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私が転生したと気づいたのは1歳か2歳くらいだったと思う。
前世の記憶がぼんやりとだがあったからだ。それから年数を重ね言葉を覚える毎に、徐々にだが前世の記憶も呼び戻されていた。
私は今年6歳になった。前世によれば来年には小学生になるはず。だが、今まで私は勉強と言うものは全くやっていない。普通であれば簡単な読み書き程度は幼稚園に通わせない親でも教えると思っていたのだが、私の今の母親は全く私には教えようとはしなかった。しかし、けっして育児放棄をしているというわけではない。愛情はたっぷりかけて貰っている。
そもそもこの家には本やメモ帳、ペンといった物が見当たらない。どこかにしまい込んでいるのかも知れないが、目につくところにはないのだ。一般家庭には何かしらの本があるものと思っていたが、それも見当たらない。
そこで私は、この世界は異世界、もしくは文明が衰退した世界なのだと思った。
そう思えば辻褄が合う。
だが、答えを知りたくてもどう手懸かりを掴めば良いのか見当がつかなかった。
なぜならば、私は母と、この家にたまに来る家政婦らしき人物と、定期的に物資、日用品や食料を届けてくれるおじいちゃんと、極稀に来るお父様しか会ったことが無いからだ。
聞こうとは何度もしたが、どう切り出して良いのかがわからず、また、私が前世の記憶があることを言って良いのか判断が出来ずにずるずると憶測だけで生きていた。
この家は深い森の中にあり、囲いの外に出ると獣がいるから子供では危険と言われていて出たことがない。母親も家から離れることはなく、日中は庭で作るちょっとした野菜やハーブの手入れをしたり、刺繍や編み物をしたりしている。
娯楽が一切ないため、暇にはならないのだろうかと常日頃疑問に思っていた。
私は、家の裏手にある川でぼーっと魚釣りをしたり、母の編み物を手伝ったり、あとは寝ている。時計がないから正確にはわからないが、だいたいトータルで15時間は確実に寝ている気がする。
寝る子は育つと言うし、やることもないのでだいたいは寝ている。あとは考察をするくらいだ。
私の母親はとても綺麗な人だ。目鼻立ちははっきりしているものの、濃すぎず、どちらかといえば、欧米とアジアのハーフ顔だ。髪も瞳の色も明るい栗色で色素が薄い。
私は、この家に鏡が無いため正確には言えないが、ストレートの髪は暗い茶色で瞳の色も暗い茶色だろう。お父様が黒髪黒目なので、二人の色が合わさったのだろうと予測している。
そして、お母様に似て美人に育ちたい。お父様もそこそこイケメンだし、それなりに整った顔になることは予想できる。いや、なって欲しい。よろしくお願いいたします。
でも髪の毛はお母様のようなフワフワロングになりたかった。前世も今世もストレートなんてつまらなすぎる。世の中願った通りには行かないものだ。
とりあえず、たまに来る家政婦さんも、行商のおじちゃんも私を可愛いと言ってくれるので、お世辞じゃないことを祈っている。
そんなある日、私の生活は一変した。




