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逃亡開始! 



 周囲がざわざわと騒がしいったらない。


「アイツが王になれば、オラリア国は終わりだな……」

「あの『首席ぼっち』、ロリド殿下を完璧に敵に回したぜ……」

「情けない。あんなのが次期国王か……」


 聞き捨てならない新たな『あだ名』は気になるが、ここが卒業パーティーの場である事を失念していた。この学園には各国から留学生が訪れていたのだ。


 これほど惨めな次期国王を演出するつもりは微塵もなかったのだ。


(さ、酒のせいだ……!!)


 もう体質のせいにはしないほどには、酔いは冷めている。「当分、こんな美酒は飲めない」などと欲張った結果が『コレ』だ。


 いや、それすらも『世界』がやったに違いない!


「な、何をしてる! さっさとこの『下賤のクズ』を捕らえろ!! さっさと誰か動けッ!!」


 ロリドはすっかり涙声で叫ぶが静寂が辺りを包む。


(……ど、どうする? どうする!? どうするんだ、俺!!)


 自問しながら、顔を引き攣らせる。


 この場に俺が居続ける事が、未来の国王への不信感を高めていると判断し、そこからゆっくりと姿を消そうとする。


「貴様!! 何を逃げようとしている!? 私に対する数々の無礼の責任をとれ!!」


「……も、申し訳ありませんでした、殿下。さようなら。お疲れ様です。もう二度と顔を出しませんので!!」


 俺は頭を下げて、その場から退散する。


「お、おい! 待てぇえ!! 捕らえろ! あの者を即刻捕らえよ!!」


 ロリドの号令にやってきたのは王族の護衛執事達。少し息の上がった男達がワラワラと姿を表しては俺を捕らえようとしてくる。


(やばいよ、やばいよ!!)


 おそらく、俺が居るだけで不名誉は更新され続ける。俺の『体質』が『そう』なのだ。


 これはロリドのためだ。


――ただ逃げただけだろ?


 『もちろん、その通りだ!』


 俺はまだ死にたくない。

 『斬首』にされるわけにはいかない。


 兄が家督を継ぎ、緩いポジションで緩い生活を送る事を望んでいただけ……。決して、王子を泣かせて『王国の恥』を高める事などしたくなかった。


 そもそも、ちょっと殴っただけで、斬首なんて無茶苦茶な話だ。いや、充分すぎるが、そんなのは受け入れられない。


 ふと、両親と姉兄の顔が浮かぶ。


(……ま、まぁ許してくれるよな!)


 正直、心配ではあるが、なんとかなるだろう。


 父様は辺境の小さい都市の領主で、領民との絆はなかなかの物だ。小都市と言えど、いざとなれば独立でも何でもすればいい。


 隣の『帝国』に太いパイプも持っているし、いざとなればオラリアを捨てればいいんだ。いや、俺の命を守るために、捨ててくれ!


 俺は無理矢理に自分の行動を正当化しながら、駆けていく。お気づきかもしれないが、俺はなかなかのクズだ。だって、『下賤のクズ』なのだから仕方ない。


 俺は《予知プレディクション》を連発させながら、追っての裏を掻き、急いで学内にある自室に入ると、専属メイドの『セリア』が学園を去る準備をしているところだった。


「セリア! 早く屋敷に帰るんだ! 俺はちょっと『ヤボ用』が出来た!」


「……『ご主人様』? 何をそんなに慌てているのですか?」


「せ、説明する暇はない! とにかく、カーティス家、いや、ストロフ家に戻れ! 一刻も早く!」


「ご主人様はどうされるのですか?」


 キョトンと首を傾げるセリア。

 代々カーティス家に仕える使用人の家系で、年は俺の1つ下で、容姿だけはかなり優れている。


 基本的に無表情で優秀な雰囲気を出しているが、なかなかのポンコツだ。いままさに俺が必死の形相なのに、不思議そうにキョトンとするような、少し抜けてる専属メイドだ。


「お、俺は逃げる! とにかく逃げる! 地の果てまで逃げる!!」


「……?」


「後で謝罪の文を父様達に送る。とりあえず、『申し訳ありませんでした』と伝えてくれ! ……ミーシャにも、『約束破って悪かった』と!」


「それは出来ませんよ、ご主人様」


「はぁ? いいから、早く行け! お前もここにいるのは危険だぞ」


「ご主人様。私もお供します」


「……はっ?」


 俺が絶句すると同時に部屋のドアを叩く音が響く。



ドンッ! ドンッ! ドンッ!!



「ギルベルト・カーティス! 早く扉を開けなさい!」

「学内は包囲されている! 逃亡する事など不可能だ」

「ロリド殿下に対する数々の無礼! 大人しく投降しなさい!!」


 王立学園の設備は世界最高峰。

 簡単に扉を開ける事は出来ないはずだ。


(引きこもるか……? いやいや、食事とかどうすんだ!?)


 これはもう本当にやばい。

 もう本当に、やばすぎる。


 ギロチンに首を飛ばされる自分の姿を想像してしまい、ゾクゾクッと背筋を凍らせる。


(よ、よし。本気で逃げてやろう!! 貴族の次男として悠々自適の自堕落な生活は諦めてやるよ! だが、平穏な生活だけはなんとしても手に入れてやる!!)


 絶対に死にたくもないし、働きたくもない俺は、田舎での生活を手に入れる事を決意する。


「ご主人様?」


 ひょこっと顔を覗き込んで来たセリアに、完璧に存在を忘れていた事に気づく。


「よし。セリア……。『ギルベルト様はここには来られておりませんが……?』だ!! 可愛らしく首を傾げるのも忘れるなよ? 俺は窓から飛び降りる」


「『ギルベルト様はここには来られておりませんが……?』」


 小さく首を傾げるセリア。

 無表情だが、100点満点の可愛さだ。


「よ、よし! それでいい! 伝言も頼んだぞ! カーティス家のお抱えメイドに乱暴する事もないだろうし、いざとなったら、セリアなら余裕で逃げられるだろ?」


 セリアは『ギフト持ち』だ。

 俺の中途半端な【未来視】なんかではなく、ゴリゴリの武闘派ギフト、視認すら許さない超神速の加速を可能にする【閃光】。


 レイピアなんか持たせたら、まさに最強。

 捕まえるなんてまず無理だ。


「ご主人様。私もお供します……!!」


 少し長めの銀髪をサラッと靡かせながら、紺碧の瞳を細め、ニコッと微笑むセリア。


(わ、笑ってる? ……って、ダメだ、コイツ……! 話が通じない!)


 ドンッ、ドンッと扉を叩く音は勢いを増す。絶句する俺に、無表情に戻ったセリアは口を開く。


「私はギルベルト様の『専属メイド』。ご主人様のそばを離れるわけにはいきませんので一緒に逃げましょう。私が快適な逃避行を約束致します」


「バカか! 正直、邪魔でしか、」


 ここまで伝えて言葉を止める。《予知プレディクション》した俺の瞳にはヤバすぎる物が見えたのだ。



「《分解》!!」



 鼻声の情けない叫びが響く瞬間に、俺は目についたバックを片手で取り、セリアを抱えて窓から飛び出した。


「ご主人様。今日のパンツは純白ですよ?」


「知るかぁあああ!!」


 3階からの決死のダイブ。

 俺の逃亡生活が幕を開けた瞬間だった。





〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

「次、どうなる?」

「更新頑張れ!」


 少しでもそう思ってくれた読者の皆様。

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