Part31 シャイニングソルジャーズ/輝きの戦士
手と手を結び合い、力強い視線が交わされる。それは戦いの真っ直中に生きることを宿命付けられた2人の〝姉妹〟としての家族の絆の確認であった。だがそれは悲劇ではない。誇るべき絆だ。それを改めて確信した2人は、眼下から上昇してくるドローン群の黒い群れに強い視線を向けたのである。
それを視認しつつフィールが告げる。
「その為にはアレを始末しないとね」
それはまるで押し寄せるイナゴかハエのごとくだ。姉の言葉にフローラが言う。
「はい。一気に葬らないとキリが無いです」
「そうね。できれば〝本元〟も叩きたいところね。増援の戦力を呼ばれたら事だわ」
「本元――?」
姉のフィールが不意に口にした言葉に、フローラは何かをひらめいたようだ。
「おねえちゃん! それ、わたしに任せてくれる?」
「え?」
「わたしに考えがあるの。必ず仕留めてみせるから」
自信と勢いをにじませながらフローラが言う。その言葉にフィールは問い返した。
「フローラ、あなたはナニが出来るの?」
シンプルだが真剣な問いに、フローラは告げる。
「お姉ちゃんが出来ることなら投げナイフ以外はなんでも」
「飛行性能は?」
「精密制御重視で、トップスピードはお姉ちゃんの80%程度」
「〝糸〟は?」
「できるよ! 全力で行けばお姉ちゃんにだって負けない自信があるよ」
「言ったわね? あとで見せてもらうわよ? それじゃ一気に仕掛けるからね。わたしは〝縦糸〟を張るから、フローラ――あなたは〝横糸〟をおねがい」
「任せて! 完ぺきにとらえてみせるから」
「オーケィ! カウント3で〝発動〟するわよ! ついてきて!」
「了解。準備開始します」
2人はうなずき合いながら、手を離す。そして、反撃のためにスタンバイを始める。
互いの飛行装備を加速させながら、一旦大きく離れる。そして、再加速するとドローン群の真っ只中へとVの字を描くように2人は一点を目指して飛び続ける。今日始めて会ったにもかかわらず、長年に渡って連れ添い支え合った家族であるかのように、二人の息は見事にシンクロしていた。
その2人に対して全ドローンを巨大なスピーカーのように響かせながらファイブが声を発する。
〔何をする気だ? 死にかけが! 同型機が二体に増えてもどうにもならんぞ! オレからは逃れられん! おとなしくオレの欲望の糧となれ!〕
それはおのれが負けることすら想像できない傲慢極まりない愚か者の姿だった。そんな愚物に対してフィールは力強く叫び返した。
「そんなのお断りよ!! 散々やってくれた借りはきっちり返すから覚悟なさい! それにアナタは最大のミスを犯した!」
〔ミス? そんなのはありえない! 僕は完璧だ!〕
完璧――、安易にその言葉を口にする者に限ってロクなものではないということをフィールはこれまでの経験から知っていた。愚か者に対してフィールは告げる。
「まだ気づかないの? あなたの最大のミスは――」
そして、フィールは右手の指を3本立ててそれをフローラに指し示しながら、3カウントを数え始めた。
【 単分子ワイヤー高速生成システム 】
【 タランチュラ起動準備開始 】
3つ――
【 速度レンジ・マキシマム 】
【 体内負荷 限界値の95%まで 】
【 超高速飛行モードをスタンバイ 】
2つ――
「――わたしの〝翼〟を奪わなかったことよ!!」
その叫びとともにフィールは残る一つの指をたたむ。3カウントがコールされたのだ。
2人の姉妹の叫びがこだまする。
「――超高速起動! ダブル!!――」
今、二つの白いシルエットは飛行加速装備の作動時の電磁ノイズにより流星のように輝き始める。そして目にも留まらぬ超高速で加速飛行しつつ白銀の光を放つ。
今2人は――〝輝きの戦士〟――となったのだ。
















