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〜リリムの焦燥〜




 ミーシャ、リリム、レムの3人は空を飛びながら、遠くに見える暴虐竜にゴクリと息を飲む。


「リリム姉さん……。本当にギルが……?」


「わからない……。でも、明らかに『何か』を見つけたように見えたし、ギルの魔力量に興味を持ったのかも……」


「……それに、ギル坊の体質を考えれば……」


 レムの言葉にミーシャとリリムは押し黙った。昔からギルベルトを知る3人にとって、『これ』は充分にあり得るとわかっているからだ。


(ギル……。無事でいて……)


 ミーシャは涙を必死に堪えながら、心の中で必死にギルベルトの無事を祈った。




※※※※※【1時間前】 〜水の都『アクアード』〜



グオオォオオオオン!!



 空を飛ぶ『暴虐竜』にリリムは唖然とした。


(これが『竜種』……。流石に無理だわ!)


 ギルベルトが逃亡しているのなら、「観光地であるアクアードに向かっているのでは?」とリリム達は『水の都』を訪れていたのだ。


「あぁ……。なんなんだ、あれ……」

「いやぁああ!!!!」

「『化け物』だぁあ!! 逃げろぉお!!」


 逃げ惑うアクアードの人々にリリムはギリッと歯軋りをする。


「リリム姉さん……。あ、あれ……」


 自分の服をギュッ握るミーシャを安心させるように微笑みかけながら、ふぅ〜っと小さく息を吐く。


(ギルの婚約者を……。可愛い妹を死なせるわけには行かない……!!)


 レムに視線を移し行動を促すと、レムは緊張した面持ちで仕込み剣を抜いた。


「ち、違う! ミーシャについててあげて! とりあえず、私が出るから!」


「リリム様、老体とはいえ、私は旦那様の命を受け、闇ギルドの改革と殲滅を指揮したのですぞ? リリム様はミーシャ様をお守りしてくれんかの?」


「レム爺の剣の腕はわかってるつもりよ。でも……みすみす死なすわけにはいかないわ」


「この老いぼれの命など、ミーシャ様とリリム様のためならば今すぐにでも捨てられるんじゃ! あの『化け物』の気を引き、ここから遠ざけるくらい……!」


 レムはそう言うとゴクリと息を飲んだ。


「レム爺……! ダメだよ! 嫌!!」


 ミーシャはレムに抱きつき、ボロボロと涙を流すと、レムは優しい笑みを浮かべて頭を撫でている。リリムはそれを見つめながら「ふっ」と小さく笑みを溢し、改めて決意を固める。



(私が守らないといけない。ギルの大切な人達……。姉として、ギルの幸せを守らなければ)


―――リリは強いお姉ちゃんだから、イルとギルを守ってあげてね……?


 亡き母との約束がリリムの頭には鮮明に蘇る。



「ミーシャ様を頼みます。リリム様……。ストロフ家、筆頭執事として、心から懇願致します!!」


「ふふッ! まぁ見てなさい! こういうのは帝国騎士団、団長、リリム・カーティスに任せておけばいいの!」


「リリム姉さん……」


「大丈夫よ、ミーシャ。討伐は出来なくても、ここから遠くに飛ばす事くらいは出来るから」


「でも……。リリム姉さんが怪我しちゃったら……」


「そうじゃ! ここはワシに!」


 必死な形相のレムにリリムは穏やかに微笑んだ。


「レム爺……。ミーシャを頼むわよ?」


 リリムはそう呟くと、『風操作ウィンド・オペレート』を展開して上空に向かおうとするが、驚愕の景色が目に入る。



「な、なんじゃと……!!」


 レムの声を聞きながら、巨大な黒い塊を口の所に創造した暴虐竜にゾクリッと背筋が凍る。


「……う、うそ……」


 ミーシャが呟いた瞬間に、暴虐竜は上空で黒い塊を爆発させた。




パァアアンッ!!




