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第7話 気にし過ぎでしょ?

「ご、ごめんなさい!! まさかキミが新入部員だとは思わなくて……凄く失礼な事を言ってしまって本当にごめんなさい!!」


 テルマ先輩は謝ってる姿もメチャクチャ可愛いよなぁ。

 なんかずっと見ていたいくらいだ。


「テ、テルマ先輩、気にしないでください。俺は全然大丈夫ですからっ!!」


「もう、テルマ〜気を付けてよね? せっかく仮入部してくれた一矢君がテルマに怒鳴られたショックで、ネガティ部を辞めちゃったら、私の悩み事が更に倍になるとこなんだぞっ!!」


 え――――――っ!?


 菜弥美先輩それおかしくないですか!?

 俺が部を辞めたら何で悩み事が9×2=18になるのかな~??

 そもそも何で倍になるの!?


「だって、毎日毎日、私が教室を出てから部室に来るまでに何人もの人が私をジロジロ見てくるのよ! ほんと気持ち悪いし耐えられなかったの!! それで、やっと一番心が落ち着く部室の扉を開けた途端に、君が私の顔をジロジロ見ているような気がしたから思わず……本当に勘違いしちゃってゴメンなさい」


 俺がテルマ先輩をジロジロ見ていたのは否定できないから辛い。


 でも色々な人に見られて気持悪くなるってのはなぁ……それはテルマ先輩、気にし過ぎじゃないですかねぇ……


 きっと皆はテルマ先輩があまりにも可愛らし過ぎて、見とれてるだけだと思うしさ。


「テルマは気にし過ぎなのよ!!」


「菜弥美だってどうでもいい事で悩んでるじゃないの!!」


「どうでもいい事じゃないわよ!!」


 オイオイ、何だかヤバくなってきたぞ。

 俺ココにいても良いんだよね?


「まぁまぁ、皆さん少し落ち着きましょう。せっかく一矢君が仮入部してくれたんですから、みんなで楽しいお話をしましょうよ?」


 おっ、さすが美代部長だ。

 こういう時は部長らしい事を言うんだな?


「と言っても、私は『根暗』だし『ブス』だし『ノロマ』なので何一つ楽しい話題は提供出来ませんが……」


 や、やっぱりアンタ、アカン人や――――――っ!!


 こうなったら話題を変える為にも俺からアクションを起こさなければ……

 うーん、どんな話題がいいかなぁ……ん? 待てよ。そう言えば俺はテルマ先輩の……


「ところでテルマ先輩?」


「何かな?」


「あのぉ、テルマ先輩の苗字は何て言うんでしょうか?」


「みょ、苗字!?……」


 あれ?


 苗字の事を聞いたら、テルマ先輩の表情が少し暗くなったような……

 もしかして、苗字は聞いたらダメだったのかな?


「あのぉ、テルマ先輩……どうかされましたか? 大丈夫ですか?」


「う、うん……大丈夫……わ、私の名前はね……き、きに……」


「きに?」


「きっ、き、木西……テルマ……よ……」


「へぇ~っ? 木西テルマ先輩か~」


 クルッ


 あれ?


 急にテルマ先輩が俺に背を向けてしまったぞ。何でだろ?


 でもテルマ先輩は俺に背を向けながらこう言った。


「私……フルネームで呼ばれるの嫌いなの。だから私のことは『テルマ』って呼んでね? え、えーとぉぉ……君の名前は何ていうんだっけ?」


 ん?


 なんでフルネーム嫌なんだろ??

 ってか何で俺に背を向けたままなんだ?


 まぁ、別にいいけど、自分の名前を名乗ろうとしている時に相手が背を向けているのはいかがなもんなんですかねぇ?


 でも、とりあえず俺の名前は言っておこうか。


「あ、俺の名前は『布津野一矢』って言います。これから、よろしくお願いしますね、テルマ先輩!?」


 クルッ


 えっ!?


 俺が名乗った途端にクルッと回って今度は俺の方を向いて少し怒った顔をしてるぞ。えっ、何でテルマ先輩は怒った顔をしているんだ?


 お、俺、何かおかしなことを言ったのか??


「あのねぇ、君が普通の人って事は会った時から分かってるの!! 私は君の名前を教えてって言ってるのよ!!」


 は――――――っ!?


 アンタこそ何言ってるんだ!?

 って言うか、どんな耳してるんだよ!?


「テ、テルマ先輩いいですか? よ~く聞いてくださいね? 俺の名前は『ふ つ の ひ と や』です。普通の人に見えるかもしれませんが、俺は普通とは思っていませんし、いや、普通かな? っていうかそんな話はどうでもいいんです!! 俺の名前は『布津野一矢』ですからしっかり覚えてくださいよぉ。お願いします!!」


 ハァ ハァ ハァ……


 激しい口調で言ったから息切れしてしまったじゃないか。


 しかし何なんだ!?

 またしても自分の名前でこんなに嫌な思いをするなんて……

 親父、母さん、マジで恨むぞっ!!


 「そ、そうなの? ゴメンなさい……またしても私、勘違いしてしまったようね? あなたは『普通の人』だけどそれを認めたくない『普通の布津野一矢』君ね?」


 何ややこしい言い方をしてんだ!?

 あんた可愛い顔して俺に喧嘩売ってんのか!?


 でも表情がめっちゃ可愛いし、女子には優しくがモットーの俺がそんな事言えるわけないけどなっ!!


「一矢君、これからよろしくね。そして私の苗字は今直ぐ消去してね?」


「えっ? そんなに気にするような苗字じゃないと思いますけど……テルマ先輩、気にし過ぎじゃないですか?」


 俺の方が自分の名前を気にしちまうよ!!


 んっ? 

 ちょっと待てよ……


 気にし過ぎ? 

 気にし過ぎてる……気にしてる……


「あぁ――――――っ!! 『気にしてる』マ~っ!!!!」


「あ――――――っ!? いっ、言ってしまったわね!? 決して言ってはいけない事を君は言っちゃったわね!? 私が一番、言われたくない事を……」


 い、いや、テルマ先輩もさっき俺の名前で失礼な事を言いまくりでしたけど??

 それっておかしくないっすか?

 自分のことは棚に上げるタイプとかですか?


 う――――――――――――っ


 俺はテルマ先輩を睨みつけたが……

 

 で、でも可愛いから許しますけどね!!

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