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〜ロリドと魔王〜 ②



―――魔王城 「玉間」



 高濃度の魔素が充満する魔領。

 一際、禍々(まがまが)しいオーラを発する魔王城の玉間にて、その原因である魔王"エリア"は「ふっ」と小さく笑みを溢した。



「"エリア様"! お子が生まれましたよ?」



 魔王軍四天王"堕天使 ルシフェル"は、玉間の窓から湖を見下ろし、少し興奮したように声をかけた。12の漆黒の翼に黒髪を生ぬるい風に靡かせながら、金色の瞳を輝かせるルシフェルだが、


「そんな事どうでもいいから、まずは服を着ろ」


 エリアは冷ややかな視線を向け、新たに生まれた"同族"になど興味がないように呟いた。


「エリア様! いつになったら、私を孕ませてくれるのでしょうか? "魔素溜まり"で作らなくとも、私がエリア様の"お子"を産みますのに……!」


「うるさい。この淫乱堕天使め……」


「そ、それともこの美しすぎる私に魅力がないとでも言うのですか?」


「我の"魔素溜まり"から"勝手に"生まれただけだろ? 子供だなどと大袈裟な……」


「エリア様の魔素から生まれたのです。それはエリア様の子と呼んでも差し支えないでしょう?」


「はぁ〜……。やれやれ……」


 冷めた様子でエリアは深く息を吐いた。



フワッ……



 ルシフェルはふわりと優しく羽を羽ばたかせ、エリアの膝の上に跨る。全裸のルシフェルに首筋を舐められ、「無茶苦茶にして下さい、ジーク様……」などと誘惑されるが、



「やめろ、ルシフェル……」



 エリアが一つ睨むとルシフェルはシュンと眉を垂らし、口を尖らせた。


 玉座から立ち上がったエリアは足音を響かせながら窓の外を見下ろす。


(はぁ〜、……なんでこうなったんだろう?)


 生まれながら最強の存在にして孤高の魔王。短く切り揃えられた赤毛混じりの黒髪に、凛とした真っ赤な瞳。


 その立ち姿は、まだ幼さの残る14歳程度の子供のように見えるが、整った容姿は一目瞭然であり、左の目尻には黒い紋章シジルが刻まれている。


 力のある魔物や魔人を従え、竜種を3体所有しているカリスマ。最強の"悪魔王"にして、最年少で魔王の称号を得たエリア。


 その魔王には秘密がある。


(あ、あたしは『処女』だ!! そもそも男じゃない!! あぁー!! 恋したいッ!! 運命の人に会いたい!!)



 ルシフェルの美貌も意味を成さないのは当然。


 『力』こそが全ての魔領の中で、ただ必死に『恋する相手』……、自分よりも強く、守ってくれるようなカッコいいおすを求めて戦ってきた。


 そうしているうちに、いつの間にか魔王などと呼ばれるようになり、恐れられる存在になってしまったエリア。


 彼女は、ただ"守られてみたい"だけの乙女だった。


(1番初めに、『クソ女が』って言われた時、舞い上がりすぎて、皆殺しにしたのが、よくなかった。周りドン引きしてたし、女扱いされたことにブチギレたって思われちゃった……。今更、『女だ』なんて言えない雰囲気だし、『我』とか言っちゃってるし……)


「はぁ〜……」


 エリアは深く深く息を吐く。


 人間の国を落としても、最強と呼ばれる竜種を屈服させても自分を守れるほどの相手は見つからなかった。


 どれだけの権力と地位に立ったとしても、望む物は決して手に入らない。どれだけ探しても、自分より強い者も、たゆたゆの胸も手に入らない。


(君がそうなのかな……?)


 窓から自分の"魔素溜まり"を見下ろしてみるが、どうもしっくりこない。


(……ダメそうね)


 どう贔屓めに見ても、戦った3体の竜種の方が強そうだとエリアは"同族"に対する評価を早々に決めた。


(ビビっと来るものが一切ないし、なんかネチネチしてそうなオーラだし)


 何より、得意げにニヤニヤしてるのが気持ち悪かった。



ドタドタドタドタッ、バンッ!!


 

 品のない足音と乱暴に開けられた扉にエリアはまたため息を吐く。


 魔王城でこんな無礼な行いが出来るのは1人しかいない。唯一、エリアの目的と性別を知る人物の来訪には、ため息しか出ない。



「"エリ"!! 『バカ』が殺されたみたいだぞ!」


「このクソドラゴンが!! エリア様になんて口を聞いている!! 何度言えばわかる! "エリア様"だ! 名前すら覚えられないのか、このクソトカゲがッ!!」


「なんだぁ? ルシフェル! オメェ、ぶっ殺すぞ? ちょっと黙ってろ! この乳だけ堕天使が!」


「今すぐに目を潰してやる! よかったな。最後の景色が私の裸体で……!!」



ブゥオッ!!!!



 エリアの魔力解放に2人は押し黙る。


「ルシフェル、外せ……。"ジュラ"もあまり煽るんじゃない。我を怒らせる事が何を意味するかわからないほどバカでもないだろ?」

(えっ? 『バカ』ってだれ? もしかして他の竜種?! も、もしかして、"誰か"が竜種を屠ったの!?)



「申し訳ありません、エリア様……」

「ふっ……」


 ルシフェルは即座にジュラを睨みつけたが、すぐに口を尖らせてトボトボと扉から去って行った。



バタンッ……



 ルシフェルが去ったのを確認し、エリアは"乙女"に豹変する。



「で? 何、何!? あたしに勝てそうな男なの?!」


 唯一、エリアの正体を知るジュラ。


 7体の竜種の1人、"煉獄炎竜"はエリアに"ジュラ"の名前を与えられ、エリアと『再戦』の条件を満たすために"エリアの恋路"に協力しているのだ。



「"人間"だ! 『ギル』って名前の男! まぁエリアには勝てねえだろうけど、人間で竜種を討つなんて信じられるか?! まぁ、あの『バカ』は起きたばかりだったみたいだが、そのギルってヤツは、無傷だったらしいぞ……?」



 ジュラは、エリアに仕える竜種である"ガル"の【感覚共有】で得た情報を伝えた。


 エリアに惨敗した、ジュラ、ガル、"ヂン"の3体は弱肉強食の理に従っているが、再戦を望んでいるのはジュラだけであり、エリアもそんなジュラを片腕のように思っている。



「へぇ〜……『ギル』かぁ〜!! いいね! 会いに行こう!! どこにいるの?!」


「あの何匹が幹部を殺された"帝国の女"と居たらしい! 普通に考えて、帝国にいるんじゃねぇか?」


「……ああ。"リリム・カーティス"か! よし! 次は帝国を落とそう!! そうすればきっと会えるよね?!」



 "魔王"は次の標的を決めた。


 ギルベルトの姉"リリム"が帝国騎士団の団長を務める帝国。だが、エリアの目的は暴虐竜を無傷で討った『ギル』という名の男。



(さてさて、あたしを守ってくれるくらい強いのかなぁ? どんな顔をしてるんだろう?!)



 自分の"魔素溜まり"から生まれた同族など、もはやどうでもよかった。



 まだ見ぬ"運命の人"との感動的な出会いを待ち侘びながら、エリアはつるぺたの胸を高鳴らせた。




〜作者からの大切なお願い〜


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 エリアはかなり中性的な顔です!

 ユノよりもちょい年上!


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