Part32 輝きの残渣/神の視座
「ゾラ、早速ひと勝負決まったよ!」
大型のスマートパッドに映る街頭からの監視映像を眺めながらアナははしゃぐように傍らのゾラを呼んだ。
「日本のアンドロイドポリスのフェアリープリンセスと、正体不明のアバターのファイブ君の一戦だ!」
ゾラは体に巻いていたバスタオルを外すと、蒼い色のバスローブへと着替えていた。その手には高級シャンパンのグラスを新たに手にしている。
「あぁ、日本のマスコット気取りのティンカーベルね? それとサイレント・デルタのファイブか。まぁ、彼のことだろうから自分は最前線に出ずに遠隔ドローンで取り囲んで袋叩きってところでしょうね」
「あたりー! 完全包囲まで成功させてるよ」
「あら」
ゾラはアナが寝そべっているロングソファーの背もたれに腰掛けた。
「それじゃティンカーベルが羽を毟られておしまい?」
「いやいや!」
アナがもったいぶって人差し指を振りながら新たな映像を見せた。
「ほらこれ! ジャパニーズポリスの正義のヒロイン第2号登場!」
そこにはフローラの姿が映し出されていた。
「すごいよこの子! ほらこれ」
そこには火炎放射ドローンからナパーム弾をあびせられる光景が写っていた。
「最低でも800度から900度はあるのに、全くの無傷! それに100機以上のドローンの群れの中に突っ込んで、僚機を的確に救出するスキル! この子の援護でフィール嬢は無事救出! そっからがまたすごいんだわ! 見て見て!」
アナはフィールとフローラが共同で反撃を開始した辺りからの動画を連続で流していた。
2機同時の超高速起動
フローラのナパーム火炎突破
フィールのインフェルノ
そしてフローラの逆侵入ハッキング
それらの映像を見終えて、はしゃがない冷ややかな声でのアナが問う。
「どう? ゾラ」
アナの問いに、ゾラも冷静に答えた。
「表の技術でここまでできるなんてすごいわね。作ったの誰?」
「こいつ」
そしてアナのスマートパッドには第2科警研の女帝と揶揄されているあの女性が映し出されていた。
「布平しのぶ?」
ゾラもその名には記憶がないらしい。
「日本人て大学関係とかではろくなの居ないんだよ。かえって在野の技術者のほうがすごかったりすんだわ」
「所属組織は?」
「第2科学警察研究所。ま、警察組織付属の公的機関だね」
「ふぅん」
ゾラはなにやら思案しているようだった。
「要注意ね。あとでファイザにも相談しましょう」
「オーケィ――っと、あーあ、ファイブ君爆破されちゃったよ。ゴールデンセントラル200の中でちゅどーん!」
「なんでわかるの?」
「音と振動、ビル内とは言え爆破の振動は外にも多少はもれるからねぇ」
「なるほど、でもあの組織のことだからすぐにスペアは出すでしょ」
「だね、アバターはいくらでも替えがあるし。あ、こっちでもやってる! おーおー、カエルくん頑張っちゃってまぁ」
次に映し出されていたのはクラウン配下のイプシロンだった。
「さて、こいつのお相手はだれかな〜?」
アナはまるでスポーツの試合でも観戦するかのように楽しげに監視映像を検索していた。それは明らかに支配する側の人間だけが持ちうる欲望の発露であった。そんな彼女にゾラが問いかけた。
「アナ、楽しそうね」
「あたりまえじゃない! ナマの殺し合いだよ? 最高のショーじゃない! 徹底的に楽しまなきゃ!」
まるで神の視座でも持っているかのような傲慢さを隠しもせずに2人はさらなる戦闘の光景を傍観したのである。
















