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『ディナ・ローレンス』



―――アクアード



 魔人と言われても実際に見たことはない。

 王立学園での授業で、『人型に至るほど、上位の魔物』としてしか知らない。ランクとしては『災厄級』。



(竜種より強いって事はないか……? いや、正直、あの時はミーシャとレム爺を助けるのに夢中だっただけだしな……)


 今の俺には頼もしい味方である宝剣がついてるし、「なんとかなるだろう」とタカをくくるが、



ドゴォーンッ!!



(な、なんかめちゃくちゃヤバそうじゃない……?)


 

 肌を刺すヒンヤリとした空気と戦闘音。


 明らかにこれまでの災厄級とは違う雰囲気。


 すぐにでも宿に帰り、逃走に入りたかったが"見えた"景色に、咄嗟に宝剣に魔力を込めた。




ガッ、ガッ、ガッ、ガッ!!



 4本の剣をイメージし、剣の腹で冒険者風の男女を回避させると、



ピキピキッビキッ!!



 4人がいた場所に氷の柱が現れた。


 一気に顔を青くした冒険者達にバレないように、すぐさま魔力を抑えて剣を消滅させると、その4人はキョロキョロとして、「すまねぇ! 恩にきる!」などとまた戦闘に集中し始めたようだ。



 氷漬けにされている4人が"見えた"俺は咄嗟に助けてしまったが、



(ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ! 1発でわかるヤバイヤツやん!!)



 初めてみた魔人に血の気が引いていくのを感じた。


 サイズ感こそ普通の人間と遜色ないが、どう見ても魔物よりも洗練されている。骨のように白い皮膚に真っ白の髪。黒で埋め尽くされた目玉と、額からは存在感のある青い角が生えている。



ピキピキッ……



 辺りには冷気を纏い、手元の剣は氷で出来ているように見える。



 肌を刺す冷気に狼狽えた俺は絶叫する。



(こんなヤツ、相手に出来るかぁあ!!)



 もちろん、心の中でだ。

 限りなく存在感をゼロにして「俺、関係ないよ?」と言わんばかりのモブ顔を貼り付ける。



「この地を明け渡せ。この地は"エリア様"にこそ相応しい」



「ふざけるな! よくも、よくも俺の仲間を!」

「ぶっ殺してやるぜ! 氷鬼!」

「火魔法を使える者は急いで、氷を溶かせッ!」


 手足が斬られていたり、所々凍らされて身動きの取れない者が複数人固まっているみたいだ。応戦しているのは冒険者達と、黒いローブを纏っている集団。 



「……あれ? あれって、」



 黒いローブの集団に首を傾げていると、


キィイイイイイイ!!!


 "氷鬼人"が奇声を上げ、口を開いた。


「愚かな人間共!! "エリア様"に全てを捧げるのだ! オンセンはエリア様にこそ、相応しい!! ……反抗する者は皆殺しだ!」


 氷鬼人の周辺の空気がピキピキッと凍り、また少し辺りが寒くなったように感じる。


「ふざけるなッ!! "魔領"に帰れ! 今に見ていろよ、化け物め! 魔王軍はすぐに壊滅する!」

「そうだ! 人間は屈しない! 勇者様が……、ギルベト・カーティス様が貴様らなど討って下さる!!」

「そうだ! 『安息の地』は目の前だ!! きっと勇者様がこの世界を導いてくださる!!」


 対峙している者達は、物凄く恐ろしい事を曇りのない瞳で叫んでいる。



(ふざっけんじゃねぇ!!!!)


 なに勝手にそんな事言ってんだ!

 当事者の気持ち考えろよ!


 あんな化け物、怖いに決まってんだろ!

 あのおっさん(国王)、マジふざけやがって!

 

 なんで……。なんでこうなるんだよ!! クソッ!!


 厄介事を押し付けた国王に悪態を吐き、容赦のなく俺を巻き込む"世界"を嘆く。



「ふっ……お前らぁ!! ここが踏ん張り所だぞ!」


 スキンヘッドの大男が叫ぶと、


「「「うぉおお! "ギルマス"に続けぇえ!!」」」


 冒険者達は氷鬼人の周囲を取り囲む。



「……ふふっ、『ギル君』か。……よし!! 皆で力を合わせてアクアードを守るのだ!!」



 綺麗な女性が黒いローブから剣を突き上げた。


(……な、なんか、見た事あるぅううう!)


