2.喧嘩相手が、ちょっとヤバかった?
まぁ、ある程度の障害はないとね(*‘ω‘ *)
だけどどう考えても、ケイネス=噛ませ、の構図は仕方ないw
「あ、あの! 本当にありがとうございました!!」
足蹴にされていた平民出身の女子生徒は、何度も頭を下げる。
俺はそれを受けて、どこかこそばゆい気持ちになった。
「いいや、良いよ。別にたいしたことしてないし……」
「そんな! 上級生相手に、圧倒してたじゃないですか!!」
「あー、うん。まぁ……?」
苦笑いしながら、やんわり答える。
しかし興奮した相手は、さらに語気を強めてそう言うのだった。
「はははは……」
しかし、困ったことになったぞ。
俺はそう思いながら、先ほどの上級生のことを思い出すのだった。
◆
「お前ら、恥ずかしくないのか! 相手は女の子一人だぞ!?」
「ん、なんだい? キミは」
俺が声を上げると、三人いる男子生徒は全員がこっちを見た。
その中でもリーダー格であろう人物は、冷静を装いつつも、どこか棘のある声でそう返してくる。さすがに上級生なだけあり、体格が一回り大きかった。
三人ともなれば、威圧感はそれなりにある。
「俺のことはいいんだよ。それよりも、恥ずかしくないのかよ!」
だが、それに怯む必要はなかった。
今の俺はもう、あのように無様な死を迎えた俺ではない。
真っすぐにリーダー格を睨むと、相手もそれなりの反応を示した。
「へぇ……? 見たところ、キミも貴族のようだけど。私のやっていることに、異を唱える、というのだね?」
目を細め、俺をジッと見る。
そして――。
「いいだろう、面白い。平民かぶれの貴族ごとき、私の出る幕ではない」
「分かりました。ケイネス様」
「お前も運がなかったな! 歯向かっちゃいけない方に、歯向かった!」
一つ頷くと、二人の取り巻きに指示を出した。
手を払っただけなのに、二人の上級生はこちらに敵意をむき出しにする。拳を構えた彼らの周囲には、魔力が漂い始めた。
どうやら、身体強化魔法の類を使ったらしい。
それを察知して、俺もまた拳を構えて――。
「悪いけど、俺は――」
――グッと、足に力を込めて大地を蹴った。
そして、一気に二人の上級生への距離を詰めて顎を打ち抜く!
彼らが倒れ伏すのを確かめて。
俺は一息ついて、こう告げたのだった。
「その程度じゃ、倒せねぇよ」――と。
◆
でも、問題はその後で。
「だけど、本当に大丈夫なんですか……?」
「あー、うん。何とかなるでしょ、うん」
俺は助けた女の子――ベネットと歩きながら、そう答えた。
大丈夫かどうか、問われれば微妙、というところ。
何故なら、俺が喧嘩を売ったのは――。
「あんなチンピラが、第四王子だなんて。思うわけねぇだろ……?」
国王陛下の四男。
ケイネス・ガリア・コペルギウス、だったのだから。
俺もまだ十歳になったばかり。
王族との面識も少なかったので、ちっとも知らなかった。
しかし今さら、なかったことにはできない。だから、俺は一息ついて――。
「――まぁ、なんとかなるだろ」
きわめて、楽観的思考をすることにしたのだった。