Part34 カエルノオウジサマ/大地の魔法つかい
3人のプロセスがひた走っていた。
タン、グウィント、ダエア――、様相も風貌も全く異なる3人だったが、その個性は遠目で見ても際立っていた。
薄汚れたビル群と瓦礫の隙間をかいくぐるように進む3人の先頭を切ったのはダエア――〝支えるダエア〟の字名を持つ褐色肌の少女だ。
男のようなニッカボッカズボンと編み上げブーツに、黒シャツの上に迷彩柄の袖なしジャケットを羽織っている。髪は黒で散切り髪のショートカットヘア。男性的なシルエットだがそのボリュームのあるバストが彼女が女性であることを頑なに主張していた。
「先行くよ!」
鋭く告げながら視線をタンとグウィントに目配せしつつ、指差したのはイプシロンが必死に守っていたあのシェルター代わりの廃ビルである。赤いコスチュームのタンがそれに答える。
「頼む」
そしてタンと並んで走っていたグウィントも強い視線を湛えながら頷いていた。そのグウィントにタンが告げる。
「行くぞ。私たちは〝彼〟を支援する」
「どうやって?」
「竜巻を起こす。私の炎と君の旋風だ」
「火炎旋風ね? カエルさん、日干しにならない?」
「大丈夫だ! そもそも――」
タンは物陰から姿を表すと、ひときわ遠くへ跳躍しながら告げた。
「この程度でやられるような彼なら、この場に居合わせたりしない!」
「それもそうね!」
そして着地するとそのまま真っすぐにイプシロンのもとへ向かう。あとに続いてグウィントと言う名の彼女も駆け抜けていた。
先を行くのは赤いシルエットの少女。スカートルックの真紅の軍装を纏い、足元には純白のタイツとレガートブーツ。手には黒地に金モールの篭手を身につけている。髪は大きなヘッドペンダントをつけた赤いショートで右目が髪の毛で隠れている。その背には降り畳まれた弓と矢が背負われていた。
その後を追うのは純白と水色のシルエットの少女。駆けるというよりは飛ぶように翔けているかの様だ。純白のスカートドレスを身にまとい、上半身には水色のレザー時のようなホールターネックのチョッキを身に着けている。腰には金色のベルトを2本、左右交互に斜めに巻いていた。そして、肩と両腕全体を覆うほどの大柄のロングショールを羽織り、水色の流れるようなロングヘアにはフリル付きヘッドドレスが付き、光り輝く美しい髪を風にたなびかせていた。
「行くよ! グウィント!」
「もちろんよ! タン!」
赤い彼女の名はタン、字名は〝燃やし尽くすタン〟
白と水色の彼女の名はグウィント、字名は〝吹きすさぶグウィント〟
今、3人の魔法使いが、決して膝を屈する事のない一匹のカエルにさらなる魔法をかけようとしていたのである。
先に動いたのは〝支えるダエア〟だった。
頭上に居るであろうステルスヘリの気配を察しながら物陰に隠れている。そして上空から何が行われるかを注意深く警戒している。
その直後だステルスヘリの機体が有るであろう場所から黒いつや消し塗装の円筒形、缶コーラサイズのアイテムが数個投げ落とされたのだ。それが危害を加えるための物だというのは誰の目にも明らかだった。
「来たな?」
瓦礫の物陰から姿を現し、廃ビルの頂へと跳躍して一気に登る。その黒い瞳はステルスの帳に身を隠しているヘリの機体から撒き散らされた〝ナパーム手榴弾〟に、強い敵意と怒りを露わにしていたのだ。
「ここをガキたちごと、まとめて吹きとばそうったってそうはイカないよ!!」
そして、その両腕を頭上へと掲げて両指を大きく広げる。と同時に彼女の秘められた力を発動させる〝言葉〟を解き放ったのだ。
「支えるダエアの名において命ずる! 岩盤よ! 姿を現せ! そして命を守る盾となれ!」
そしてその言葉をキーとして、ダエアの体内でその力を発動させるためのシステムが一気に目を覚ましたのである。
【 大気中空中元素固定開始 】
【 固定対象>炭素系セラミックス 】
【 >高強度炭素繊維 】
【 >各種珪化物、及び、岩石物 】
【 再構成電磁誘導レールガイド展開 】
【 再構成対象物シュミレート開始 】
【 >再構成想定物体 】
【 ≫炭素物及び珪化物混合プレートシールド】
【 】
【 ――再構成スタート―― 】
ダエアの両腕と全身から微細な輝きを伴って帯状の電磁波の光が解き放たれている。周囲空間の大気中では周囲に存在する物質を元素固定して、身を守る盾するべき素材を出現させていく。頭上の任意の空間へと誘導し、収束させ、そして再構成させる。
しかる後に造り上げられた物。それは――
【 炭素物及び珪化物混合プレートシールド 】
【 >再構成完了 】
――灰色がかった楕円形状の数メートルはあろうかという巨大な〝盾〟であった。
ダエアは自らが生み出したそれを両腕で受け止めると、頭上から降り注いでくる燃焼系の爆破物を弾き返すための防壁としたのである。財津の放った苦し紛れの攻撃から子供らを守るには十分すぎるほどの物だったのである。
今まさに、高い強度を持つプレートシールドの上にナパーム手榴弾が接触し爆炎をあげている。手榴弾内に収めされていたナパーム燃料は炸裂し飛び散り、周囲は瞬く間に火炎地獄をと化す。
「弾で撃ちぬけないからって火で焼こうってのか?! 芸が無いねえ! 黒い兵隊さんよ!」
だがそれも一瞬であり、即席のプレートシールドは亀裂を生じさせつつも悪意の攻撃を阻止したのである。
















