず……」



 エリアは小さく呟くと軽く片手を振る。



サァーッ……



 黒い球体を渦巻いていたルシフェルの『闇牢』は、サラサラと消滅し、ロリドが姿を現した。



ギュインッ!!


 姿を現した瞬間に【具現化】した《魔手マナ・ハンズ》でルシフェルに襲いかかるロリドだが、



パチンッ!



 エリアは指を一つ鳴らして赤黒い焔、《天獄炎ヘブンズ・フレア》でそれを焼き尽くす。



「貴様ぁあ!!」


 

 即座にエリアに《石化》を発動させたロリドだが、エリアはいかなる状態異常を《反射レジスト》させる。



ピキピキッ……



 慌てて解除したロリドだが、右腕は石化。


ブチンッ!!


 ロリドは、自らの腕を切り落とすと即座に再生させ、絶叫する。



「クソ、クソッ! クソォオオオオ!! 私は選ばれた! 選ばれたのだ!! き、貴様らッ! ウァアアア!!」




 ジュラはニヤニヤとそれを傍観し、ルシフェルはあまりの憤怒に身を焦がした。



「エ、エリア様……、よ、よろしいでしょうか?」


「まぁ、待て……」

(生まれたて……。自分の力の理解は3割ってところか……)



 エリアは『真実の魔眼』にて《鑑定》を行う。




▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽



【名前】 なし

【称号】『破滅の転生者』

【加護】 ※※※※※

【種族】 上位悪魔

【状態】 錯乱 空腹 焦燥 魔力枯渇

【魔力】 SSS


【ギフト】 『分解』 『強欲』


【スキル】 『石化魔眼』


【種族スキル】 『具現化』『超速再生』『超感知』『形態変化』『絶対契約』



△△△△△△△△△△


 

 エリアはニヤリと口角を吊り上げる。


("加護"が見れない!? 誰!? 何者!? おすなのかな!? 『破滅の転生者』! 何これ!? こんなの初めて!! 面白いッ!!)


 『取るに足らない"小物"』


 エリアはその考えを今一度改めた。

 正直、思っていた以上に弱かったが、"これから"はどうなるかわからない。


 


ビキビキビキッ!!



「エリア様に……エリア様に……貴様ぁ」


 魔力を抑えきれず憤怒を露わにするルシフェルと、その魔力解放に大きく目を見開いている"同族"。


(……少し教えてあげよッ! 目に見えるものや『超感覚』に頼りすぎない方がいいって!)


 それが同族のよしみ。


 自分の魔素溜まりを"何者か"に利用されて生みだされた『転生者』に対する餞別だ。



フワッ……



 エリアは自身の【具現化】により、ルシフェルを床に押しつけて拘束し、その隙に手を伸ばして《分解》しようと手を伸ばしたロリドを鷲掴みにして、玉座に座る自分の目の前に連れてくる。



「お前の名は?」



 身動き一つ取れないロリドは、目の前のエリアに絶句した。エリアの魔力解放による圧力は『超感覚』によって、凄まじい気配を察知したのだ。



「……ロ、"ロリド"……」


「ロリド。あまり自分の力を過信するな。感覚を研ぎ澄ませて深淵を覗け……。"勝手に"察知する物を信じるから、そんなにバカに見えるんだ……」


「……」


「ほら、あそこで笑ってる者を探ってみろ」



 エリアはクイッとジャラの方へ視線を誘導する。


「ブハハッ! エリ! どういうつもりだよ? 俺がっちまっていいのか?」


「……え? あ……?」


 ロリドは言われるがまま、ジュラに視線を向け感覚を研ぎ澄ませると、


ゾクゾクッ……


 そのあまりに強大な気配に言葉を失ったが、それ以上に今、自分が"死地"にいる事を実感した。


 目の前で薄く微笑む『魔王』。


 その奥に潜む、絶対的な力を理解したからだ。



「……お、"お前"に従う……」



グザッ!! バサッ!!



 自らの胴体を切断し、エリアの拘束を解いたルシフェルは、一瞬にしてロリドの首元に黒羽剣コウクを当てる。


「エリア様。許可を……」


「ダメだ……」


 エリアの言葉にルシフェルは唇を噛み締め、ツゥーッと血を垂らす。


(ク、クソッ! 私にはやるべき事が……!)


 ロリドは懸命に頭を回転させ、この死地から逃れようと口を開いた。


「……くっ、"エリア様"に……従う……」


「……何を勘違いしている? 生殺与奪の権利はお前にはない。だが、確信したぞ。"貴様がこの偉大な魔王、エリア様の子供ではない事"がな……」


 ルシフェルの言葉にロリドの頭には"前世の記憶"が蘇る。自分の父であるはずの国王に告げられた言葉、鎖に繋がれた母親が現れた時の絶望。



(絶対に、絶対に、絶対に、絶対に跪かせてやるんだ。……あの国の全てを滅ぼし、"アイツ"の目の前でアイツの大切な物を一つ一つ壊してやるんだ……! こんな所で死ぬわけには行かないのだ!!)



 ロリドはギリギリッと歯軋りをして小さく呟く。


「忠誠を誓う……。エリア様に、忠誠を……」


 エリアはロリドの言葉を鼻で笑うと、


「まぁ、"同族"のよしみだ。どこにでも行け。ただ、これからは相手を見て物を言えよ? あまりに滑稽で無様だ」


 冷めた視線で嫌悪感を露わにするエリアに、憤怒と記憶を呼び起こされるロリド。



「去れ……。2度と来るな。お前のような輩は要らん」



パッ……、ドサッ……



 拘束を解かれ、床に落ちる。


 ロリドはギリギリと歯軋りをする。


 万能であり最強の力を得たはずの自分がコケにされ、必要とされなかった。


 自分より強い者が存在する。


 それはロリドにとって耐え難い事ではあったが、


「エリア様の慈悲に感謝、申し上げる……」


 この窮地を脱した事を理解し小さくつぶやくと、



バサッ!



 背中に翼を【具現化】し、玉間の窓から落ちるように飛び出した。



(全てはオラリアを……、『アイツ』を絶望させてからだ……!! だが、覚えていろ……。私をコケにした事を……)


 オラリアを滅ぼし、ギルベルトを絶望させるだけの力は充分に持っていると信じて疑わない。


("いつか"はこの者達も……)


 ロリドは"魔領"の暗く淀んだ空を飛んだ。




 魔王城から飛び去っていくロリドを見つめる一つの影。


「さぁ、楽しく踊っておくれ。"ロリド・ジャン・オラリア"……」


 その者は空を飛ぶロリドに手を翳し、"マーキング"を済ませると、鼻歌を歌いながら口角を吊り上げた。




〜作者からの大切なお願い〜


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 次、おっ○いです。

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