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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/死闘編
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Part 40 死闘・武人タウゼント/牽制攻撃

「なにっ?!」


 思わず驚きの叫びを漏らしたのはタウゼントの方であった。

 軽量なその身故の高速の体捌き、残像すら許さぬ素早さでの死角への回り込みであったが、それを見切り、あまつさえ相手はその巨躯に似合わぬ常識はずれの俊敏さで、重戦車の動力砲塔のように180度反転し旋回してみせたのである。

 

「しまった! リニア移動効果装――」


 敵が装備していた機能の正体を喝破するよりも早く、タウゼントのその小さなボディを襲ったのは、あの人命を無残に潰し取る血まみれの電磁ハンマーだった。打撃のインパクトはタウゼントの右手側から襲ってきた。回避する隙もないままに鈍銀色のボディーをハンマーは打ち据え、砲弾で撃ち抜いたかのようなインパクトでタウゼントの小柄な体躯を吹き飛ばしたのである。

 

 そしてタウゼントのその滑稽劇の演者の如きボディは緩やかな放物線を描いて飛んでいく。抵抗も軌道修正もなかったのはその強烈なるインパクト故に意識がホワイトアウトしたため。当然、受け身も着地も取れるはずがなく、飽きられて放り投げられたアンティークトイのように地面の上を二~三転してうつ伏せに倒れ伏したのである。

 

「おい――」


 一人の男が問いかける。

 

「おい! 貴様、大丈夫か?!」

 

 その声の主は声をかけてくると同時に右手でタウゼントの体躯をつかむと揺すって確かめようとする。

 

「貴様! 生きているなら返答しろ! 聴こえないのか!」


 それはいささか乱暴で無作法ではあったが、元から礼儀やマナーなど気取っていられない世界で生きていたが故の問いかけだった。声の主は静かなる男たちの副長ボリス、その魂の髄にまで染み付いた軍属として身のこなし、そして生き様、それゆえに彼のタウゼントへの問いかけは戦場で敵弾に倒れた友軍の兵士への呼びかけ行為を彷彿とさせるものだったのである。

 

〔全軍へ、PP90以外の携帯武器の使用を許可する! 敵へ牽制! 足止めだ!〕

да(ダー)


 体内無線通信経由でボリスの指示を受け、静かなる男の隊員たちはジャケットの後ろ側に秘匿していた銃器を次々に取り出す。

 単発擲弾発射器:USSR GP25

 携帯小型散弾銃:USSR KS23M

 ニードル弾水中拳銃:USSR SPP-1M

 コンパクトタイプ突撃銃:KBP 9A-91

 それぞれの隊員の特性やチーム編成に応じて異なる銃器が与えられている。互いの武器の機能性を考慮しながら男たちは権田への弾幕を張り始めたのである。

 シンプルな外見の小型機関銃9A-91に消音サプレッサーを装着し敵へと初弾を叩き込む。

 それに導かれるように前進し始めた権田に対して、次に攻撃を加えたのは携帯型小型散弾銃KS23Mだ。4番ゲージと言う大口径から放たれたのはズヴェズダと呼ばれる音響閃光弾。それが権田の眼前で炸裂したことで一時的にその視聴覚を麻痺させる。

 そして足止めに成功した所で、2名ほどが肉薄接近する。手にしているのは本来は水中下で用いるニードル弾水中拳銃SPP-1Mだ。首、肘、脇の下、脇腹などを狙い鋭利かつ高貫通力の弾丸を2名で4発、計8発を連続で撃ち込めば、頸部と右肘にニードル弾が食い込んでいた。

 さらに仕上げ処理として4名が単発の擲弾発射器GP25を突きつけた。本来はAK74ライフルに装着して使用するはずのそれを単独で使用、狙いを定めると4発の擲弾を連続して叩き込んだのである。

 その流れるような連携攻撃を食らい、黒い盤古の一人である権田は後方へと吹き飛ばされていた。これで止まるような脆弱な輩で無いのは分かっているが現状で彼らが行える攻撃はこれで精一杯なのだ。

 

 その間にボリスは、タウゼントの体――その右肩をつかむと一気に引きずった。そして権田との距離を稼ぎつつ安全な距離を確保する。今なら敵も一時的に行動不能となっている。その間にボリスはどうしてもやらねばならない事があるのだ。時間的猶予は無い。危機感に神経を張り詰めさせたまま副長ボリスは再度問いかけたのである。 

 

「おい!」

「吾輩、〝おい〟などと呼ばれる謂れは……ない……」


 うつ伏せ、伏していたタウゼントだったが、その生命は潰えては居なかった。打撃を受けた頭部の鈍銀色の房付きの兜には変形こそ見られるものの、正気を取り戻したのか即座に体を起こし体制を整えると、視線をボリスの方へと走らせたのである。

 

「吾輩、流浪の騎士タウゼントである」


 銀色の兜のマスクのスリットの下、淡黄色く光り輝く目が浮かび上がっている。その光に瞳のようなものが見えなくもない。その視線を単なる何かのメカニズムの点滅だと切って捨てる事は可能だ。だが、そこから感じる物は明らかに人の意志に満ちたものだったのである。


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