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第8話 第2科警研/凶報と救援

 遠くの休憩ブースのそばの館内スピーカーでは、警視庁から直通回線で送られてくる緊急通信情報が常時聞けるようになっている。第2科警研も警察組織の一部であり、警視庁本庁からの協力要請が来る事もあるためだ。その場で他の技術員が何かただならぬ事を耳にしたらしい。大声で呉川たちを呼び寄せている。

 呉川たちは駆け足で、彼らの所に向かう。そこで、呉川は有明の事件を耳にした。


『本日、1150時、有明1000mビルにおいて爆破事件発生。同ビル内の上層部第4ブロックは同爆破事件により脱出困難。現在、同ビルにおいて、国際未来世界構想サミットが開催準備中であるため、各国の来賓が内部にとじ込められている可能性あり』


「なに?」


 呉川は、状況のヤバさに気づいて慌てたようにつぶやいた。


『なお、同ビルにおいて勤務中の特攻装警のうち4号ディアリオ、6号フィールも同ビル内にて連絡不能。現在――』


 呉川も大久保も、他の皆も動揺してその顔の表情が堅くなっている。唯一、市野は憮然とした表情で一人気を吐いていた。彼は僅かに野太い声で叫んだ。


「なんやて? ディアリオが?!」



 @     @     @



 一方――

 布平女史たちは、コミニュケーションルームの一角でその緊急通信情報を耳にしていた。ミントグリーンの丸テーブルはすでに空であった。ファッション雑誌や映像機器は手早く片づけられていた。彼女たちの足音は作業ドックのある棟の3階を進んでいる。そこに彼女たち布平班の作業ルームが有るのだ。


――E20研究ルーム――


 その扉を慌ただしく開けると、5人は足早やにルーム内を掛け回っている。


――メンテナンス用の予備パーツ――

――工具や作業器具、携帯情報端末――

――補修作業用の予備器材――

――1.2mサイズのジュラルミンケース――


 彼女たちは一迅の突風の様に研究ルーム内をあるきまわると、すでに示し合せたかの様に何の間違いも無く割り振られた荷物を持っていた。


「いくわよ」


 布平は大声でそれだけ叫んだ。彼女のヒールの甲高い音がプラスティックの床に残響を残している。他の者は言葉も無く頷く。彼女たちが研究ルームを出たその時である。


「志乃ぶ君! どこに居る!」


 呉川が布平たちの研究ルームに駆けてきた。しきりに布平を呼んでいる。布平たちは呉川の声に気付き彼の方を振り向いた。


「おぉ、志乃ぶ君。ここに居たか」

「呉川主幹!」


 呉川は目の前の志乃ぶたちの姿に感心と呆れの入り交じったため息をつ

く。


「さすがに速いな、君たちにはこれから有明へ向かってもらおうと思っていたのだが」


 呉川の言葉に志乃ぶは答える。


「ご心配なく。布平班5名、すでにスタンバイOKです」

「そうか」


 呉川はうなづき言葉を続ける。


「ならば、話は早いな。すみやかに現場へ向かってくれ。我々はこちらにてバックアップや本庁との連携に入る。それとだ」

「まだなにか?」

「所長からの連絡だが、現場において新人の特攻装警が行方不明になったそうだ。そちらの追跡もしなければならん。大変だが、力を貸してくれ」

「新人って――大久保さんたちが手がけていた第7号機ですか?」

「そうだ。試験配備中でね。所轄で研修をしていて有明に先輩特攻装警の仕事ぶりを見学させる――と言う手はずだったんだが。トラブルになったらしい。手間を掛けるが、行ってくれるな?」


 布平は他の4人に告げる。


「もちろんです。みんな、いくわよ!」

「きたまえ! 屋上のヘリはいつでも行けるぞ!」


 呉川が呼ぶ。その言葉に布平たちは走り出していた。

 


 @     @     @



 第2科警研がフル回転を始める。皆が特攻装警の身に起こるであろう全ての事態を頭に置きN.C.E.の内部を慌ただしく駆け回っている。

 そして、第2科警研屋上には、彼らを有明に送るべくオフィシャルの大形高速ヘリ――ティルトローターのVTOLヘリがすでにウォーミングアップを終え待機していた。志乃ぶたちはそれに乗り、彼女たちは有明1000mビルの現場へと向かう。一路、特攻装警たちの居る有明へと――


 やがて、布平たちが高速ヘリで有明へと向かった後に、警察の緊急回線は新たな情報をそのスピーカーから流し始める。


『追加情報、爆破事件の有った有明1000mビルにおいて、特攻装警の第7号機が行方不明。現場の者は見付け次第、警備本部に連絡する事。なお、第七号機の特徴は次の通り……』


 緊急回線のスピーカーから、特攻装警第7号機のデータが流れ始めた。

 すなわち、グラウザーの事である。


――――――――――――――――――――

 個体種別:警察活動用アンドロイド警官「特攻装警」

 個体名称:特攻装警第7号機「グラウザー」

 所属部署:品川方面涙路署捜査1課所属

 外見  :外見は、通常の生身の人間と特に著しい差異はない

 髪の色は濃いめの亜麻色である

      他は人間用の衣類を着用

 所有銃 :STI 2011 パーフェクト10

 活動任務:刑事活動全般、及び、暴徒鎮圧

 注意点 :なお、グラウザーは現在、所轄において研修中である。また、作製の最終段階であり学習活動の途中である。そのためどの様な行動をとっているかは予測が困難である。それらの点を十分留意すること。


 以上、有明国際未来世界構想サミット警備本部


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