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逃亡生活の終わり。side:セリア



side:【セリア】



 ミーシャ様とご主人様のキスを見て悟った。


(……許しが出たのですね、ミーシャ様……)


 ブラウンの綺麗な髪と透き通る瞳。


―――ギルとしか結婚しない!


 幼い頃からずっと言い続けていたミーシャ様からのキス。ミーシャ様は公爵令嬢としての立場をよく知っている。


 婚約者でもない者と口づけをする事などあり得るはずがないのだ。



(夢は覚めてしまったんだ……)



 『閃光』の反動で動けない私はチクチクと胸を刺す痛みに涙を堪え、この幸福な日々が終わりを告げた事を理解した。



 こんな事なら、「メイドとして自分から迫る事など許されない」などと言わず、無理矢理にでもご主人様に迫ればよかったも思った。


 でも、自分はどこまで行ってもメイドの身。

 ご主人様の幸せを考えるならば、答えは明白だ。



(……ご主人様。どうかお幸せに……)


 幼い頃から自分と同じようにギルベルト・カーティス様を愛し続けていたミーシャ様であれば、きっとご主人様は幸せになれるはずだ。

 


 ミーシャ様がご主人様を心から愛している事は知っているし、ストロフ家に山のように届く婚約の申し出を断り続けているのも知っている。



 その全てがご主人様との未来のためである事を知っている。



「セリア。無事で何よりじゃ! よく頑張った。こんな所まで付き従うなんて、メイドのかがみじゃ!!」


 メイドとしてのイロハを教えてくれたのは両親だけど、自分が尊敬するストロフ家の執事長、レム爺様の言葉に心の中で反論した。


(セリアはご主人様の事を愛し、ご主人様からの愛が欲しくて仕方のない、愚かな、『ポンコツメイド』ですよ……)


 レム爺様はそんな事一切気がついていない様子で、今の状況を教えてくれた。






「大丈夫か? セリア……」


 ユノさんやエルフ達から逃げるようにご主人様は私に気遣の言葉をかけてくれる。


「……はい。ご主人様」


 気を抜くと涙が流れてしまいそうな私は、懸命に無表情を崩さないように必死だ。


 みんなのガヤガヤした声だけが辺りには響いている。私は少し難しそうな顔をしているご主人様に声をかけた。


「……この逃亡生活はおそらく終わりなのですね」

(本当に夢のような時間でした……)



 レム爺様から聞いた話をご主人様に伝えると、ご主人様はとても嫌な顔をしたが、私は未だ積もり募っていく愛慕に胸が痛かった。



サァー……



 穏やかな風が丘に吹く。

 2人ともが沈黙した束の間の空気感。


 この逃亡生活中、何度も訪れた、この瞬間が大好きだが、これが『最後』である事をより実感させられる。



「いかがでしたか……?」


「……何がだ?」


「逃亡生活です」


「……お前はどうなんだ? セリア」


「セリアはご主人様が快適な逃亡生活を送れたのだとしたら、それだけで幸福です」


 私は逃亡生活を振り返りながら、ユグドラシルを見つめる。こんなに幸せだった事を一生の思い出にするために瞳に焼き付ける。


(本当に夢のような時間でしたよ、ご主人様)


 溢れそうになる涙を懸命に繋ぎ止めていると、ご主人様が小さく口を開いた。


 


「セリア。お前……、俺の事好きなのか……?」




 突然の問いかけに、先日、気持ちが溢れ出て思わず口づけをしてしまいそうになった時の事が頭を駆け巡る。


(えっ、あ……。ど、どうしよう! やっぱり、バレてた……! でも、やはり秘匿するしか……)


 ドクンッドクンッと心臓は激しく音を立てるが、ご主人様の真剣な表情を前に、自分がどうすべきなのかを理解し、またユグドラシルに視線を向ける。



「セリアはご主人様の専属メイド。ご主人様が快適で幸福な毎日を過ごして頂く事しか考えておりません。それがメイドの勤めにございますので……」



 口に出しながら、(これでいい……)とグッと唇を噛み締める。


 ご主人様はミーシャ様と幸せになられる。


 私はご主人様の専属メイドで居られるのが永遠ではない事を、今一度、肝に銘じなければならない。


 ご主人様はいつか必ず……、いや、おそらくもう既に大成されているし、婚約者も出来たのだ。


 きっと私の役目はここで終わる。私はただのメイドに戻り、カーティス家に帰る事になるだろう。



 ユグドラシルを見つめながら、もう一度深く心に刻み込む。一生に一度の夢のようだった毎日を……。



「……気づいてないのか?」


「……何をでしょうか?」

(頑張れ、私……。いつも通り。いつも通り……)


 必死で無表情を装う私に、ご主人様は「ふぅ〜……」っと深く息を吐くと呆れたように笑い、私の頭を優しく撫でた。


 トクンッと心臓が弾み、ご主人様に視線を向けると、そこには少し頬を染めたご主人様がニカッと笑みを浮かべていた。



「ハハッ……。セリア、お前、そんなに俺の事が好きなのか? じゃ、じゃあ……、これからも一生、俺だけのメイドでいろよ? セリア!」


「……」

(何でお気づきに……? えっ……? 『一生』……?)


「ど、どんな時でも、どんな事になっても、俺のそばにいる事を許可してやるからな?」



 湧き上がる涙を堪え切れるはずがない。

 込み上がる笑みを抑えられるはずがない。



(こんな幸せな言葉を頂いていいのかしら……)



 ご主人様は照れたように、頬を掻き、優しくて穏やかな表情で微笑みかけてくれた。『一生』なんて言葉を貰えたなら、もう表情を我慢する事なんて出来るはずがない。



「はい……。セリアはご主人様の専属メイド!! どんな時も、どんな事になったとしても、側に控えております……!!」


「あぁ……」


「……う、うぅ……。ありがとう、ございます……。ご主人様……。セリアにとってそんな幸せな言葉はありません……」


「……ふっ。泣くなよ」


 そう言って撫でられた頭。

 ご主人様を一生、奉仕させて貰えるなんて……。


(夢はまだこれからも続くのですね。でしたら、『一晩の過ち』も充分に期待出来るんじゃ……?)


 私がメイドらしからぬ事を考えていると、ご主人様は上着のポケットから私のパンツを取り出し、カッコいい顔で手渡してくれた。



「……い、今、感動のシーンだろ!! 何してくれてる! このポンコツメイドめッ!!」


 ご主人様は私の涙を止めようと、『わざと』こうしてパンツを取り出し、場の雰囲気を変えようとしてくれているとすぐにわかった。


「……ふふっ。ご主人様にこんなに大切にして頂いて、セリアのパンツも喜んでおります」

(心から愛してます! ご主人様!!)


「……お、お前が忍ばせてたんだろう!? 洗濯とか支度はお前がしてるんだからッ!!」


「……ご主人様に愛用して頂けるて幸いです。屋敷に戻りましたら新しい物も用意させて頂きますので」

(ふふっ。だって私は『一生』、ご主人様の専属メイドですから!)


 ご主人様は「ふっ」と小さく笑うと、少し頬を染めて照れているように感じた。




 次から本気のざまぁです!

 よろしくです!!



〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

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[一言] >次から本気のざまぁです! そういや王子がまだ一ミリも絡んでなかった!
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