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はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~  作者: せんぽー
第3章 裏切りの少女編

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第53話 生贄

「生徒会が生徒会がお前たちを呼んでいるんだ」


 と、生徒会からのご招待を受けた俺とリコリス。


 リコリスは招待されたことが嬉しかったのか、「何々、私のことやっと評価し始めたってわけ! いいわよ、行ってあげる!」とルンルンで返事。


 だが、俺は首を縦には振らなかった。

 生徒会はあまり好きではないし、行ったところでろくな目に合わない。


 しかし、リナがどうしてもというので、仕方なく行くことした。

 どうやら、生徒会の連中が俺とリコリスでお話がしたいらしい。


 他の2人も一緒に行かないか誘ったが、メミは生徒会にはあまり行きたくないと言い、ラクリアも興味がないというので、2人はパス。

 なので、リナ、リコリス、俺の3人で行くことになった。


 ――――――そして、週末。

 俺らはあの生徒会室に向かった。

 今まで足を運ぶことがなかった生徒会室。

 俺は生徒会に邪険に扱われていたこともあり、生徒会室はもちろんその前の廊下も避けるようにしていた。


 だから、ここに来ることになるとは、ちょっと変な気分。 

 ……もし、気に食わないことがあれば、即刻帰らせてもらおう。


 そうして、向かった生徒会室で待っていたのは、会長ではなく眼鏡男。

 白の短髪に、四角フレームの眼鏡をかけるそいつはニコリと微笑んでいた。


「会長じゃないのか」

「すみません。彼は別の用がありまして。僕は副会長を務めさせていただいております、3年2組のセト・オーケソンです」

「ご丁寧にどうも……俺はネル・モナーです」

「リコリスよ!」


 確か……こいつ、いつも会長の後ろにいるやつだよな。

 会長とはよく口論になっていたが、こいつとはあんまり話したことないな。


「それで、副会長さんが俺に何のようですか?」

「いや、特段用というものはないのですが、ちょっと君と話をしてみたいと思いまして。よかったら、お茶はどうでしょう?」

「……まぁ、別に構いませんけど」

「私は別にいいわよー」

「ありがとうございます」


 すると、セトはご丁寧に頭を下げてきた。


 さっきからずっと笑ってばっかりいるが……少し怖いな。

 会長にこびへつらいすぎて、笑うことしかできなくなったのか? 

 …………うーん。副会長も大変だな。


「生徒会室でお茶するのもなんですので、別の部屋に移動しましょうか」

「別の部屋? どこに移動するんです?」


 生徒会室じゃないとなると、サロンとか学園内のカフェとかか?


「隠し部屋です」

「隠し部屋?」

「へぇ、生徒会室にも隠し部屋があるのね。面白いじゃない、生徒会」


 興味を持ったリコリスは、そう言って目を輝かせる。


 アスカの実験室じゃないが、生徒会にも隠し部屋なんてものがあるのか。

 でも、それって結構大切なことじゃないか? 


 ……え、俺たちに教えていいのか?


