ギリッギリ!
急に現れたユノとセリアに俺は石になった。
「ユ、ユノ! あ、挨拶は終わったの?」
チアドは更に顔を赤くしながらパッと俺から離れる。
ユノは「むぅー」と口を尖らせると、トコトコと俺に駆け寄って来るが、嫌な予感に咄嗟に《予知》を発動させた。
ゾクゾクッ!!
『見えた』物に背筋を凍らせる。
(レム爺、レム爺、レム爺……)
俺が『必殺の呪文』を高速詠唱すると同時に、ユノは俺の腰に飛びついて来た。
「ギル様! 夜伽は僕がお手伝いすると、約束しましたよね?」
「……し、してないだろ……」
(ギリッギリすぎたぞッ! し、死にかけたぁあ!)
俺はホッと胸を撫で下ろす。
可愛らしく駆け寄ってくるユノを躱す事なんて出来ない。『あのまま』では大惨事になっていたのが『見えて』しまっていたのだ。
(本当にありがとう、レム爺……)
俺は『性』から1番遠い所にいるレム爺に、心の底から感謝を述べた。
「ぼ、僕はまだ、チアド婆様のようなお胸はまだありませんが、そ、そのうち育ちますよ?!」
少し頬を膨らませて俺を見上げるユノが可愛すぎてつらい。
「ふっ、そうだな! ユノは絶対に美人さんになるぞ?」
「えへへ……。あっ、そうだ! じゃあ、ギル様が育てて下さい!」
ユノは、ちんまりとはしているが、確かにそこにある自分の胸を掴み、パッーと笑顔を浮かべる。
「……」
(……だ、だから、ギャップがエグいんだってば!)
俺は顔を引き攣らせるが、ユノはぷっくりと頬を膨らませるから、その可愛らしさに笑顔を誘われて頬が緩んでしまう。
「ギル様? 聞いてますか?」
「あぁ、聞いてる。か、考えておくよ」
(そ、それ、紳士的にどうなんだ? エルフの常識がわからん!!)
少し狼狽えつつも、とにかくユノの綺麗な金髪の頭を撫でる。「えへへ……」と嬉しそうに照れたように頬を染めるユノの可愛さは正義だった。
「ふふっ、ユノ、ギル様とセリア様をお部屋に案内してあげてくれる? 2人の案内はユノに任せるからね?」
「うん! 僕に任せて! チアド婆様!」
「ギル様、セリア様。改めまして……、エルフの里はあなた様方の来訪に心から感謝致します。『来る日』までどうぞ、ごゆっくりお過ごしください……」
チアドはそう言うと優雅にお辞儀をしたが、否応なしに綺麗な谷間に視線が向き、手に残った感触を思い返す。
ハッとして即座にレム爺の顔を思い返しながら、去って行こうとしているチアドに慌てて声をかける。
「あ、あの! チアド様!」
「……? ふふっ、チアとお呼び下さい、ギル様」
「えっ? さ、里長に失礼じゃないですか?」
「いいえ。私がそう呼んで欲しいのです」
「……え、あ……じゃ、じゃあ、チア? 俺はどうやって邪竜を討伐するのですか?」
チアは少し頬を染めていた顔をキョトンとさせてから少し苦笑する。
「……《予言》はそれほど、万能な物ではありません。ギル様とセリア様のお顔とお会いできる場。……それから、少しだけ『世界の声』が聞こえるだけです」
「『世界の声』……?」
「『黒髪黒眼の大剣を携えた少年が、美しい従者と里を訪れ、邪竜を討ち果たし里を救う』……」
チアドは俺を見つめて穏やかに微笑む。
「私が聞いたのはそれだけです。自分の意志で発動させる事は出来ませんが、『世界』から確実に訪れる未来を教えて貰えるギフトなのですよ?」
「……わ、わかりました」
(……ってことは、死ぬ可能性もゼロじゃないのか?)
「今日は宴を開くので、お2人ともぜひ参加してくださいね! 美食と美酒にておもてなしさせて頂きます!」
「ハ、ハハッ。楽しみにしています!」
(竜種はヤバいってぇええ!)
チアドはまた優雅にお辞儀をしてから部屋を後にすると、お辞儀を返していたセリアが入れ替わるように俺の前に立つ。
「ご主人様。セリアも食事のお手伝いをして来ますので、許可をお願いします」
「セ、セリア。べ、別に何もしてないからな?」
「……? はい、わかっておりますよ?」
セリアはいつも通りの無表情で小さく首を傾げる。
「……わ、わかってるならいいんだが」
(な、なんでこんな事言ってるんだ、俺は……!)
「ご主人様はただの欲望に流されるはずはないと信じておりますし、セリアにそれを咎める資格はありませんよ?」
「……え、あ、あぁ……。べ、別にお前の主として恥ずかしい行為はしていないと伝えたかっただけだ!」
(胸は見たけど……)
「……わかっております、ご主人様。約束させて頂いたマッサージは眠る前に致しましょう。そうですね……、お風呂を済ませたタイミングがよろしいかと」
「……え、あ、あぁ。そうだな」
(ぜ、『全身』のヤツか!!)
俺がゴクリと息を飲んでいると手をギュッと握られる。
「僕もお伺いしてもいいですか? ギル様?」
「……えっ? あ、あぁ! いいぞ!」
はちゃめちゃに可愛らしい屈託のない笑顔に胸をキュンとさせながらも、ユノの頼み事ならどんな事でも了承してしまいそうで、背筋が寒くなった。
「では、ユノさん、ご主人様に里をご案内していただけますか? セリアは食事のお手伝いに行かせて頂きますので」
「うん! 任せてよ、セリアちゃん」
セリアはお辞儀をして部屋から出ようとするが、俺はセリアの背中に声をかける。
「ま、待て!」
「……?」
「セリア、今日はお言葉に甘えよう。もてなして貰う場に、俺の従者が行けば『信用されてないのでは?』と不安を煽るぞ?」
「……も、申し訳ありません。そのようなつもりは、」
「わかってる。だから、今日はゆっくり休ませて貰う事にするのがいいと思う!」
「……承知致しました。……流石はご主人様でございます。そこまで考えられておられるとは……」
「……」
(ただ単にエルフの人達に人見知りしてるから、セリアに居て欲しいだけなのだが?)
「考えが至らず、申し訳ありません。謝罪と言うわけではありませんが、セリアのメイド服の中に入られますか?」
セリアはメイド服のスカートを持ち上げると、しなやかで綺麗な足が顔を出した。
「……バ、バカか!」
(コ、コイツ、わざとパンツが見えない角度にしているのか……!)
見えそうで見えないパンツにゴクリと息をので、少し狼狽えてしまいながら、慌ててユノに視線を向ける。
「じゃあ、案内してくれるか? ユノ」
「はい! さっきセリアちゃんを案内してたんですが、僕も24年ぶりに帰って来たので、所々変わってて、上手く出来るかわからないけど、頑張りますね!」
「ハハッ。上手くしようって思わなくていいぞ? 久しぶりの故郷を楽しみな?」
「……は、はい! ありがとうございます、ギル様!」
ユノの笑顔は心を浄化してくれる。
この笑顔を守るためならば、竜種だろうが、何だろうが相手にするのも悪くないと思った。
〜作者からの大切なお願い〜
「面白い!」
「次、どうなる?」
「更新頑張れ!」
少しでもそう思ってくれた読者の皆様。
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