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はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~  作者: せんぽー
第2章 兄妹編

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第19話 無許可の実験室

 1年前は小等部にいた、アスカ。

 彼女は飛び級制度を利用し、高等部まで進級して俺の同級生になっていた。

 そして、その彼女の勝負に勝った俺は、約束通り彼女の手伝いをしている。


「ああああああ゛ぁぁぁぁ————」


 何もない、ただただ広い部屋に座る俺は、全力で叫んでいた。いや、痛みに耐えていた。

 正面には、少し離れた位置に立つアスカ。全身防護服の彼女は、銃を手にしている。


「そんな大げさに叫ばなくても」

 

 大げさになんか叫んでません。痛いです。

 魔王はどれほど強いか知らないが、めちゃくちゃ痛いです。全身が痺れるように痛い。


 暴れるものなら、走り回りたいところだが、腕と足は椅子についていた金属ベルトで縛られていた。アスカは、もしも俺が逃げだすかもと見込んで、固定装置をつけていたようだ。


 少し上を見上げると、ガラスの窓が見え、その向こうの部屋にいる、黒髪赤メッシュの女と赤髪の女がニヤニヤ顔でこちらを見ている。

 赤髪の女に至っては、「FOOOOOOOOO!」と叫んでいた。


 ………アイツら、人事だからって楽しみやがって。

 クソ、来させるんじゃなかった。

 なぜこんなことになったのか。


 ————30分前。

 

「ねぇ、ネル。今日はどうするの?」

 

 放課後になり、俺がさっさと教科書を片付けていると、リコリスがそう問うてきた。

 机横に立つ彼女は、俺の机に両手を置き、迫ってくる。

 

「今日か? 今日は暇じゃないぞ。手伝いを頼まれているからな」

「ああー、昨日のアスカさんの? それなら、私も行く。一度研究室に行ってみたかったし」

「………お前が付いてくると何かしでかしそうな予感がするんだが」

「私もついて行ってもいいかーい?」

 

 陽気な声で言ってきたのは、前の席に座る赤髪の変人、ラクリア。彼女は興味深々に目を輝かせていた。

 

「お前も?」

「そうだYO 問題は起こさないYO」

 

 確かにラクリアは第一印象が変人なだけであって、これといって問題は起こしていない。圧倒的問題児なのはリコリスだ。

 俺が実験を手伝っている間、リコリス(コイツ)お守りする人間が必要………。

 

「いいぞ。リコリスを見張っていてくれ。コイツ、問題児だから」

「そうだね。わかったYO」

「え? ラクリア、さりげなく私を問題児扱いした? まさかよね?」

 

 そうして、俺たちは、教室前で待っていた別のクラスのアスカと合流し、彼女の研究室に向かった。

 アスカに2人が研究室に入っていいかと聞くと、すぐに了承してくれた。

 

「ここがお前の実験室?」

「そうよ」

 

 授業を終えた俺は、アスカの実験の手伝いをするため、1階にある彼女の実験室に来ていた。


 アスカが研究所に所属し、また飛び級制度を利用できるくらいの優秀な生徒であることから、学園から特別に研究室を用意されている。

 

「わぁー。ここが研究室なのね」

「やっぱ、たくさん物が置いてありますYO」

 

 部屋に入るなり、声を上げる2人。

 リコリスは表世界のことを知りたがってるから、付いてくると少し予測はしていた。


 コイツが行きたいと言ってきたのは、予想外だったが。

 ラクリアの方も、試作品らしき、木箱に入れられた魔道具を熱心に見つめている。

 

「それで実験ってどんな実験をするんだ?」

「機能の確認。実験は下でするから、こっち来て」

「下?」

 

 俺は、そう言ってくるアスカの方に近づく。

 アスカは机に置いてあったリモコンを取り、ボタンを押した。

 すると、床がウィーンと音を鳴らして、動きだし、目の前に階段が現れた。


 これって、多分地下に繋がる階段………だよな。この校舎に地下なんて合ったか?

 俺が首を傾げていると、アスカは口元に人差し指を置いて、「しっー」と言うと、

 

「この部屋のことは、内緒ね」

「許可なしに作っているのかよ」

 

 にひっと笑うアスカに俺は溜息をつくしかなかった。


 そうして、俺たちは無許可地下に繋がるであろう階段を下りていくと、現れたのは、制御室のような部屋。


 正面にはガラスがあり、その向こうには立方体の白い部屋があった。白い部屋の床は、制御室よりも低い位置にある。

 かなり下に掘ったな。魔法か、アスカお得意の自家製魔道具で掘ったのだろうけどさ。

 

「ここがあたし専用の実験室よ」

「………こんなデカい部屋を作ったのかよ。バレたらどうするつもりだ?」


「その時はその時に考える。まぁ、あたしが作ったものだから、大抵は許してくれるでしょうけど。さぁ、時間がそんなにあるわけではないし、さっさと始めるわよ。ネルは、先にあそこの階段から下りて、向こうの部屋に行って。あたしは準備してから向かうから」

「あ、ああ、分かった」


 実験内容を全然分かってないので、俺はアスカに言われるままに、部屋隅にあった螺旋階段を降りる。


 意外にも長かった階段を降りていくと、またドアが現れた。

 しかし、目の前にあるドアは、教室にあるような薄いものではなく、とても分厚く頑丈そうなものだった。


 ………これから、俺は一体何を手伝わされるんだ?

 不安になりながらも、扉を開ける。

 入って、部屋の中央にあったのは、ポツンと置かれた1つの椅子。


 でも、その椅子も弱っちい木製の椅子ではなく、金属で作られたものだった。

 俺が椅子の前で突っ立ていると、

 

『アスカからの伝言、椅子に座っていてー、だってー』

「はぁ?」

 

 上を見上げると、ガラス越しのリコリスがマイクに向かって話していた。

 

『だから、そこにある椅子に座って大人しく待っててだって!』

「………」

 

 本当に何をされるんだろう。

 徐々に不安が強くなるものの、手伝いをすると決めたので、俺はリコリスの言う通りに椅子に座った。

 

 ガシャーン。

 

「え?」

 

 部屋に響いた金属音。

 下を見ると、腕にも金属ベルト、足にも金属ベルト。俺の体は椅子にがっちり固定された。

 

 魔法制御ゴミカスの場合が多い俺にとって、これって完全に動きを封じられたよな? 

 

「え? 本当に今から何するの?」

「だから、機能の確認って言ったじゃない」


 部屋に入ってきたのは、防護服を着た小さな人。


 その人は、頑丈そうなヘルメットに、分厚い手袋、足には堅そうなブーツ、そして、何に対しても守ってくれそうな防護服を身にまとっていた。

 顔は一切見えず、小型の銃を持っているため、危険人物にしか見えなかった。

 

「………その声は、アスカか?」

「そうよ。他に誰がいるっていうのよ」

「いや、姿を見るだけだと、誰だか判断つかないんだよ」


「そ。大丈夫、知らない人じゃないわ。正真正銘あたしよ」

「あたしと言われましてもね」

「どうでもいいから、ちゃっちゃと始めるわよ」


 完全防御のアスカは、俺の前に立つと、銃口を真っすぐこちらに向けてきた。

 

「えっ、ちょっと待てよ。本当に何をするんだよ」

「だから、さっきから言っているじゃない。機能の確認よ。コイツのね」

 

 パシパシ銃を叩く、アスカ。

 おい、待てよ。

 まさか、その銃を俺に向かって撃つんじゃないんだろうな?

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