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はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~  作者: せんぽー
第3章 裏切りの少女編

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第56話 俺たちは着ぐるみパジャマでサンバする 前編

 リナの事情を把握した俺たちは、今回の騒動の元凶である魔王軍幹部に殴り込みにいこうとした。

 だが、服を着て居なかったため、着替えてから行こうと思ったのだが。


「すまない、服は燃やしてしまった」

「「はぁ!?」」


 リナの返答に、俺とリコリスは揃えて叫ぶ。その声がこだましていった。


「服を燃やしたって……なんで燃やしたんだよ」

「死んだら服はいらないと思ったのと、証拠隠滅に一応燃やしておこうと思って……」


 リナは申し訳なそうに話す。

 確かにリナ側からしたら、俺たちを捕えていたという服を燃やすのは分かる。

 証拠隠滅は合理的だ。

 でもよ……。

 

「おい、このままだと幹部様のところには行けないぞ」


 全裸で幹部のところに乗り込むなんて普通に嫌だ。

 精神的におかしい人と思われる。只得さえ頭のねじが外れている連中におかしいと思われるのは嫌でならない。


「ネル、魔法でどうにかしなさいよ」

「魔法といってもな……地上に上がって、学園に戻って服を取りにいくのじゃダメなのか」

「ああ、無理だ。地上に上がっても意味はないぞ。ここは魔王支配域だからな」

「は?」


 魔王支配域だと?


「つまり……ここはすでに王国の南部だと?」

「ああ、王国の南部よりもっと南だがな」

「お前、俺らをなんてところに連れてきてるんだよ」


 てっきり生徒会室の地下にいると思ったのに。


「学園内でこんなことをするわけないだろう。リスクが大きすぎる」

「……うーん。そんじゃあ、リナが服を買ってくるとかしたらいいんじゃねーか」

「店はあるとは思うが、人間に合う服はそう売ってないだろうな……ネルの変身魔法とかでどうにかなるのではないか?」

 

 杖がない今、魔法制御ができる自信がない。

 リコリスが性転換した時みたいになる可能性もあるしな。

 だが、他に方法も思いつかないので、俺はリコリスに対象に服を着させる変身魔法をかけた。


衣装具現クローズインカルナート


 そう唱えると、リコリスの体は光出す。

 一時して光がおさまると、リコリスは服を着ていた。

 俺の魔法は成功した。

 

「……ぷっ」

「……フッ」

「笑わないでよ!」


 だが、リコリスの衣装を見て、俺とリナは堪えられず笑いをこぼしてしまう。


 俺は慎重に変身魔法を使った。

 いつかの性転換みたいなことにならないよう、制御には気を使い、制服をイメージして魔法展開した。

 

 しかし、実際はリコリスの背中に数枚のデカい赤い羽根がついていた。

 悪魔女は布地の少ない黒と赤の水着を着て、顔はめちゃくちゃ濃くド派手なメイク。

 そう。リコリスはサンバの格好になっていた。


「いいwじゃねーかw、リコリスw似合ってるぞw」

「ああw、とってもw派手でいいと思うぞw」

「2人とも笑いながら言わないで! こんな格好嫌! 絶対に嫌!」


 大層ご不満だったのか、リコリスはぷくっーと頬を膨らませる。


「大事なところは隠せたんだから、別にいいんじゃねーか」

「嫌よ! こんな格好で行ったら、あいつらにバカにされるじゃない! ネル、もう一回! もう一回魔法を使って!」

「しょうがねーな」

 

 しかし、俺が何度魔法を使っても、リコリスの服はサンバの衣装。

 若干デザインが変わるぐらいだった。


「もういい! そこら辺のローブを着るわ!」


 そうして、サンバ姿のリコリスは諦めて、部屋にあったローブを着た。

 悪魔女も服を着たことだし、俺も着替えさせてもらいましょうか。


 俺も自分に変身魔法をかける。

 魔法展開の瞬間、リコリスと同じように制服をイメージしたのだが……。

 

「げ」

「あはは! ネル! とっても似合ってるわよ! 小さなお子様みたいで可愛いわよ! めちゃくちゃ似合ってるわ!」

「うむ、私も可愛いと思う」


 リコリスは爆笑、リナはちょっと羨ましそうに俺を見ていた。


 俺の服はもちろん制服……ではなく、熊の着ぐるみパジャマだった。

 気に食わず、俺はもう一度魔法をかけ直す。

 しかし、服は動物が変わっただけで猫の着ぐるみパジャマ。

 その後何度も魔法を使ったが、何かしらの動物の着ぐるみパジャマになった。


 もこもこで気持ちいし、あったかいから、もう着ぐるみパジャマでいっか。

 結局、俺は耳が大変可愛らしいウサギの着ぐるみパジャマにした。


 武器はというと、幹部をボコボコにするつもりなので、制御は基本的にいらないとは思うが、俺は一応リナが使っていた大杖と剣を借りることにした。

 ちなみに、リコリスはなんか力がみなぎっているらしいので、素手で大丈夫みたいだ。野蛮だ。


 そうして、服と武器を得た俺たちは、リナの案内で別室に移動。

 俺たちが殺されかけた部屋とほぼ同じその部屋には、小さなツボが一つあった。


「本当に、このツボに手を入れるだけでいいのか?」

「ああ、入れた瞬間に移動する」

「移動先に敵がいたりするとかは?」

「ない。魔王城近くの家に移動する」

「おっけー。じゃあ、行くぞ」


 手をツボに入れた瞬間、身体すべてがそこに吸い込まれる。

 気づくと違う部屋にいた。

 窓1つしかないその部屋はとても質素。

 床にツボ一つ置かれているだけで、生活感のなかった。

 

 そんな部屋に、1人の男がいた。


「貴様、誰だ」


 はいぃ――リナさんの嘘つきぃ――。

 敵がいましたよぉ――。


 男は人間と似た姿をしていた。

 だが、緑色の肌、鋭い牙、よくわからない触覚を持っているため、彼が魔族なのは分かった。

 もしや、こいつは案内役か何かか?