 炸裂音と共に飛散した黒い塊が雨のように降り注いでくる。


「《混合結界ミックス・サークル》!!」


 ドス黒い魔力の雨にリリムは街を覆うほどの結界を展開した。複数種の属性を混ぜ合わせた鉄壁の結界に、自分の魔力量のほとんどを消費してしまう。


 虹色の膜がアクアードを包みこみ、ザザァッと雨がその膜を容赦なく叩きつけていく。


「リリム姉さん!!」

「リリム様!!」


 2人の鬼気迫る声を聞きながら、リリムはすり減っていく魔力に苦悶の表情を浮かべる。


(くっ……いつまでも、もたない……)



ザザザザザザッ!!!!


 もう限界を迎えた頃、急に雨がピタリと止んだ。


(……くっ……次は……! とりあえずミーシャとレム爺だけでも転移で飛ばすしか……)


 頭がボーッとしながらも、次の攻撃の気配がない事に不思議になったリリムは空を見上げると、そこには暴虐竜がどこか遠くを見つめて停止しているのが目に入った。


「……なに?」


 ガクッと地面に膝をつきながら、魔力を練り2人を転移させようとしていると、暴虐竜は巨大な咆哮を上げて飛び去って行った。


「……えっ?」


「う、うぅ……うわぁーん!! リリム姉さん!! よかった! 本当に良かったよぉ……」


 抱きついて来たミーシャにホッと胸を撫で下ろしながら、優しく頭を撫でる。


「「「うぉおお!!」」」


 歓喜に沸くアクアードの人々の声が響き渡り、


「流石、リリム様じゃわい!!」


 心底ホッとしたような笑顔のレムに「ふっ」と力なく笑みを返すが、リリムの心はモヤモヤとした物に包まれていた。



(何で……去って行ったの……?)



 脳裏を過ったのはギルベルトの笑顔。


「ま、まさか……、ギ、ギルを『見つけた』の……?」


『人ならざる魔力量をもつギルベルトに興味を持ったのではないか?』


 竜種の考えなどわかりはしないが、こんな中途半端な襲撃は『らしく』ない。明らかに不自然な暴虐竜の行動にリリムは一つの結論に辿り着いたのだ。



 顔を青ざめたリリムは慌てて声を張り上げた。



「レム爺! 魔力回復薬マナ・ポーションをありったけ買ってきて!! 早く! アイツ、ギルを狙ってる!!」


 リリムの言葉に、レムは大きく目を見開いて、ミーシャは涙を引っ込めた。


 駆け出したレムは歓喜に沸くアクアードの人々の間を縫うようにして必死に走ったのだった。



 だが、暴虐竜はギルベルトの気配を察知したわけではなかった。


 ふらりと降り立った地上で、いつものように適当に暴れて魔力を消費し、またゆっくり眠りにつこうと考えていただけであったが、遠くに世界樹を見つけたのだ。


『クハハハッ!! ミツケタゾ! ユグドラシル!!』


 ユグドラシルは無限に沸く魔力の化身。

 竜種達はユグドラシルを追い求め続けていた。


 ユグドラシルを手に入れる事で、『竜王』に至ると知っているのだ。



『我コソガ、王トナルノダ!!』


 などとエルフの里に向かったのだ。




※※※※※



 目の前には暴虐竜が『何か』を攻撃している。


(あんな所で何を……?)


 眉を顰めたリリムが『幻術』と『特殊結界』の気配を察知すると同時に、



ドゴォーンッ!!



 巨大な黒い塊により、結界が解かれた事を理解した。



 目の前に現れたのは、とても巨大な暴虐竜が小さく見えるほどの、信じられないほどの大樹。


「……なんなんだ……あれは……」

「なんて大きな木なの……?」

「……見事な……」


 感動もそこそこに、リリムは結界が破られた瞬間にある人物の魔力を検知する。


「ギルがいる!! ギルを見つけたよ!!」


 リリムはホッと胸を撫で下ろした。


 ギルベルトには《身体強化》しか教えてはいなかった事を後悔していた。「空を飛ぶ暴虐竜が相手では、思うように戦えず、苦戦を強いられるのではないか?」と思っていたからだ。


 しかし、このタイミングで自分が間に合った。自分のサポートがあれば竜種といえ、ギルベルトの相手にはならないとわかっているからだ。


 リリムは暴虐竜などもうどうでもよくなり、久しぶりのギルベルトとの再会にトクントクンと心臓を弾ませた。



午後からも頑張りましょう!


〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

「次、どうなる?」

「更新頑張れ!」


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