第43話 アルカイドの勇者
2年ぶりの更新です。ゆっくり更新していこうかなと思います。よろしくお願いいたします。
レンの1件があって、メミと仲直りをした俺ネル・モナー。
あれから、メミと一緒に過ごす時間がグッと増えた。
昼休みは一緒に食べたり、休日にはお茶をしたり、ショッピングに行ったり。
メミはとても楽しそうで、リコリスには「あんたたち、やっぱり兄妹ね」と言われた。
本当に仲直りができてよかったと思う。
そんなメミと俺は違うクラスだが、一緒に学園に通うようになった。
そして、今日も彼女と約束をしていた。
でも、ちょっと遅れてしまったな。
メミはもう寮前で待っているかもな……。
部屋を出ると、廊下にはいつもより人がいて、全員が俺を見ているような気がした。
変な感じだな……。
メミを待たせているため、急いで寮を出ると、男子寮の前には多くの人が集まっていた。
一体どうしたんだ?
もしや誰かが公開告白でもしているのか?
その集団の端には、いたのはアゼリアの髪飾りをした紺色髪の少女。
彼女は俺の姿が見つけると、ぱぁと顔を明るくさせる。
そして、紺色髪を揺らしながら、カバン片手にこっちに走ってきた。
「お兄様! おはようございます!」
「おはよう、メミ」
メミと挨拶を交わした瞬間、バッと周囲の視線が俺に集まった。
え? 何事?
なんで俺、注目浴びてるんだ?
何かしたか?
メミの一件は1ヶ月ほど前の話だ。
学園のほとんどが俺たちが仲直りしていることは知っているはず。
今更注目浴びるようなことでもないのだが。
すると、集団の中にいた茶髪ボブの女の子が俺の所に駆け寄ってきた。
メミが立ちふさがるように俺の前に立ち、
「お兄様に何か用ですか?」
と強い口調で言った。
メミ、警戒してるな…………。
俺には過去にしたことがあるためいい噂はなく、学生の中には俺に直接
そのたびにメミが怒って、相手をボコボコにしているんだけども。
だが、近づいてきた女の子は武器などはもちろん持ってはいない。悪意なさそうな感じがした。
「メミ、大丈夫だぞ」
「すみません……お兄様に害をなす輩かと思いまして……」
メミはぺこりと頭を下げると、俺の隣に下がった。
一方、女の子は目を輝かせて、さらに近づいてくる。
「あのネル・モナーさん。あのよければ……サインください!」
そう言って、女の子は俺に一枚の色紙とサインペンを差し出した。
え? サインだと……?
「サインって、俺のがほしいの?」
「はい! ネル・モナーさんのが欲しいです!」
元気よく答える女の子。
その子の眼差しは嘘偽りが一切ないように思えた。
彼女は本気で俺のサインが欲しいのか……。
別に有名人とかじゃないけど、今までろくな友人がいなかった俺からすれば嬉しいこと。
「俺のサインでいいのなら……」
と色紙を受け取り、書こうとした瞬間。
「ネル様! 私にも!」
「俺にもください!」
「ネル様ぁ~! 愛してますわ! サインくださいませ~!」
と一斉に人が詰め寄ってきた。
その全員が色紙やTシャツとかを片手に、もう一方の手にサインペンを持っていた。
本当になんだなんだ?
これ全員、俺のサインが欲しいのか?
うそだろ? いつの間に俺にファンが!?
サインを書こうとしたが、もみくちゃにされて、それどころではなく。
「お兄様、こちらへ!」
メミに手首を掴まれ、人込みを抜け出す。
そして、人目の少ない場所に移動した。
「あれは何事なんだ? 急にサインなんか求めらたけど……俺、何かした?」
「さぁ……私にも分かりません……ですが、このままだと遅刻してしまいます」
その瞬間、「ネル様~!」という複数の声が響く。
1人ではなく、多くの人間が俺を探してるようだった。
「気配を消していくか」
「そうしましょう」
隠密系魔法を使い、俺とメミは静かに教室に向かう。
何人かの生徒とすれ違ったが、幸い見つからず、そのまま教室に向かえると思った。
だが。
「へい! いらっしゃっい! いらっしゃっい!」
校舎に向かう途中、とっても聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ブロマイドは1枚1000円! こっちのタペストリーは7000円! さあさあ買った買った!」
声がした方を見ると、赤メッシュが入った黒髪ロングの女がいた。
赤い法被を着た彼女は道にブルーシートを広げて、その上で写真やらTシャツやらを売っている。
そして、その商品すべてに俺の写真が載っていた。
「あとこの場限定品! ネルの寝顔写真を販売しまーす!」
「ちょっと待ったぁ――!!」
俺はツッコミを抑えきれず、ダッシュで彼女の持っていた写真を奪い取る。
赤い法被姿の悪魔女リコリス。
彼女は俺から写真を奪おうとするが、さっさっと避けた。
「ネル! 何するの! 返して!」
「『返して』じゃない! お前は何勝手に俺のグッズを売ってるんだよ!」
昨日まで『暇だし、リナとダンジョンに行こうかなー』とか言っていたやつが、いつの間にこんなグッズ作って、販売してんだよ?
すると、リコリスは肩をすくめた。
「いやぁ~、あんた有名人になったじゃない? 今のうちにグッズ売り始めて、儲けようと思って……あ、このTシャツにサインくれる? 価値が上がると思うから」
彼女はサインペンとともに、Tシャツを手渡してきた。
……この悪魔女、許可なしにちゃっかり俺で稼ごうとしてるぞ。
「兄様? 早くいかないとまた追っ手が来ます……って、リコリスさん」
「おはよー、メミ。どう? メミも何か1つ買っていかない? これとかどう? ネルの等身大抱き枕。結構売れてるわよ」
「1つと言わず、全部ください。払いますんで」
「おい、メミ」
「……やっぱり止めておきます」
メミはリコリスの所に寄って、「リコリスさん、あとでそれくださいますか。2倍のお値段で買いますので」って話してるのが聞こえたが……今のは聞かなかったことにしよう……。
「ていうか、俺が有名人って何のことだ?」
そう問うと、リコリスは目をぱちぱちさせ、きょとんとしていた。
「え? あんた、知らないの?」
「ああ、何も知らない。寮出たら、急にサインを求められた」
「へぇ~そうなの。サインを求められるなんて、人気者じゃない。でも、あんたが知らないなんて意外。メミから聞いてそうだと思ったのに」
リコリスはメミの方を見る。しかし、メミは横に首を振った。
「私は何も知りません。やはり新聞に兄様のことが載せられたんですか?」
「まぁ、見れば分かるわ。はい」
そうして、リコリスが渡してきた新聞。
片手で持てるサイズに小さく折りたたまれたそれは、一見普通のものに見えた。
俺は恐る恐る新聞を開く。
嘘だろ…………。
その新聞の表紙には『ゼルコバ学園にフォーセブン越えレベルの生徒現る! アルカイドの勇者か!?』という文字とともに、俺の写真が大きく載せられていた。




