ランナーズハイ
息ができない
供給が減るばかり
需要は増すばかり
酸素のタンクが空になる
動力源燃料がなくなる
最後の分子を使い切って
未知の分子が湧き上がる
水火八苦を越えた意識が
水上に顔を出し息を吹き返す
需要が減る
供給はない
必要な供給がされていないのに
需要を食い尽くす未知の分子
高揚感は需要食いを許容する
死を知覚してなお呼吸は止まる
空気が速くなる
加速はおさまらない
流れ行く人の呼吸音は
聴覚が勝手に遮断していた
聴いたときに分子は消える
分子は消してはならないと
本能が死物狂いで壁を建てた
あとほんの少し
何かの分子がないかと探っている