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龍の子供  作者: 桃園沙里
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魔物の森

 ガネス村を出発して、緩やかな丘陵地帯を進んでいくと、前方に森が見えた。

「森を行くしかないみたいだね」

 シードが地図を見て言った。

 森の中を注意深く馬で進んでいく四人に、次々と魔物が襲いかかってきた。

 ヨウは言った。

「妙に魔物多くない?」

「さっきから歩いてる時間より、戦ってる時間のが多い気するんだけど」とシードも言う。

「魔物の森に迷い込んだのかしら」

 リュウナの言葉にエリヤが思案した。

「魔物の森?聞いたことないな」

「思いつきで言ってみただけ」

「……」

「でも、何かあるぜ、この森には」とヨウも言う。

 四人が木々の間を更に進んでいくと、突然視界が開けた。木々の途絶えたその森の中に大きな穴が空いている。

「何これ」

 四人が立ちつくし、眺めていると、穴の中から背中に羽の生えた魔物が出てきた。

「やばっ」

 四人は木の陰に隠れた。様子を窺っていると、魔物は羽ばたき空へ飛んでいった。唖然として見ていると、再び穴から別の魔物が出てきて、空へ飛んでいく。

「魔界の入り口か?」とエリヤは呟いた。

「じゃ、この穴をふさいじゃえば」と言うのは楽天家のシード。

「こんなでかい穴……塞いでもまたどっかに穴が出来るんじゃないのか?なあ」とヨウ。

「たぶんね」エリヤも言う。

「これじゃ、いくら俺達が退治しても、魔物がいなくならないわけだよ」

 シードはため息をついた。

 そう話している間にも、次々と魔物が出てきては、どこかへ消えていった。やがて、穴から出てきた一匹の魔物が四人の方に近付いてくることにヨウは気付いた。

「やばいぜ」

「とりあえず逃げる」

 エリヤが馬の向きを変えると、既に背後は魔物に囲まれている。

「どうする?」

 エリヤは不敵な微笑みを浮かべ、ヨウを見た。

「俺が魔物を引きつけるから、その隙に行けよ」

 言うが否や、ヨウは、魔物の列に突進していった。魔物たちはヨウに気を取られた。その隙に、エリヤ、シード、リュウナは、魔物の包囲網を脱出した。三人は木々の間を駆け抜け、ひたすら森の出口を目指して馬を走らせた。

 やがて、森を抜け、魔物が追ってこないことを確認すると、見晴らしのいい草原でエリヤは馬を止めた。続くシードも馬を止めた。

「ヨウ、逃げおおせるかな」

「ヨウなら大丈夫さ」とエリヤは言った。

 三人は黙ったまま森を見つめていた。

「遅いね」

 リュウナは心配そうに言った。

「俺、ちょっと見てこようか」

 シードの言葉に、エリヤは答えなかった。

 再びシードが言う。

「やっぱ、俺、行って来るわ」

「私も行こうか」とリュウナも馬の手綱を握った。

 シードが馬を走らせようとしたその時、森の中からヨウが現れた。後ろに二、三匹、魔物が追ってきている。

「よしっ」

 シードは馬に鞭を入れ、ヨウを追ってくる魔物を迎え撃った。ヨウも一緒に魔物と闘い、魔物を倒すと、二人は、ゆっくりリュウナとエリヤの元へ来た。

「遅くなって悪い。思ったよりしつこくてさ」

 ヨウは息を切らせて言った。

「ヨウなら大丈夫だと思ってた」

 エリヤは余裕の微笑みで返した。

「それは光栄だね」

「ここは危険だわ。早く離れましょう」

 リュウナは、三人をせかした。

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