 心の中で絶叫しながら、


「ハッ! "ディナ様"!」

「我らには"剣姫"がついている!!」

「あのような魔人、すぐに!! ディナ様が!!」


 周りの黒ローブの者達も駆け出した。


 『剣姫』。"ディナ・ローレンス"。

 確か、姉様がまだSランク冒険者をしていた時のパーティーメンバーの1人だ。


 真っ赤の髪を後ろで縛り、淡く輝く真紅の瞳。確実に特注である鎧だとわかるのは、あんなに大きな胸の女騎士などいないからだ。


(なんでこんなとこに……?)


 "ディナねぇ"は、魔領の調査兵団の団長。


 オラリア王国の北側にある友好国"ノース"。その更に北側に広がっている"魔領"の調査をしているはずで、オラリアにくる事なんて滅多にないはずなのだが……。



(……そ、それにしても……相変わらず……)



 鎧に隠れた豊満な胸を知っている。


 俺の甘酸っぱい初恋の相手。


 決して、初めておっぱいを触らせてくれた女性だから好きになったわけではないとだけは言っておく。

 


(……ディナ姉がいるなら、もう大丈夫なんじゃね? 俺、もう帰っていいよな?)


 

キンッキンキンキン!!



 ディナ姉の戦闘を《予知プレディクション》で傍観しながら、淡い期待に胸を躍らせる。


 正直、冒険者達は邪魔でしかない。

 "ギルマス"と呼ばれたスキンヘッドも動きは悪くないが、やはり役者不足な感がある。


 黒ローブの集団の連携は凄まじい。


 負傷者はいるが、死者がいないのはおそらくディナ姉とスキンヘッド、黒ローブの調査兵団が上手くフォローしながら戦っていたのだろう。



(おぉ……流石……)



 俺は"予知"した光景に感嘆する。


 


「《炎華滅却》……!!」



ボワァッ!!



 ディナ姉のギフト【炎華】。


 相手の足元に"巨大な華"を咲かせ、その範囲内に空にまで届くような炎柱を作る特殊な炎を顕現させる物だ。



ゴッウォオオオオオオ!!

 


 辺りには焼け付くような熱風が吹き荒れ、先程の寒さなど一瞬で消し飛んでしまう。



(……すごいな)



 赤くただれた氷鬼人が姿を表すと、



「死ね……。魔王軍"八魔将"、氷剣の鬼人"ザク"……」



グザンッ!!!!



 ディナ姉は氷鬼人の首をはねた。


 ディナ姉の剣術スキル【斬鉄】。『剣姫』と呼ばれるのは当然だ。ディナ姉は炎系のギフトと合わせて、剣術のスキルを複数所持している。



コロコロコロッ……



 転がる氷鬼人の首に周囲から大歓声が響く。



「「「「「うぉおおおおお!!」」」」」



 ディナ姉は軽く剣を振り、血を飛ばすと剣を鞘に収めた。


「……ハハッ、俺、来なくてよかったじゃ、」


 そこで言葉を止め、"見えた"光景に戦慄する。


(ふざけんなッ! クソ! 大人しく"死んでて"くれよ……!!)


 宝剣をグッと握りしめて魔力を込める。



グザンッ!!!!


 

 どうやら俺が傍観することを"世界"は許さないらしい。伸ばした"剣"は、身体だけで動いてディナ姉を後ろから刺そうとしていた氷鬼人の腕を叩き斬った。





〜作者からの大切なお願い〜


 少しでも面白いと思って下さった優しい読者様。創作と更新の励みになりますので、


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 にしてくれたら、最高です!!


 豆腐メンタルなので、何卒!!


 また、この作品を【ブックマーク】して頂いている方、わざわざ評価して頂いてた方、本当にありがとうございます! とっても励みになっておりますので、今後ともよろしくお願い致します!


 次、視点変わりまーす。

 

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