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ユノの幸せ



―――エルフの里



side:【ユノ】



 ギル様とセリアちゃんが来て5日経った。


(ふふふっ! ギル様、あったかい……)


 まだスヤスヤと眠っているギル様に擦り寄り、ギューッと抱きしめる。



 歓迎の宴でのギル様は本当にかっこよかった。


―――救世主として、この里に歓迎されている事は嬉しく思います。ですが、俺とセリアも、この里の住人として接して頂ければと思っています!


 たくさんのエルフ達の前でそう言ったギル様は、きっと『邪竜の事は気にせずに、いつも通り過ごして欲しい』と言ってくれたんだと思う。

(※ギルベルトはただ持て囃されるのが嫌だっただけ)



 救世主様なのに威張る事もせず、午前中はエルフ達と一緒に食糧を調達し、午後からは3人でのんびり過ごしている。


 セリアちゃんの料理は本当に美味しくて、掃除や洗濯はとっても早くて尊敬するし、ギル様はとても優しくて、いつも頭を撫でてくれる。


 3人で同じ家で住む生活にも慣れて来たけど、ギル様とセリアちゃんはいつも2人一緒に居て、セリアちゃんは言葉を交わさずともギル様の考えがわかっているようで、少し羨ましい。


(僕ももっと早く出会いたかったなぁ〜……)


 2人を見つめてはそんな事をよく考える。


 エルフは『人間』が嫌いだ。

 人間は、エルフを攫いに来たり、ユグドラシルの恩恵を手に入れようと攻めて来たりしてきた歴史がある。


 それに人間の『音』を生理的に受け付けないのだ。


 でも、ギル様やセリアちゃんの音は、全然嫌じゃなかった。初めて会った時に、ギル様が救世主様だと気づいたのは『予言』があったからじゃない。


 そのとても心地よくて綺麗な音に、心を掴まれてしまったからだ。


「エルフの耳は悪い人間といい人間を『音』で判別出来るように進化したんだよ?」

 

 チアド婆様の言葉をすぐに思い出した。

 24年間、里を離れて『救世主』を待っていた。


 たまに見かける人間の音は不快な音ばかりで、山の茂みで隠れているばかりだったけど、ふと聞こえた音に導かれるように茂みから飛び出し、走り寄っていた。


(『神様』はきっと『こんな音』だ……)


 あの時の衝撃は忘れる事は出来ない。

 だって……、僕はあの瞬間にギル様に恋してしまったんだから。



 それから、毎日ギル様とセリアちゃんと一緒に居れる毎日が幸せでたまらない。

 

 1人で過ごす24年間は少し寂しかったけど、この穏やかで幸せな毎日が、ずぅーっと続いてくれればいいなと思うんだ。




 僕がモゾモゾしていると、ギル様は寝返りを打って僕をすっぽりと抱きしめてくれた。


(ふふっ……。幸せです! ギル様)


 穏やかな寝息と綺麗な『音』に包まれて、これまでの125年間の中で1番の幸せな日が更新される。



むにゅ……むにゅむにゅ……


「……!!」

(……ギル様! やっとその気になったんですね!)


 お尻を触ってくれた事に歓喜する。

 なかなか奉仕を受け入れてくれない、ギル様に拗ねていたのも事実だ。


「ん……う、……あっ……。ギル様ぁ……」


 少し熱いギル様の手が、僕のお尻を……


「ふふふっ……」


「……ん? ギル様……?」


 ギル様の突然の笑い声に、僕はギル様の顔を見上げる。そこには笑顔で幸せそうに眠ったままのギル様がいた。


(……む、むぅ〜!!)


 5日目にして、やっと奉仕を受け入れてくれるのかと期待しただけに、気持ち良さそうに寝ているギル様に口を尖らせる。



 僕はギル様のお腹の上に跨る。


「ギル様! 起きて下さい、ギル様!」


「……ん? ユノ……? まだ寝る……から……。今、いいとこだったんだ……」


 ギル様はまた夢の中に戻ろうとしているが、薄く開いた瞳で僕を見ると、ガバァッと起き上がり慌てて、シーツで僕を包んだ。


「ユノ! 服を着て寝ろって、何回言ったらわかるんだ! 病気になるかもだし、何か色々ヤバいだろ!」


「……僕はギル様が、いつ夜伽よとぎを望んでくれてもいいように、ちゃんと奉仕が出来る様に準備しているんです」


「え、いや、よ、よ、夜伽よとぎは……、その、エルフの常識と人間の常識の擦り合わせが終わってからだってば!!」


「……ぼ、僕には魅力がないのでしょうか?」


「いや、それはない! とっても可愛い! それは間違いない! ユノの可愛らしさは、世界一だ」


 ギル様はそう言うと僕の頭を優しく撫でてくれる。


「えへへ……。ギル様は世界一カッコいいです!」


 僕はギル様に抱きつこうとしたが、シーツに包まれたままである事を忘れていた。


「あっ……!」


 バランスを崩した僕は、ギル様のお腹の下辺りの固い所に軽く頭をぶつけてしまった。



「ダ、ァアッ!!」



 ギル様は変な叫び声を上げて僕の肩を支えながら、不自然に腰を引いて、そのままゆっくりとうずくまってしまった。



「ご、ごめんなさい! ギル様!! 大丈夫ですか?!」


「あ、いや、『こんな事』はよくあるし、な、慣れてるから……」


「……ごめんなさい! ほ、本当にごめんなさい、ギル様。どこをぶつけたのですか? 硬かったので、腰骨でしたか? 僕に見せて下さい」


「いや、それだけは絶対に出来ない……!!」


「……う、うぅ……大丈夫ですか? ギル様」


「え、いや! 大丈夫だから、泣かないでくれ! 痛くはなかったから!」


「……?」


 トコトコと床を歩く音に振り返ると、キョトンと首を傾げるセリアちゃんが立っていた。


「セリアちゃん! ギル様に頭突きしちゃった! どうしよう……!?」


「……ユノさん。まずは服を着て下さい」


「……? う、うん! わかった!!」


 よくわからないけど、セリアちゃんがそう言うのなら、そうした方がいいんだろう。僕が急いで服を着ていると、セリアちゃんはギル様の所に歩いて行く。


「おはようございます、ご主人様。大丈夫ですか?」


「あ、あぁ。大丈夫だから、ちょっと……1人に」


「……? 朝食の準備が整いました。今日の朝食のパンはセリアの胸の形を似せて焼きましたので」


「……バ、バカか! それだとパンだけでお腹がいっぱい……、じゃなくて、どこに力を注いでいる?」


「ご主人様が嬉しいかと思いまして」


 ギル様は「本当に……」と呆れてたように笑うと、立ち上がって僕の頭を撫でてくれる。


「ごめんな、ユノ」


「い、いや、僕が! 本当にごめんなさい! 大丈夫ですか?」


「いや、本当に気にしなくていい。なんなら忘れてくれても全然いいから」


「……」

(本当に優しいなぁ、ギル様は……)


「お腹空いたな! 朝食にしよう!」


 ギル様はそう言ってニコッと笑うと、スッと手を差し出してくれる。


 これが僕の1番幸せな瞬間なのだ。

 僕はその手をギュッ握る。


「はい! ギル様!」


 顔を見上げると、そこには穏やかに微笑むギル様がいる。ずっと、こんな日が続けばいいと心から思った。




〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

「次、どうなる?」

「更新頑張れ!」


 少しでもそう思ってくれた読者の皆様。

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