 だが、すぐに襲ってくることはなく、俺に問いかけてきた。


「リナの仲間か? セトの仲間か?」

「リナの仲間だ」

「なら、死ね」

「え? なんで?」


 仲間なのに。


「リナとセト以外はこのツボを使ってはいけないことになっている。俺は監視役だ。だから、貴様を殺す」


 おい。なら、なんで『仲間か?』って聞いてきたんだよ。

 油断させるためか?


 その瞬間、魔族の男は瞬く間に俺に詰め寄る。

 そして、胸部に向かって拳を入れてきたが、俺はしゃがみ回避。

 男はすぐに蹴りを入れてきたが、そこは転移魔法で男の背後に移動。


「何っ」

「悪いな」


 俺は手にしていた大杖で男の頭を叩く。

 しかし、男の頭は頑丈で一発では倒れない。

 転移魔法でずっと彼の背後につき、頭を叩く。


 何発か叩くと、男は奇絶、倒れた。

 その後すぐに、ツボからリコリスとリナも来た。

 

「おい、リナ。移動した瞬間、コイツがいたんだが」


 俺は気絶した男を指で指す。

 すると、リナは苦笑いを浮かべた。


「あ、すまん。忘れていた」

「忘れていた? 本当に?」

「ああ……姉さんのことで頭いっぱいで本当に忘れていたんだ……すまん」

 

 自分が疑われていることに気づいたリナは、深々と頭を下げた。

 まぁ、ここでリナが男に襲わせるのも意味が分からないし、嘘はついていなさそうだな。


 そうして、ちょっとハプニングがあったが、俺たちは準備が整うと、外へ出ようとした。

 だが、その前に俺は待ったをかけた。

 

「俺たち、このまま出たらまずいんじゃないか」


 案内役がいない今、人間の俺たちが魔族の街を歩いていると、魔王軍幹部に会う前に、いらない敵と出くわすことになる可能性が高い。


 すると、リナは胸ポケットから、小さな袋を取り出す。

 その中には1つの小さな黒い魔石が入っていた。


「それはなんだ?」

「幹部に貰ったお守りだ。これを身につけていれば、下級魔族は私たち人間を魔族と認識する。これがあるから、街を通っても大丈夫だろう」

 

 ほう……意外と魔王軍幹部様も気が利くやつなんだな。

 

「人間がいるぞ」

 

 だが、家の外を出た瞬間、近くの魔族がこちらに目を向けてきた。

 …………なんか俺だけが見られています?


 だが、フードを深く被っている悪魔女とお守りを持っているリナを気にする様子はない。

 見ている魔族は俺だけを人間と認識しているようだった。


「おい、リナ。秒で人間だと知られたんだが」

「あ、すまん。1つしかないから、私にしか効かないだった」

「……」


 リナってもしかして天然か?

 天然リナさんにジト目を送っていると、金属と地面を擦る音が聞こえてきた。

 魔族が武器を持って、俺の方に近づいてきていた。


 おっとっと……武器を持った物騒な方も出てきていらっしゃってきて……ちょっと待って金属バットを持ってるとか不良ですか?

 王国が戦う相手って不良なの? 嘘だろ?


 これは大変マズいですね……。

 

「こうなったら……ダッシュで走れ!」


 魔王幹部の城までダッシュだ!

 そうして、俺たちはリナに案内してもらいながら、大通りを駆けていく。

 途中、道を塞がれそうになったが、魔法をぶっ放し、道を作った。


 そして、チンピラから逃げながら走っていると、城の入り口へとたどり着いた。


 入り口まで来ると、後ろから追っかけてきていたやつらは、自然といなくなっていた。

 『そっちに逃げても無駄だぞ! 人間! 様にぶっ殺されろー!』とか言ってきたから、俺たちが幹部に殺されると思っているのだろう。

 チンピラ相手するのも面倒だから、そう思ってくれる方がありがたい。


 背後にいた敵がいなくなったことをかくにんすると、俺は城へと体を向けた。


 ここが魔王軍幹部の城か……。


 幹部の城は王都の城ほどではないが、意外と大きかった。

 俺らの国にあるような城ではなく、黒を基調としたデザインの禍々しい城。

 建物いたるところから、嫌な瘴気を放っていた。


「たのもー!」


 リコリスがお城に向かって叫ぶ。

 だが、反応はなかった。


「誰もいないの?」

「そんなわけないだろ」


 こんな城持って誰もいないとか、ありえないだろ。


「じゃあ、ネル。こんな門ぶっ壊しちゃいましょ」

「そうだな」


 開けてもらうのもめんどうくさいだろうし、そもそも開けてもらえない可能性がある。

 さっさと門を壊して入っていくのが正攻法だろう。

 そうして、魔法で門をぶっ壊すと、ぞろぞろと魔族が姿を現した。


「貴様ら、何者じゃー!」


 よしっ。

 アルカイドの勇者としてではなく、他の勇者のお名前を借りることにしよう。


「着ぐるみで来たメラクの勇者です!」


 ごめんね、メラクの勇者さん。

 絶対に幹部を倒すから、お名前を貸してください。

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