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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/死闘編
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Part35 死闘・正義のシルエット/共同戦線

 そこからはあっけなかった。

 ステルスヘリを囲むように4機の空戦ドローンが待ち構えている。黒い半球状のシルエットが左右に割れ内部から展開されたのは直径3センチほどの砲口であり、中央にはレーザーの発振素子がかすかに光っている。そこから放たれるレーザーは肉眼では見えない。いわゆる『不可視レーザー光』と言うやつだ。

 だが不可視レーザーにより大気を電位的に遊離させ電気の通り道を形成して狙った位置へと高圧電流を自在に到達させる技術が有る。レーザー誘導送電――、本来の使用目的は宇宙空間や高層大気圏からの効率的な電力伝達だったのだが、ある世界ではコンパクトな破壊兵器技術として密かに利用されていたのである。

 

 見えないレーザーが開いたルートを進んで高周波放電が一直線に進む。ヘリの機体の窓ガラスを砕いて進んできた四条の紫電はピンポイントでアバターボディの円筒形状の頭部を狙い撃ったのである。そして、20近いカメラは瞬時にして受像素子を焼損させる。

 

――ボンッ――


 低く響く爆発音を奏でながら、香田のアバターボディの頭部は白煙をあげてその視界を奪われたのである。

 その瞬間を逃すイプシロンではない。大きな口を開くとその中から赤い舌を一気に投げはなった。巨大なムチのように撓り、螺旋を描きながら伸びるそれはアバターボディの首へと巻き付く。

 

「ケエェエッ!!」


 奇声を発しつつ両手両足を踏ん張り、体重移動と同時に舌にも力を込めて、骸骨の如きアバターボディを機外へと一気に投げ放った。抵抗はほとんど無くあっけなかった。

 そして更にイプシロンは一気に前方へと飛び出した。パイロットシートへと向かうと、その視界の中にある物を探す。

 

――光学ステルス関連装置・制御コンソール――


 このヘリの機体を夜の闇に溶け込ませている力の源、それをコントロールする部分だ。複雑極まる戦闘ヘリのコンソールパネル、だがそれをいちいち調べ上げるような真似はイプシロンはしなかった。怒りを込めて、制裁の為に、イプシロンは力強く告げた。

 

「コレで終わりだ!』


 大きく開いたその口の奥からは、青白い炎が吹き上がりつつあった。それをルームミラー腰に視認する香田だったが、全てはもう手遅れである。

 

「う、うわ!」


 悲鳴のような声が上がるが、そんなの一考だに値しない。イプシロンはコ・パイロットシートの背もたれに取り付くと吸い込んだ呼気を解き放つ様に青白い超高温の火柱を吹き上がらせたのである。

 

「ケエエエエエッ!!!!!」


 青錬火炎一閃、それは無選択にヘリのコンソールパネルに備わった装置を一瞬にして焼き払う。豪快極まるその行為は、悪しき力の一つのその正体を白日のもとに晒すこととなったのである。

 

――ジッ! ジジッ!――


 鈍い電磁雑音が漏れたかと思うと、そのヘリの機体を包んでいた立体映像の檻は、霧に移された幻のように瞬く間に掻き消えてしまう。そしてあとに残ったのは漆黒に塗りつぶされたロシア製の二重反転ローター仕様の軍用ヘリである。

 

「し、しまった!」


 姿を消していたからこそ、夜の闇夜にて暗躍ができたのだ。スラム街の殺戮の誘発という人倫に(もと)る行為に加担できていたのだ。だが――

 

――カッ!!――


 彼方の海上からサーチライトで照らされる。そのサーチライトの元をたどれば、その洋上に浮かんでいたのは一隻の海上巡視船であった。東京海上保安部所属・いそぎくCL135――ひめぎく型と呼ばれる警備機能強化型船舶である。

 そのいそぎくの甲板の上にてライフジャケットを来て頭上を双眼鏡で仰いでいる人物が居る。涙路署捜査1係係長である飛島であった。海上保安庁の協力を取り付けると、東京アバディーンの近傍にて警戒と洋上からの探索にあたってのである。そして、そのような経緯を持ついそぎくが突如姿を現した不審なヘリに向けて探索の手を伸ばしたとしても不思議ではなかった。

 かたや香田は眼下から浴びせられるサーチライトの正体を知る術すら無かった。ヘリのコンソール装置を尽く破壊されてしまった現状では、弁明も抵抗も出来るはずがなかったのだ。香田は最悪の事態も覚悟していた。

 無言で香田は成り行きを見守るしか無かった。ただヘリが墜落しない様に機体を維持するだけで精一杯である。

 そう――彼の生殺与奪は彼の背後のバケガエルに握られてしまったのである。

 

「―――!」


 沈黙を守る香田。だがその彼にイプシロンが発した声は意外なものであった。


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