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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/死闘編
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Part32 輝きの残渣/復讐者ゼロ

 そんなファイブをスルーするかのようにエイトが苛立ちを発した。


「しかしよぉ、これからどうする? セブン・カウンシルはおれたちにとっちゃぁ一番のマーケットだぜ? これを失っちゃあ」

「それについては――」


 エイトに問いかけたのは地理的で理路整然とした大人としての落ち着きを備えた若い声だ。


「僕に一任していただけませんか? 皆さん」


 ワンが振り向くこと無くカメラだけを向けて声の主の名を呼ぶ。


「セブンか」


 そこに佇んでいたのは濃紺のスリーピーススーツにビジネストランクを下げた男性だった。頭部は直方体で、四面を埋め尽くすように8セグメントのデジタル表示が無数に敷き詰められている。


「お久しぶりです。みなさん。スリーさんも来ていますよ」


 セブンの傍らには女性物のスカートスーツに見を包んだ純白のヒューマノイドボディの女性体が佇んでいた。顔面も瞳も純白だったが、その身のこなしはナチュラルで不気味さより可愛らしさのほうが勝っていた。

 ワンはセブンに問うた。


「策はあるのか?」

「はい、簡単とは言えませんが多少の出費はやむを得ないでしょう。ここはひたすら金品や彼らが欲しているものを徹底して提供しましょう。すでにスリーさんと一緒に手を打ってあります」


 セブンの言葉にスリーは小さく頷いた。無口で声は発しない主義らしい。


「さすがだな。マーケティングジャンルはお前の独壇場だからな。いいだろう。お前に任せよう。次のメインアドミニストレータはお前だ。セブン」

「恐縮です。ミスターワン」

「皆もいいな?」

 

 ワンが問えば。


「あぁ」


 と、エイト。


「しゃあないわね」


 と、シックス。


「当然だろう? ここであのどん底野郎を超えるリカバリーができるのはセブンしか居ねえからよ」


 と、フォー。


「そうだね。Rお兄ちゃん」

「あぁ、そうだね。L」


 と、トゥー。


「わたしも意義なしです」


 と、ナイン。


 最後にスリーが小さく頷いていた。

 全員の同意が取られたのでワンは告げた。


「全員の意志は決定した。そう言うことだ。なぁ元ファイブよ」


 そう告げるワンの声はどこか冷ややかだった。


「ま、まさかワン――貴様――」


 絶望の中でファイブは悟った。この男が何を考えていたかを。そしてファイブはそれぞれのメンバーに視線を走らせる。


 マルチアイのワン

 チャイルドドリームのトゥー

 ホワイトドールのスリー

 ビークラスターのフォー

 マネキンのシックス

 デジタルのセブン

 ガトリングのエイト

 ホワイトセラミックのナイン


 これがサイレント・デルタの最上級幹部トリプルナンバーである。

 ワンは〝元〟ファイブに告げた。


「当面の間、トリプルファイブの名は空位としておく。お前が這い上がる気なら後任が決まるまでに間にあうかもしれん。多分な――」


 そしてワンは一瞥もくれずにその場から姿を消した。

 一人一人、三々五々に姿を消していく。最後に残ったのはナインだった。


「ファイブさん」

「ナイン」


 ナイン――彼だけはファイブの名で呼んでいた。


「あなた忘れてますよ。ここが〝マフィア〟だと言うことを」


――マフィア――

 

 その言葉はファイブの耳に深く突き刺さっていた。


「スキを見せれば足を掬われる。裏で何が行われているか予想すらつかない場所です。そうなるべく組織を拡大したのは私たち自身。そうでしょう?」

 

 過去を夢想する様に視線を巡らせながらナインは続けた。


「このサイレント・デルタのアバターシステムを造り上げたのはたしかにあなただ。創設当時からのバディだった私がよく知っている。だが、それだけにあなたの発言権はでかくなりすぎていた。いつこうなってもおかしくなかったんですよ」

「――――」


 元ファイブだった男は無言のまま拳を握りしめていた。そしてナインは語りかける。


「這い上がってきてください。手段を選ばずに――」


 ナインの言葉にファイブはハッとなって視線を向けた。その視線にナインは頷き返す。そして最後に一言だけ告げたのだ。


「また、どこかでお会いしましょう」


 そして身を翻してナインは姿を消した。無言のまま元ファイブも姿を消す――


 *     *     *


 そしてさらにどこかともわからぬ場所。そこは研究所の如きハイテクの城であった。電動走行する車椅子の上に一人の若者が体を預けている。体の自由があるようには見えず、指一本すら動いている素振りもない。だが、音声だけはモニター画面越しに電子音声で流れていた。


「そういうことかワンのたぬき親父、僕のアバターシステムに〝バックドア〟を仕込んでやがったな。それをあの時に開きやがったんだ! 僕を――僕のドローンとアバターを潰すために!」


 そのバックドアを見つけて侵入してきたのはあのフローラとか言うアンドロイドの技術あって物なのは確かだ。だがそれを誘発させたのはどう考えてもワン以外には有りえない。なにしろ、サイレントデルタのメンバーID管理という最強の権限を持っているのはワンなのだから。


「いいさ。もうファイブの名に未練はないさ。なぁナイン、またやろうぜ。お前は中から僕は外から! この電子の世界から、この世のすべてを奪い返してやろうぜ! 今日から俺は――」


 そしてコンソール画面に文字が踊る。


【 ネットワーク・アバターデバイス     】

【        メンテナンス管理システム 】

【                     】

【 アバター新規起動            】

【 管理ID:000            】

【 アバターネーム:トリプルゼロ      】

【 サブネーム:サイレントクリスタルのゼロ 】

【 オリジナル人体とアバター体の接続    】

【   〔  ――接続開始――  〕    】


 ハイテクの城のごとき部屋の中、その中央に佇んでいるのは男性型のボディのアバターだった。だが、それはそれまでのファイブのアバターとは異なっていた。全身がクリスタルガラスのように透明であり、角度によっては内部メカがおぼろげに浮かび上がっている。全く新しいボディであった。

 それが接続コマンドと同時にボディに命が灯る。その四肢に力がみなぎり悠然と歩き始める。そしてそのアバターに宿った魂はこう告げたのだ。


「今日から僕はトリプルゼロ、サイレントクリスタルのゼロだ!」


 そして、予め用意していた黒い三揃えスーツを着こなすとその身を翻していく。


「待っていろワン! 特攻装警! お前たちの1を0にしてやる! サイレントデルタとこのハイテク世界は僕のものだ!!」


 叫びを残してかつてファイブだったゼロはあるき出す。

 そして今、ここに一人の復讐機が誕生したのである。

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