Part38 死闘・拳と剣、新たに/神の雷、裁く
今、シェン・レイは全ての感覚をネット上へと飛ばしていた。
自分自身を完全にVR・3DCGで取り囲み、ネット制御もフィードバック制御付きのヴァーチャルインターフェースにてハンドリングしている。
「流石に仮にも法的執行部隊の精鋭だからな――、片手間で出来る仕事じゃないからな」
そしてシェン・レイは一斉にクラッキングを敢行する。対象数は7――、その中には情報戦特化小隊の隊長である字田も含まれている。
「全員を同時に掌握する。お前たちを白日のもとにさらけ出してやる!」
ネットの空間上に広げた7つのヴァーチャルコンソール越しにシェン・レイはターゲットを補足する。
【 クラッキング対象リストアップ 】
【 >武装警官部隊・盤古 】
【 >情報戦特化小隊・第1小隊 】
【 #1:字田[難度A-] 】
【 #2:真白[難度B] 】
【 #5:柳生[難度C+] 】
【 #6:権田[難度C-] 】
【 #7:亀中[難度B-] 】
【 #8:南城[難度B+] 】
【 #9:蒼紫[難度C] 】
隊長の字田は流石に高度なネットセキュリティを保有している可能性がある。南城はステルス特化という特性から。真白は副隊長としてのルート権限保有の可能性から。亀中は元からネットスキル技術者であるためだ。それ以外は白兵戦特化という特性から、平凡並みのネットスキルにとどまっているはずだ。
多面的に履歴情報をサーチして得られた情報を元に難度を設定、難度の高いものから優先してクラッキングの下準備を行う。
【 全クラッキング対象―― 】
【 ――アクセスルート設定開始 】
【 クラッキングシステムポイント 】
【 >武装警官部隊・盤古 】
【 標準ウェアラブル情報システムユニット 】
【 クラッキング形式 】
【 [マスターメンテナンスID擬装]】
【 公的機関ワンタイムパワード生成ロジック 】
【 >シュミレーションスタート 】
【 メンテナンス作業者生体ID 】
【 >既自動生成ストックリスト 】
【 #14 #23 #78 #102 】
【 #132 #158 #232 】
【 >生体IDクラッキングプロセスにセット 】
【 >ワンタイムパワード生成・準備良し 】
【 >クッキングプロセススタート 】
先にリストアップした難度の高難易度の対象から優先してクラッキングを開始する。すなわち――字田、南城、真白、亀中、柳生、蒼紫、権田、その序列順にクラッキングプロセスを開始、そして、全七体同時のクラッキングを完成させるのである。
【 生体ID認証:全7体認証成功 】
【 ワンタイムパスワード生成完了 】
【 クラッキング#1~#7 】
【 ワンタイムパスワード、及び生体認証 】
【 入力完了 ――クラッキング成功―― 】
【 】
【 プログラムアクセス 】
【 ホログラム迷彩総括管理プロセス 】
【 制御プログラム群ユニット 】
【 〔強制アクセス:実行〕 】
【 】
【 >同プログラム群 】
【 システムエリア専有領域:掌握 】
【 〔強制停止コマンド:実行〕 】
【 クラッキング対象ID:#1~#7 】
【 ≫≫同プロセス、作動停止確認 】
シェン・レイは一気にホログラム迷彩を解除して行く。そして彼の作業完了と同時に、今この東京アバディーンの戦場にて新たな敵の姿が次々に露見していく。もはや彼らを完璧に覆い隠すステルス機能はこの世には存在しなくなっていたのである。
【 武装警官部隊・隊員、対象7名 】
【 標準装備・ホログラム迷彩機能 】
【 全制御プロセスの停止を確認 】
隊長字田が、
副隊長真白が、
柳生が、権田が、南城が、亀中が、蒼紫が――
苛烈なる攻撃の交わされている戦場にて突如としてその姿を現したのである。その光景はネット越しにてシェン・レイからも確認できていた。
「よし――、クラッキング全プロセス停止確認、成功だ」
シェン・レイはさらにコマンドを実行する。
「そしてコイツはおまけだ!」
【 ホログラム迷彩総括管理プロセス 】
【 制御プログラム群ユニット 】
【 〔強制削除コマンド:実行〕 】
【 】
【 >プログラム群対象総数:48 】
【 #1より、#48、同削除確認 】
【 バックアッププロセスチェック 】
【 >同プログラム群、バックアップ不在確認 】
【 】
【 ――完全削除・完了―― 】
全ての処置は終わった。今、シェン・レイの側からできる事はもう無い。
「さぁ、今までの悪事の報いを受けるがいい」
そして全周展開していたヴァーチャルインターフェースを解除し通常空間に戻る。そこはカチュアのオペを行っていた手術オペレーションルームであった。シェン・レイはイオタへと向けて回線を開く。
『聞こえるか? イオタ』
『うん! 聞こえるよ』
『状況報告頼む』
無論、シェン・レイならイオタに尋ねなくとも現状がどうなっているかなどすぐに解る。だが、それはこの僅かな時間の間に共闘した相手に対する礼節の一つだったのである。
















