〜ロリド・ジャン・オラリア〜 ⑤
―――王宮
「ロリドよ……。貴様を地下牢にて幽閉する事にした」
ロリドは父である国王の言葉に耳を疑い、跪いたまま、一切その場から動くことが出来なかった。
(な、何を……。何を言っている……?)
そんな事はあり得るはずはないとタカを括っていたのだが、王国内の主要な貴族や大臣の前で発せられた言葉に、これが現実である事を理解する他なかった。
「国外追放も考えたが、貴様の心根ではろくな事にならないとわかっている……」
「……な、なぜでしょうか……? な、なぜ私が牢にッ! そんな事はおかしい! 私はこの王国の第一王子! そんな事が許されるはずがない!!」
「貴様は本当に救いようがない。オーウェン、『あの者』を連れてこい」
「はい……」
ロリドはオーウェンに連れられて来た人物に全身の血が沸騰するような感覚に包まれる。
(マ、マーク……!! 裏切ったのかッ……!!)
そこには一切ロリドの方を見ようとしないヤツれたマークが立っていたのだ。
「この者から、『全て』聞いておる。それに……、メイドの件も調査を終えた」
「……」
「メイドは自ら命を絶った……。貴様が殺したような物だ、ロリド!!」
「……『合意の上』でございました」
「……」
国王はロリドの言葉にゴクリと息を飲み、ここまで腐敗している性根に激しく嫌悪する。
「ギルベルト・カーティス暗殺計画……。なんとも信じがたく、なんとも愚かだ……」
「……」
「国の窮地を救った英雄に……。貴様は善悪の区別も出来ないのかッ!!」
ロリドは止まる事のない叱責の言葉を聞きながら、この窮地をどのようにすれば抜け出せるのか、マークを屠るためにはどうすればよいのか、『父の間違い』をどうすれば正せるのか……、
ギルベルトに自分の権威を認めさせるためにはどうすれば良いのか……
必死に頭を回転させて思案した。
オラリア王国はまだまだ発展する事ができる。
ロリドには世界を学ぶことで気づいた事があった。
侵略戦争を嫌う父は国民から『賢王』などと呼ばれているが、ただの腰抜けであるという事と、恐怖と権威こそが王には必要であるという事実だった。
独裁国家のドワリンの急激な成長は王による恐怖政治の賜物なのだ。その国の在り方に、ロリドはひどく共鳴し、目指す者を決めた。
民を支配し、領土を広げることでオラリアは帝国にも引けをとらない王国になる。
ロリドは王とは神と同義であると結論づけたのだ。
神に逆らう者には罰を。
神は全てを望み、それを手に入れる。
そのうち国民は神に平伏し、「我、先に」と気に入られるように奮闘し、競争が生まれる。
そうする事で自分は世界を手中に治める。
(お前は間違っている……。私こそが正しく、私こそが世界を手に入れるにふさわしいのだッ!!)
ロリドは激しい憤怒にその身を焼き、安堵を滲ませるマークに心から殺意を抱いた。
「新米の執事に脅迫まがいの言動に、失ってしまったメイドの命……。最早、貴様に生きる価値などありはしない!! 一生、悔やみ後悔しながら牢で過ごすのだ!!」
「……ふざけるな……!! 私こそが王にふさわしいッ!! 私に逆らう者は誰1人として許してはならないのだッ!!」
ロリドの言葉に広間はシーンッと静まり返る。
「……『やはり』間違いないようだ」
「なんと身勝手で恐ろしい事を……」
「にわかには信じられなかったが……本当に……」
ポツリ、ポツリと呟く大臣や貴族達の言葉にロリドは眉間に皺を寄せ、辺りを見回した。
「貴様らもだ! 私に弓を引くという事が、どういう意味を持つのか教えてやる!!」
ロリドは【分解】のギフトを発動させ駆け出した。
触れる物を分解する圧倒的な力。
選ばれた者にのみ与えられる神からの『恩恵』。
従わない者は始末すればいいのだ。
自分にはそれが許される。
この『力』を与えられた事と、王族として産まれた事が、全てだとロリドはマークに襲いかかるが、憐れみの視線を向ける父の瞳に立ち止まる。
「貴様と『血が繋がっていない』とわかり、心から安堵したぞ……、ロリドよ……」
「……!」
(な、何を言っている……?)
カツッ……カツッ……カツッ……
ロリドは広間に響き渡る足音に、ブルッと身体を震わせ、皆の視線の先をなぞるように勢いよく振り返った。
(……嘘だ……!!)
王国騎士団、団長のティグウェルに連れてこられたのは、手枷をはめられ絶望に顔を歪ませる自分の母親であった。
ロリドは背筋にはゾクリッとした物が走り、自分に王族の血が流れていない事を悟り、絶望に顔を歪ませた。
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