 と疑問に思いながらも、セト副会長についていき、生徒会にあった暖炉を動かした先にあった階段を下りていく。

 俺たちの後ろには、さっきから黙ったままのリナがついてきていた。


 まさか、こんな隠し部屋があったとは。

 アスカといい、この生徒会といい、隠し部屋作るの好きだな。

 俺らは案内され、階段を下りていくと、地下の部屋にきた。


 その地下の部屋は意外にもお上品なものだった。

 扉は贅沢な金の装飾が入り、入ると教室並みに広い部屋があった。

 下には赤の絨毯、上にはどこから金を出しているんだと言いたくなるような豪華なシャンデリア。

 そして、部屋の中央に置かれた長い机と並ぶ椅子には細かい装飾がされていた。


「どうぞお座りください」

「……どうも」


 促され、俺たちは入り口近くの椅子に座る。

 一方、セト副会長は、俺たちと反対側の椅子に座り、向き合う形になった。


「うんうん、この部屋、とってもいいわね! 私の部屋にしたいわ」


 地下なので当たり前といえば当たり前なのだが、リコリスは窓一つない部屋がいいのか。

 まぁ、上品な感じはいいと思うが、日中まで暗いのは俺は嫌だな。


「リナ、お茶を用意してくれるかい?」

「……かしこまりました」


 指示を受けたリナは一旦退出。だが、一時して戻ってきた。

 彼女が持つトレイの上には、ティーセットとお菓子。

 お菓子はクッキーで、金の装飾がされている白のお皿にキレイに盛り付けられていた。


「どうぞ、召し上がってください」

「ど、ども……ありがとうございます」

「副会長は気が利くわね!」


 生徒会には、散々酷い目に合わせたから、こうして親切にさせられると気持ち悪いな。

 でも、ご厚意を無下にするわけにもいかないので、ここはいただくことにした。


「ネル、このお菓子めちゃくちゃ美味しい」

「え、マジで……ほんとだ」


 俺はクッキーを1つ取り、食べる。

 ほお……バターがふんだんに使われているのか、しっとりとしている。

 口に入れた瞬間、溶けていった。


 おおう……これ、どこで買ったんだ。

 めちゃくちゃ美味しいじゃないか。

 俺らがお目にかかったことがないということは、きっと高級菓子だな。

 俺たちに高級菓子を出してくれるとは。


「お気に召していただけてよかったです」


 と言って、眼鏡副会長は嬉しそうに笑った。


 となると、お茶もお高級なやつだろうな。

 よしっ。お茶もいただくことにしよう。

 カップを手に取り、一旦香りをかぐ。

 そして、一口飲んだ。


 うーん。香りはいい。

 きっといいお茶を使っているんだろう。


 だが、俺はとてもじゃないが、美味しいとは言えなかった。

 香りはよかった。爽やかでとってもよかった。


 でも、味はな――――普通に飲んだら、もっと美味しいんだろうな。


「……なぁ、副会長さん」

「セトで構いませんよ」

「セト先輩……どういうつもりですか」


 強くそう問うが、セト副会長は笑顔を貼り付けたまま。

 ピクリとも動かない。


「なぁ、あんた、何を考えている」

「何を考えている、とは?」


 ……白を切るつもりか。

 すると、隣に座っていたリコリスが袖を引っ張ってきた。


「ねぇ、ネル」

「なんだ、リコリス」

「このお茶おかしい。この紅茶、痛い……痛いわ。ピリピリってものじゃないわ。痛い……」

「まぁ、そうだろうな」

 

 この紅茶には毒が入っている。

 それも致死量的なレベルのもの。

 

 相手がリコリスと俺だからよかった。

 リコリスは毒耐性が化け物並みに高いっぽいし、俺は気づいた瞬間に、状態異常回復魔法をかけたから大丈夫だった。

 きっと普通の人だったら、死んでいただろう。


 すると、セトはフフフと笑みをこぼしていた。


「結構いれたんですけどね……やはり無理でしたか」

「どういうことだ。説明しろ、眼鏡」

「こういうことですよ」


 その瞬間、俺とリコリスは警戒して立ち上がり、杖を構える。

 机の反対側にいるセト副会長も立ち上がって、杖を構えていた。

 

 だが、彼が手にしていたのは普通の杖とは違い、大杖。

 アスカの身長ぐらいある大きな杖の先端には黒い魔石がついてあった。


 一体、何をするつもりだ。


「ディヴィトリ――」


 副会長が何をしてくるのか、呪文からは分からなかった。

 俺は一応対策に解除魔法を唱えようとした。

 しかし、詠唱を始めた途端、聞こえてきたのはキンッという刃の音。


「は?」

 

 解除魔法は最後まで唱えれなかった。

 杖を持ってはいた。

 だけど、その杖を持っていた腕が俺にはなかった。

 下を見ると、俺の腕は地面に落ちていた。


 一瞬で両腕を切られた。


「っは――」


 即座に、回復魔法を無詠唱で展開する。

 しかし、腕は元に戻らない。

 切られた腕から大量の血が流れていく。


「ったい……いたい……」


 あまりの痛さに俺は跪く。

 回復魔法が使えないのなら、止血しないとまずい。

 本当に死んでしまう。

 

 氷魔法なりなんなり使って止血しようとしていると、突然影が出現する。

 見上げると、目の前に立っていたのは水色髪の少女。

 彼女の手には、禍々しい黒の剣があり、血をぽたぽたと垂らしていた。


 随分と嫌な瘴気を放つ剣だ。

 まるで魔王軍が魔物と似ている。

 なぜそんなものをリナが持っているんだよ……。

 

