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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/死闘編
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Part37 凶刃と凶弾と凶拳と/凶々しき指令

 一人の男が吐き捨てる。感情を押し殺した中に、滾るような情念がマグマのように煮立っている――、そんな語り口の男だった。

 

「返り討ちと敵前逃亡――クズ二匹が。やはり戦いの矢面に立たない者は使えんな」

 

 そして思考の中で思いを巡らせるとある決断をする。

 

「よし」


 シンプルにつぶやくと隊員たちに向けて体内回線を接続し一斉通話した。

 

〔副隊長・真白より全員に告ぐ。第1小隊用の支援ヘリが無断離脱した。よって第2小隊に回収任務の支援要請を行う。回収時点であらためて一斉送信する。各自回収時点まで所定の任務を続行しろ。なお、第2小隊による回収も困難となったら、各自の判断で離脱、作戦領域から脱出しろ〕


 そして真白は体内情報システムをフル稼働させると、その視覚空間内に必要情報を投影する。


【 リアルタイム3Dマップデータ      】

【 対象エリア:有明洋上埋立地       】

【 同期投影情報:             】

【 >当該領域、人的存在一覧        】

【  >犯罪組織構成員           】

【  ≫ゼムリ・ブラトヤ戦闘員       】

【   静かなる男残り数21名       】

【  ≫無戸籍混血孤児:俗称ハイヘイズ   】

【   総数不明、視認推定数9名前後    】

【  ≫他、当該エリア不法滞在住民     】

【   所属ソサエティ等詳細10名前後   】

【  ≫所属違法組織等不明者        】

【   10国籍・民族不定、10名前後   】

【                     】

【 >他、白人系青年女子数名確認情報あり  】


 真白の頭脳には他の隊員たちや街頭カメラ付近のエリアに展開しておいたステルスドローンなどから得られた情報を元に、現時点での判明情報をリストアップしてマップデータ上にマッピングしていく。

 隊長字田が特攻装警たちとやりあっている辺りの各所にゼムリ・ブラトヤの戦闘員たちがおり、ハイヘイズとか言う身元不明の孤児たちが逃げ遅れて隠れているのが確認できている。さらには複数の異なる組織の犯罪組織構成員が偵察行動のためなのだろうか、そこかしこに身を隠しているのが解る。このエリアにねぐらを持っている不法滞在外国人も居るのだろう。逃げ遅れが何名身を隠しているのが視認できている。さらには詳細不明な白人系の少女の存在も視認されている。

 真白はそれらのデータを隊員たちと共有しながら指示を下す。

 

〔全員に告ぐ。今、共有マップデータにてマッピングした当該人物リストは違法性の高い残留者だ。逮捕保護する必要はない。見つけ次第殺害しろ。それとネズミ5、ネズミ6――〕


 真白が問いかけるのはネット技術者の亀中と、トラップエキスパートの蒼紫だ。

 

〔こちら、ネズミ5〕

〔同じく、ネズミ6〕

〔現作戦領域、並びに隣接市街区域に対して有効な都市無力化トラップを発動させろ。破壊行動は当初の暴走促進対象であるベルトコーネに確実に行わせる。お前らはこのエリアに集まっているクズどもや、周辺地域に住み着いているゴロツキたちを露払いとして一網打尽にしろ〕

〔ネズミ6、手段は?〕

〔任せる〕

〔了解、ネズミ5とともに、自立駆動ロボット体を同時展開、同ロボット体によりナノマシン人造ウィルスを現作戦領域、並びに隣接市街区域に同時散布します。散布後作人造ウィルス動開始予定は8分後とします〕

〔よし速やかに実行しろ。他のネズミは抵抗する者たちを強制排除しろ〕

〔ネズミ3、子どもたちは?〕

〔所詮、犯罪予備軍だ。処分だ〕


 隊員が投げかけてきた疑問に真白は一切迷いなく答えた。法の基準を満たさないのなら、彼らには子供ですら抹消対象なのだ。粛清された財津は快楽殺人だったが、彼らは治安維持行動を大義名分とした粛清だ。一見異なるようにみえるが、自分勝手な思想と願望による行動と言う意味では何の違いもない。

 もっともそんな事に気づく彼らではない。


〔ネズミ2、了解〕

〔ネズミ3、了解〕


 ネズミ2は柳生、狂える剣士。ネズミ3は権田、暴走する怪力魔だ。だがもうひとり残っていた。

 

〔ネズミ4からネズミ1へ〕

〔なんだ〕

〔新たに作戦域への侵入者を確認。数は4名。退避中と思われます〕


 ネズミ4は南城、復讐の鬼女と化した女だ。マップデータ上に彼女が確認した相手をディスプレイする。


【 ファミリア・デラ・サングレ構成員    】

【         中南米系・女性4名視認 】


 クラウンの下から離れて、ペガソのところへと向かう途上のペラの女性たちだ。流石にペガソの親衛隊クラスだと名前と顔が知れ渡ってしまっている。

 

〔どうします?〕

〔それは俺が引き受ける。お前は所定の掃討活動を続行しろ〕


 真白がそう告げるとネット越しに舌打ちするかのような音がした。

 

〔ネズミ4、了解〕


 渋々ながらの承諾なのはすぐに判った。女は女を憎悪しやすい。それがカリスマ頭首に可愛がられている美女のサイボーグ集団となれば、女の幸せを破壊された己の境遇との格差で憎悪が暴走するのは日の目を見るより明らかだ。作戦の総合的な遂行に支障が出る。ここは自分が行くべきだと真白は判断していた。

 

〔よし、隊長の戦闘状況を鑑みながら各自行動しろ。行け〕


 そして真白の言葉を受けて、各ネズミたちからネット経由で確認信号が送られる。

 

【 作戦行動確認シグナル〝MOA〟     】

【 ネズミ2よりネズミ5まで確認完了    】


 MOA――Maneuvers Overview Acceptanceの略号で非音声シグナルにおける、作戦行動受諾の確認意思を伝える規定信号の一つだ。それが全員分揃ったのを真白は確認する。

 

「よし――」


 真白も行動を開始した。

 彼らは黒い盤古――犯罪を憎悪し、犯罪を生み出す素因を憎悪し、それらの地上からの根絶を心から願う者たち。そしてその手段には一切の人間的な慈悲は存在しないのである。


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