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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/死闘編
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Part33 天へ……天から……/フィールの後悔

「それにしても――」 

 

 歩きながらフィールは自らの身体をあらためて確かめていた。

 

「なんでこんな恰好なんだろう?」


 自らの手を眺める。そこには生身の人間と何ら変わらぬ手指がある。肌色の皮膚。血色のかよった爪、ほっそりとした女性の手指がある。身体も首筋からつま先まで何一つとして機械としての痕跡はない。顔を触れるがそこも当然人間としての物だ。当然――

 

「あるよね」


――胸に手を触れたがそこは『B』相当だった。


「もうちょっとあると思ったんだけどなぁ――」


 そこだけは残念だった。

 

「まぁ大きすぎると飛ぶのに邪魔だし」


 そう自らを納得させるように無理矢理に言い聞かせる。

 

「大体、しのぶさんも直美さんも結構でかいし、かすみさんもゆきさんも目立ってるし――枝里さんくらいかフラットなのって」


 ぶつぶつと何やら言いながら歩いているフィール。そうして居るうちに周囲の人々と自らの状態とのある違いに気付いた。

 

「でも――」


 自分と他が明確に違う物――それは――

 

「なんで着ている物がこんなに違うの?」


 真っ黒な衣を着ている者、

 純白な衣を着ている者、

 真紅に染まった衣を着ている者、

 ほの明るく光を放っている者、

 灰色であり曖昧な色合いの者、

 衣でな無く鎖を引きずる者、

 

――まさに様々であった。そしてそれは――


「これって生前の〝業〟かしら?」


 あるいは〝徳〟、生きている内に積み重ねた行為の表れであった。ならば自らはどうなのだろう? そう思い改めて自らの着ている物を確かめる。すると、フィールは自らが着ている物に少なからず驚かざるを得なかった。

 

「え? コレって」


 それはまさに天使が纏うような純白の衣だった。そして衣には金色の糸で多彩な飾り縫いがしてあった。明らかに他とは異なる位の高さが垣間見える物だ。

 そこで品性が低いものなら優越感をひけらかすだろう。だがフィールは違う。

 

「なんか身分相応じゃないって言うか――、あたしそんなガラじゃないよね」


 素直に照れてみせる。喜びを感じつつ、控えめに謙虚してみせる。卑下して自らを落とすでなく喜びのあまり高慢になることも無い。そう言う所がフィールらしさに溢れていた。

 そして静かに微笑んだままフィールは一点を目指して歩き続けていた。

 

 それからどれだけ歩いただろう? 無限の草原の彼方に『山々』見える様になる。そこが目指すべき到達点だと言うことは誰でも分かる。

 

「もしかしてアレが?」


 多分そうだろう。フィールは生前にとある寺の住職から聞かせてもらった言葉を思い起こしていた。

 

「死んでから47日の間は中有と言ってまだその後の処遇が決まる前の場所。そして、結審が下されてそこから六道世界のどこへと向かうのかが決められる――」


 目の当たりにしていたあの山こそが、これからどこへと向かうのかを決する場所なのだろう。そう考えると身の引き締まる思いがする。自分はこれからどこへと向かうのだろう? そう考えるとどこへ行かされたとしても可能性はあるとしか思えないのだ。そしてもう一つ感じていた物があった。

 

「でも、私って人間じゃないんだよね」


 フィールは人間でない。彼女はアンドロイドだ。その自分がこうしてこう言う裁きの地に存在を許されていると言う事自体が驚きだった。そしてそれはある事実へと行き着く。

 

「つまり私達にも〝魂〟が許されているって事?」


 それは驚きであり、喜びでもあった。そして悲しみでもあった。

 

「だったら――」


 そこでフィールは大きくため息をつく。

 

「もうちょっと大切にするんだったなぁ」


 自らを労ればよかった。そう思いを新たにしたが今ではもう遅かった。

 

「まぁ、仕方ないか」


 嘆いてもどうにもならない。そう思い歩き続ければ周囲は高い木々に囲まれ始めた。そして、一人一人、異なる道へと足を踏み入れている。おそらくが此処から向かった先にそれぞれが向かうべき世界が待っているのだろう。

 その細くなった道を歩いて行く。その道の先が不意に広がりを見せ、小さめの広場のような場所へと繋がる。フィールはそこに3人ほどの人影を見る。着ている衣は灰色であり、咎人でも徳人でもない曖昧さが垣間見えている。

 

「誰か居る」


 警察としての本能なのか、事実を確認しつつ警戒する事を怠らない。何があっても対処できるように準備をしておく。そう叩き込まれたからだ。少しづつ接近しつつ声をかける。

 

「誰ですか?」


 力強く明朗な声。それに導かれたのか3人は振り返る。その3人の姿にフィールは驚きを隠せなかった。


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