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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/死闘編
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Part38 死闘・拳と剣、新たに/イオタが動くとき

 イオタは3階建ての雑居ビルの屋上に佇んでいた。

 眼下を見下ろし、背後に彼女の使役を受ける狼型のメカアニマロイドの〝シグマ〟を控えさせている。

 イオタは猫耳少女――ハイテクをタネとしたマジックを得意とし、神出鬼没のクラウンの下、日夜飽くなき不可思議なマジックショーを演じている。その可憐な風貌は色白で髪はブロンド。その頭側部の辺りに2つの三角の耳が生えており、碧色の瞳で見据えているのは、裏社会でうごめく人間たちの欲望模様――

 純白の三つ揃えのタキシードスーツにステッキと言う出で立ちで彼女はいつも、主人であるクラウンの指示を待ちわびていた。それは飼い主に可愛がられることを期待しておとなしくしている飼い猫や飼い犬のごときである。

 だが今夜は違う。

 彼女には今夜だけ行動をともにする者が居るのだ。

 

 その名は『シェン・レイ』

 神の雷の異名を持つ東アジア最強の電脳犯罪者である。

 

 イオタはシェン・レイに命じられた様に、羽根妖精の如きシルエットの小さな仲間たちへと命じた。

 

『ゼータ、姿は消した? 完全に周囲に同化してね! そして〝パーティー〟の会場全体に均一に広がって! そこでボクからのリレーショナルシグナルを待って待機して!』


 ネット越しの秘匿回線を通じて無数の羽根妖精たちに命じる。妖精たちは言葉では声を返してこないが、暗号化された反応信号でレスポンスを返すことが出来る。

 

――Instruction: All sense sync signal transmission――


 それは羽根妖精のシルエットを持つ分散個体であるゼータに対して送られた『全感覚同期信号発信』の指示シグナルだ。そして〝ゼータ〟から返ってきたのは――

 

――Acknowledgment: acceptance acceptance signal――


 要請受諾を意味する確認信号である。

 イオタは返ってきた全ての受諾シグナルを整理する。流石にシェン・レイやディアリオ並みの情報ネット制御能力は無いが、それでも闇社会を乗り切るだけの電脳スキルはそれなりに備えていた。

 

【 LISTUP:             】

【   ALL Floating UNIT 】

【 from Z1             】

【 to Z36              】

【 Mutual Synchronized 】

【          Connection 】

【 Construction        】

【                     】

【 OPERATION MODE:     】

【          >INVISIBLE 】

【                     】

【  ―MODE CHECK OVER―  】


 全てで36体の羽根妖精=ゼータが作戦エリアに展開しているのを確認し終えるとイオタはネット越しに音声を飛ばした。

 

『シェン・レイ! ゼータの展開終わったよ。例の黒いおまわりさんたちを包囲する様に、この辺一体に36のゼータを拡散! インビジブルモードだからすぐには見つからないけど長くは持たないよ』


 イオタの声にシェン・レイは答え返す。

 

『ご苦労! 君経由でこちらでも把握した。ネットリレーショナル状態も良好だ。すぐに開始しよう。ゼータの存在に気取られる前に』

『オッケイ! それじゃボクはルート中継ポイントの役に専念するね』

『頼んだぞ! 君だけが頼りだ。奴らの隠れ蓑を今こそ剥ぎ取るぞ』

『うん!』


 イオタはシェンの言葉に弾んだ声で返していた。

 初めはあれだけクラウン以外の人物に従うのが嫌だったのに、なぜだろう? このネットの向こうの彼の声は凛々しく何より力強く、明確に何を目指すべきか? 何を成すべきか? を感じさせてくれる。全てにおいて服従したくなるのがクラウンだとするなら、この神の雷は共に行動したくなる存在といえる。そんな事を考えながらもイオタはシェン・レイから送られてくるネットシグナルを全身で受け止めていた。そしてそれを羽根妖精のゼータへと送り広げるのはイオタの役目だ。

 

「いくよ。みんな」


 はしゃぐでもなく、興奮するでもなく、クールに感情を殺すでもなく、イオタは静かにただナチュラルにそっと呟く。それは正義だ。人として成すべき犠牲的行動をふくんでいる。全ては理不尽な暴力から名もない命を守るためだ。

 こんな事は初めてだ。今、イオタは人を殺める事なしに人の命を守ろうとしている。 


「みんなを守るんだ」


 その未知なる感覚の正体を、彼女はまだ気づいていない。


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