「っはぁ、はぁ……これはどういうことだ、リナ」

「すまない、ネル。この前、魔法を解除されたからな。このような形で対応した」

「対応したって……」


 だからって、なんでリナが腕を切ったんだよ。

 訳が分からず呆然としていると、「あっはっはっは」と嫌な笑い声が聞こえてきた。


「レベル9000越えあるとはいえ、やはり腕がないと、魔法展開は厳しいようですね」


 高笑いをする眼鏡男はリナの後ろでそう言ってきた。


「リコリ――」

 

 悪魔女の方を見る。

 だが、リコリスはぱたりと倒れ、眠っていた。


 …………リコリスは何の魔法か分からないが、やられたか。

 息はあるっぽいから、死んではなさそうだ。


 今の俺は、本来魔力集中をさせる腕がないせいで、魔法制御できない可能性が高い。


 でも、もうこの際、どうなってもいい。

 ここから逃げないと、本当にまずい。

 俺は死ぬし、リコリスは何をされるか分からない。


 俺は腕がないながらも、魔法を使おうとした。

 でも、使えなかった。

 魔力を感じなかった。体の魔力がぱたりと消えたようだった。


 なぜ魔法が使えないんだ……。


 出血がおさまらないせいか、徐々に力が入らなくなっていく。

 そうして、俺は地面に倒れた。


「な……待て、リナ。これはどういう……」


 リナは答えることなく、離れていく。


 なんで、リナは俺の両腕を切った?

 なんで、リナがあんな魔剣を持っている?

 副会長は何の魔法を使ったんだ?


 疑問があふれ出してくる。

 だが、頭は動かなくなっていく。


 ……こんなことになるなんて……なんでこんなことになるんだよ。

 ……こんなことになるのなら、双子先輩から貰った鏡、持っておけばよかった。

 ……今日に限って、寮室においてる。バカだ、俺。


 ……ああ、俺、死ぬのか? 死にそうだな……。

 ……はぁ、これだから生徒会は嫌いなんだ……。


 そうして、俺は意識を失った。




 ★★★★★★★★

 

 


 目を覚ますと、目の前には見知らぬ天井、見知らぬ部屋。

 そして、地面には良く分からない魔法陣、隣で寝る裸の悪魔女。


 …………なんで、こんなことになっているんだ。


 副会長に呼び出されて、お茶をしていたら、毒を飲まされて。

 毒をきかないことが分かった眼鏡やろうは何か魔法を使って来て、俺がそれに対応しようとしたら、リナに両腕が切られて、奇絶して。


 目が覚めたら覚めたで、よくわからない場所で裸にさせられている。


 …………おい、ふざけんな。

 どういうことなんだ。

 誰か説明しろ。


 だいたいなんで俺とリコリスは裸にさせられているんだ……。


 リコリスとは距離があり、かつ彼女が背を向けているため、大事なところは残念ながら見えていない。

 スースーと吐息が聞こえていた。リコリスは眠っているようだ。


 幸い、俺の腕は元通りになっていた。

 しかし、体は鉛のように重く動かせない。

 寝返りするのがようやくってところだ。


 にしても、ここはどこだ?


 さっきいた隠し部屋は違う部屋。

 石畳で地面はとても冷たく、描かれた魔法陣が赤い光を放っている。

 周囲には赤の透明なバリアが張られていた。

 

 意味不明なバリアもあるし、すぐに逃げることはできなさそう……。


 いつもの光魔法のバリアなら、解除できる。

 が、俺をかこっている赤のバリアは知らない魔法を使っているようだった。

 

 知らない魔法でバリア……まさか古代魔法とか使っているのか?

 古代魔法って本当に限られた人にしか使えないはず。


 これをリナたち(あいつら)がやったのか?


 何もできずじっとしていると、遠くから2人の声が聞こえてきた。

 この声は……リナとあの眼鏡やろうだな。


 あたりを見渡しても、2人の姿はないため、別室で話しているようだ。

 俺はそっと耳をすます。


「副会長、これであの方は約束通り姉を――」

「ああ、大丈夫だよ。あの方は約束守る人だからね、きっと解放してくれるさ」


 姉? あの方?

 なんの話をしているんだ……。


「でも、本当によかったね」

「はい」

「ちょうどいい生贄がいてよかった……いなかったら、君のお姉さんは助からなかっただろうから」


 ――――――生贄だと?

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