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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/死闘編
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Part31 シャイニングソルジャーズ/決着

 フローラの渾身の警告が発せられるのとほぼ同時だった。

 ファイブは自らの周囲に展開している仮想ディスプレイの画面に、到底信じられないものを目の当たりにしたのである。

 

【 ――通信回線がロックされました――   】


 さらに追い打ちもかけられる。

 

【 マスター管理者権限が書き換えられました 】


 今まさに、ファイブはネット環境から遮断されてしまったのである。

 

「し、しまったぁ!」

 

 あわててコンソールを操作するがもうどうにもならない。絶望に追い打ちをかけるメッセージしか返ってこない。

 

【 不正操作です              】

【 アナタのユーザーランクはノービスです  】

【 管理者権限がありません         】


 ERROR!

 ERROR!

 ERROR!

 ERROR!


 今やファイブの目の前には絶望的なそのメッセージしか流れては来なかったのである。

 

 醜態を晒すファイブに怒りを叩きつけたのはファミリア・デラ・サングレのペガソである。

 

「馬鹿野郎! 何やってんだ手前ぇ!! さっさと回線を切れ! こっちの場所を逆探知されるぞ!」

「わかっている! 今やっている!」


 ペガソの罵声にファイブはもはや逆ギレでしか答えられなかった。その間にもファイブにとって絶望的なメッセージがながれてくる。

 

【 通信回線管理情報がロックされました   】

【 メイン管理者以外には変更はできません  】

【 三次元物理位置の特定まで〔あと33秒〕 】


 物理的な位置まで把握されればもはや逃れるすべはない。そればかりかこの円卓の間に集っていた、セブン・カウンシルの全メンバーにまで累が及ぶだろう。そうなればファイブはもとより、サイレント・デルタの信用は地に落ちたも同然となる。

 悲鳴にも近い声で泣き叫ぶようにファイブは尋ねた。

 

「なぜだ! いつの間にこんな事を!?」


 フローラのその姿を円卓の間に残っていた全員がモニター越しに見る事となる。ファイブの疑問に、フローラはつよい視線をたたえながら答えを返したのだ。

 

〔先ほどの超高速起動のさいにアナタへの逆侵入を試みました。侵入経路はこの単分子ワイヤーです。私があつかう単分子ワイヤーには電子システムへの非接触侵入機能が付加されています。これを使って、あなたのドローンの遠隔操作部分へと侵入して、アナタへのハッキングを成功させたんです! もうアナタに退路はありません! おとなしく投降しなさい!〕

「嘘だろう?! アレだけの戦闘行動を行いながら、高レベルのハッキングを同時進行したというのか!! 何なんだお前は!」

〔ひとつだけ教えて差し上げます。私にはアトラス兄さんから連綿と積み上げられた技術が蓄積されているんです。当然そこにはディアリオ兄さんのハッキングスキルもあります! 特攻装警はそうやって日々成長しているんです! それが私達の戦いなんです!〕

 

 そしてさらにファイブに対して絶望を突きつける事実が告げられようとしていた。

 

【 物理位置特定まであと4秒        】

 

 モニターの警告のカウントダウンを尻目に、ファイブは最後のあがきをしていた。ペガソがファイブを罵倒していた。

 

「何やってんださっきから! さっさと回線を切れ! まだできねえのか!」


 ペガソの罵声を浴びて、ファイブはもはや泣き叫ぶしかできなかった。

 

「クソぉ! 畜生! 畜生! 畜生ぉぉぉぉ!!!」


【 物理位置特定まであと1秒        】


 それを目にしてファイブは立ちあがり、ついに叫んだのである。

 

「俺から離れろォォオオオ!!!!」


 その叫びを耳にして素早く動いたのは王老師だ。麗莎の手を握りしめて床へと伏せさせる。

 かたやペガソは膝の上に乗せていたあの女官と、秘書のナイラを抱きしめながらファイブへと背を向ける。

 

 次の瞬間、ファイブのボディは閃光を放って、木っ端微塵に爆砕したのだ。

 それこそがサイバーマフィア/サイレント・デルタの鉄の掟――任務失敗者の爆砕処分――である。

 今、ファイブはここに、決定的に敗北したのである。

 

 

 @     @     @

 

 

 向こう側から、一方的に接続が切られていた。

 管理者権限は完全にこちらが奪取していた。あちら側が正常なプロセスで回線切断を行ったとは到底考えられなかった。システムその物を破壊するしか手段は残っていない。その事実から考えられる事を、フローラは静かにつぶやいていた。

 

「強制切断か」


 無理矢理に切断すれば双方ともダメージは避けられない。それをあえてやったことに、敵の狂気と執念を感じずには居られなかった。

 

「お姉ちゃん」


 フローラの声にフィールが振り向く。

 

「終わったよ。逆侵入で得られた情報やデータは通報しておくね」

「うん、そうして。あとは私の方で処理するから」

「了解」


 そう言葉を交わすと、フローラは不安げに姉へと言葉をかけた。

 

「それにしても――、本当に大丈夫?」


 満身創痍で傷だらけの姉の姿を案じずにはいられない。

 

「大丈夫よ。これくらいなんでもないわ。ラボへ帰ればしのぶさんたちが直してくれるから」

「そう? なら良いけど」

「不安がらせてごめんね」

「うん――」


 よく見ればフローラは涙目であった。初の任務を終えて安堵した面もあったのだろう。溜め込んでいた気持ちが溢れ出していたのだ。

 

「ほーら、泣かないの! まだ現場空域の中なんだから!」

「うん、分かってる――でもほんと、心配だったんだからね」


 姉の励ましをうけて、フローラは笑顔を取り戻していく。そしてどちらが手を差し伸べるでもなく、互いの手を握りしめたのである。

 

「さぁ、帰ろう。フローラ」

「うん。母さんたちも待ってるだろうから」


 本来の任務をこなしきれたわけではない。やり残した事も有る。だが今は生還できた――、それだけでも十分な成果だった。

 今、2人は共に手を携えながら飛び去っていく。

 これからも果てしなく続く任務と戦いの日々が2人を待っているのだ。


――――――――――――――――

 報告:

 特攻装警第6号機フィール

 破損状況重篤により任務続行不能と判断。

 よって、作戦空域より離脱を決断する。


 なお、作戦空域下の市街区における、情報犯罪者のネットワーク支配状況についての大規模データの取得に成功、これにより通称『東京アバディーン』と呼ばれるエリアにおける、情報犯罪者の活動拠点や支援体制を捜査可能となると判断する。

 よって、情報機動隊や捜査部、及び、組織犯罪対策部各方面による迅速な犯罪対策が可能となると考える。

 当該データは日本警察ネットワークデータベース上にアップロードするので適時参照されたし。早急な行動を求めるものである。


 報告者:特攻装警第6号機フィール

 協力者:特攻装警応用第1号機フローラ


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