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龍の子供  作者: 桃園沙里
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十年後

 世界が聖なる光に包まれてから十年。人間界から魔物が消え、平和が戻ったのもつかの間、国は分裂し、人間達は互いに争い合うようになっていった。

 兵士達が戦っている戦場で、馬に乗って戦うヨウの姿が見える。

 ヨウは独りぼっちの心の空白を埋めようと、再び戦いの中に身を置いた。しかし、ヨウに心の平安は訪れず、月日は経っていった。ヨウは戦いに疲れていた。この仕事が終わったら、山奥にでも引きこもってのんびり暮らそうと思っていた。


 ヨウは敵を追いかけている内に、ひとり林の中ではぐれてしまった。

「しまった、深追いしすぎた」

 そこへ物陰から敵が現れ、ヨウは馬から落とされる。敵数人に取り囲まれ、絶体絶命。

「俺ももうこれまでか」

 座り込んだヨウは、観念して目を閉じた。今まで死んだ者たちの顔が走馬燈のように浮かぶ。子供の頃に魔物に殺された両親、兄弟、友人達。家族のようにいつも一緒にいたシード。一緒に平和の為に戦ったエリヤ。そしてリュウナ。

「これでやっとあいつ等に会えるな」

 そう思った時、ヨウの瞼の裏に、眩しい光を感じた。目を開けると、辺りは七色の光に包まれ、敵の兵士たちは凍り付いたように動かない。

 頭上からリュウナの声がした。

「単独行動を取らない。戦いの時の鉄則でしょ」

 ヨウが顔を上げると、リュウナが十年前と同じ姿で立っている。

「リュウナ……幻か」

 リュウナはにっこり微笑んだ。

「やーね、ちゃんと生きてるわよ。セグラントが龍の毛から私を再生し、育ててくれたの。捜したのよ、ヨウ。三年前にセグラントが死んでから、ずっと」

 それはセグラントの遺言でもあった。セグラントはいまわの際にリュウナの手を握りしめて言ったのだ。

「龍の血筋を絶やしてはなりませぬ、姫様。後々の世のためにも。龍の血筋を残されよ。人間界で最も勇敢な男の子供を」

 リュウナは跪いて、ヨウの顔を撫でた。

「ずっと捜してたわ」

「リュウナ」

 ヨウはリュウナを抱きしめた。

「もう俺を一人にしないでくれ」

「永遠に、離れないわ」

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