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冒険者ギルドへ ②



ーーーアクアード 「冒険者ギルド」



 貴族として生きていたため、冒険者の仕組みはよくわからない。『魔力』に関しての知識よりも、上に立つ者としての教養しか学園では学んでいない。


(魔力量を測定って……)


 頭の中には姉様やエルフ達の言葉がよぎる。




――ギル(ギル様)の魔力量は……『ヤバい』。



ゾクゾクッ……


(ま、魔力量ってそんなに大事な物なのか……?! 測定なんて聞いてないぞ!)


 俺が顔を引き攣らせていると、ユノは「へぇ〜!」っと無邪気に笑いながら、鏡のような魔道具にそっと手を触れた。



ズズズッ……



 鏡の中に白いモヤのようなものが渦巻いていく。



「……し、白いぞ!! SSだ!! 実際には初めて見たぞ!」

「あんな小さな子がSSなんて……」

「そんな事より、あの子かわいすぎないか?」



 俺がピクピクと顔を引き攣らせていると、セリアもキョトンと首を傾げてからその鏡に触れた。



ズズズッ……



 鏡の中には金色のモヤが渦巻いていく。



「「「…………」」」



 長い沈黙の後、誰かがポツリと呟いた。


「SSSだ……」


(はい! もう目立ちすぎました! もう無理です! もう逃げます!!)


 俺の心の声など誰にも届かない。


「おぉおお!!! なんて逸材なんだ!!」

「なんてメイド!! いや、剣士? あ、明らかに普通じゃない!」

「し、信じられないッ!! こんな事って……!!」

「……そんな事より、なんて美しいんだ」



 俺は更に顔を引き攣らせながら、冒険者ギルドからの撤退を決意した。


 金を稼がないと快適なスローライフは送れないが、冒険者にはどうやらなれないらしい。



(なんで『こう』なるんだよぉお!! 『誰にでもなれる』って聞いてたけどぉ?!)



 心の中で大絶叫しながら、セリアとユノを連れ帰ろうとすると、ギルド内の冒険者達の波が押し寄せてくるのが"見えた"。



「うちのパーティーに入ってくれ!」

「いや、俺達の!」

「結婚してくれぇええ!!」

「好きだ! もう愛してしまっている!!」



 チラリと"見えた"光景に、俺はもう頭が痛くなって来るが、セリアとユノを誰にも触れられないように2人を"壁"と俺の間に挟んで、その場をやり過ごそうとしたが、"見えた"景色はいつまで経ってもやっては来ない。



ズズズッ………



 首を傾げ、また《予知プレディクション》すると……、



「な、なんだよ、これ……」

「何がどうなって……」

「み、見たことないぞ……。こ、これは『ヤバい』……」

 

 確かに『ヤバい』のが見えた。



(……ざけんな!! クソッ!!)



 すぐにユノを抱えて、セリアの手を引く。



 ポカーンッと『鏡』を見つめて固まっている冒険者や受付嬢達が放心している間に、ミーシャの待つ旅館に帰らないと……。



 ギルドを出ると同時に、


パリーンッ!!!!


 轟音と共に『虹色』になった鏡は割れてしまったようだ。



「「「「うぉおおおおおお!!!!」」」」


「何者なんだ! 破壊するほどの魔力量のルーキー!」

「『未来』が見える規格外……ちょっと待て!! もしかして、『勇者様』じゃ……」

「そ、そうだ……。魔王討伐に向かわれた『勇者様』だ!!」

「『虹色』ってなんなんだ!?」


 ギルドから漏れ出る声に、俺の目からは涙が流れた。


 俺に穏やかなスローライフは許されない。



「ユノ……、また顔変えといて……」


「はい! ギル様!!」



 俺は首を傾げるメイドと無邪気に笑う幼女と共に、


(あのおっさん(国王)、マジでふざけんなよ……)


 トボトボと帰りながら項垂れたのだった。



※※※※※



「旦那様? 大丈夫? 背中流すよ?」


 タオルで身体を隠したミーシャには、グッと来るものがある。『誰にでもなれる』はずの冒険者になれなかった。


 俺のメンタルは崩壊している。



「ミーシャ……」


「ふふっ! 大丈夫! 絶対、大丈夫だよ? ……旦那様はどんな事があっても……」

 

 ミーシャの笑顔に俺はゴクリと息を飲む。



ハラリッ……



 ミーシャのタオルをクイッと外し、真っ赤になって照れるミーシャをオンセンに引き寄せる。


 美しい裸体にゴクリと息を飲みながら、頬に手を添えてキスをしようとすると、



コンコンッ……



「ご主人様、女将オカミさんが……」


 裸の俺たちを見つめるセリアは、自分のメイド服に手を伸ばし、ハラリと下着姿になる。


「……奥様。本日は、ご主人様と奥様のお背中はセリアがお流ししましょう。『サポート』させて頂きます」


「ちょ、セリア! ちょ、ちょっと待ってよ! 女将オカミさんが、何だって……!?」


 頬を染めるミーシャは落ちてたタオルを引き寄せると、慌てた様子でセリアに声をかけた。


(……どうせ、ろくな事じゃない!! もうやめてくれぇええ!! これからミーシャを抱くんだからっ!!)


 ただでさえメンタルがやられている俺。……ミーシャに癒しを求めたのに、セリアに寸止めされた。



「……ご主人様が『勇者様なのではないか?』の勘ぐっているようなのですが……?」


「……なに、平然と下着を外してる、セリア」

(ふざっけんな! クソッ!! なんで俺だってバレてんだよ!!)


 俺は現実逃避するように、ミーシャの胸に顔を埋めた。



※※※※※



 アクアードの冒険者ギルドでの一連の騒動により響き渡った『勇者来訪』の噂。


 それはあっと言う間に広がり、これをきっかけに様々な『不幸』が押し寄せる事をギルベルトは知らなかった。


 


〜作者からの大切なお願い〜


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 創作の励みになりますので、何卒!!


 この作品を【ブックマーク】して頂いている方、わざわざ評価して頂いてた方、本当にありがとうございます!! とっても励みになっておりますので、今後ともよろしくお願い致します!!


 今日はまだ投稿するので、よろしくです。

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