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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/死闘編
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Part30 死闘・錯綜戦列/シェン・レイとイオタとタウゼントの場合――

■ネット空間越しにて。シェン・レイとイオタとタウゼントの場合――


 同じ頃、ネットを介して繋がった3つの存在があった。

 1人は神の雷の名を持つ電脳犯罪者シェン・レイ、ハイヘイズの少女、カチュアを助けるため大規模外科手術を終えて経過を見守っている所だ。

 もう1人はイオタ。あの死の道化師クラウンの子飼いの部下にして、猫耳とタキシード姿がトレードマークの謎の猫耳少女だ。

 そしてさらにもう1人が、タウとパイとの凸凹コンビ。特にタウに対して話しかけている。

 イオタは普段はクラウンの言葉にのみ服従しているが、この日だけはクラウンからの厳命もあり、協力関係者であるシェン・レイの言葉に素直に耳を傾けていた。ネット越しに3人は声のやり取りを交わしていた。


〔それではあの〝黒い盤古〟が間違いなく戦闘エリアにすでに侵入を果たしているんだな?〕


 落ち着いた口調のシェン・レイに対して、チャイルディッシュな弾むような口調で答えているのがイオタだ。


〔うん。ウチのゼータも使って確認したけど、隊長さんが1人に、地上の隊員が6人、それから上空にステルスヘリが居てそこから狙撃もあるからパイロットと狙撃手でプラス2人、全部で9人ってとこかな〕

〔ステルスレベルは?〕

〔軍用としての基準も含めると10段階で上から3番目ってとこかな。色と熱は完璧、電磁波もきっちり遮断してる。ただ偽装信号がレベル低いから逆にきれいに消えすぎててステルス戦のベテランなら解っちゃうね〕

〔ゴミ溜めに真っ白なボールを置けばはっきり判るからな〕

〔うん、そんなとこ。セオリーに忠実すぎて足出てるってとこだね〕

〔了解した。ステルス状況のデータを解析しているが独自開発の物ではないな〕

〔どう言うこと?〕

〔君から貰った映像を精査したが、アメリカ陸軍の特殊部隊などが使っている映像フォーマットをそのまま使用している。警察用途では使用されていないものだが、軍の特殊部隊ではけっして珍しいものではない。技術供与を独自に取り付けて得られたものをそのまま使ってるか、もしくは――〕


 一言区切った声にイオタは耳をそばだてた。


〔――米軍と軍産複合状態にある軍需企業から直接連携状態にあるのだろう〕

〔え? なにそれ?〕


 イオタが疑問の声をあげれば、脇でおとなしく耳を傾けていたタウが口を挟んだ。

 

〔軍需産業から支援してもらう代わりに、自らをモルモットに差し出した――、と言うところであろうなぁ〕

〔それで間違いないだろう。あいつらからやりかねん〕


 タウの言葉をシェン・レイが肯定する。そこにイオタが更に疑問の声をあげた。


〔あの黒さんたちって日本警察でしょ? そんなのありえるの?〕

〔あぁ、ありえるとも〕


 イオタの疑問の声にシェン・レイは明確に答える。


〔なにしろ日本は公的には特殊部隊や軍向けの健常者用のサイボーグボディは厳しい制限がかかっている。戦闘用途のサイボーグとなれば海外企業に支援してもらわねば材料すら手に入れられないと考えるべきだろう。そしておそらくは――〕


 そう語りながら、シェンレイはイオタとゼータからの視覚映像をデータ処理してイオタたちへと転送した。


【 CG立体映像迷彩解除ソフトウェア起動  】

【 迷彩形式:自動識別モード適用      】

【 識別結果>US-ARMYDELTA1X 】

【 フィルター解除プロセススタート     】

【 シグネチャ特性抽出⇒          】

【 RGB判別⇒明暗深度⇒光度位相⇒    】

【 原型画像合成シュミレート⇒〔完成〕   】

【 活動対象フィールド指定         】

【 フィルタリング画像マッピングスタート  】

【 >地上7体 >上空、ヘリ1体      】

【 3DマップデータディスプレイOK    】

 

 シェン・レイは敵のステルス機能を解除しその存在を浮かび上がらせ、さらにはその位置情報を周辺領域の3Dマップ上へとマッピングした。そしてさらにそれをイオタやタウたちと共有したのだ。


〔彼らは日本警察中枢部の意思には従っていないと見るべきだ〕


 驚くような言葉に、イオタは思わず悪態をつく。

 

〔なにそれ? それで警察なの?〕


 心底信じられないと言う語り口にシェン・レイは答える。

 

〔肩書上は警察の身内になっている。ただし、日本の警察は二つに分裂している。刑事と公安と言う二つの勢力にね。特攻装警とか言うアンドロイドたちは刑事の方だが、あの黒いならず者たちは公安の勢力に属している見るべきだ〕

〔あきれた。身内で喧嘩してるの?〕

〔やれやれ。同じ法を守る者たちのはずなのに、不毛ですなぁ〕


 ため息をつくイオタとタウにシェン・レイは苦笑する。

 

〔不毛か――、否定せんよ。それより話を戻そう〕


 そしてシェン・レイは更に言葉を続けた。

 

〔俺はこれからあの黒い盤古どものステルスシステムをクラッキングして無効化する。そのためのサポートを頼む〕

〔オッケー、何すればいいの?〕

〔イオタ、君はゼータとか言う飛行体を誘導してくれ、ゼータの内部システムを中継システムとして利用する。黒い盤古の地上部隊のそれぞれに効率的にゼータの各個体を配置してくれ〕

〔うん! わかった。まかせて〕

〔次にタウゼント卿〕

〔はいである〕

〔あなたには黒い盤古の隊員の破壊行為を阻止してもらいたい。特に周辺に展開しているロシア・マフィの実働部隊である〝静かなる男〟たちを守ってやってくれ〕

〔マフィアを? なぜに?〕


 タウの疑問の声にシェンが答える。

 

〔静かなる男たちは皆老齢の元軍人ばかりだ。サイボーグ化しているとは言え、やはり重戦闘には無理がある。それに今は隊長であるウラジスノフ氏がダメージを負っていて指揮系統にトラブルを生じていると見るべきだ。黒い盤古の粗暴行為をから守ってやらねばならん。犯罪組織構成員とは言え一つの命であることに変わりはない。無論、それ以外にも破壊や殺戮を行う可能性もある。何しろ彼らは――〕


 シェン・レイはデータを映し出す。9人の黒い盤古のメンバーをシルエットとして各個毎に表示したのだ。そしてシェン・レイがひときわ強く告げた。

 

〔彼らはこの街を憎んでいる〕


 そしてその言葉に続いたのはイオタとタウへのメッセージだった。

 

〔この街には命がある。人間が住んでいる。戸籍や国籍の有る無しで人間の優劣が決まるわけじゃない。奴らの悪意を阻止するためにも力を貸してくれ〕


 その心から告げられた言葉にタウもイオタも明確に答えていた。

 

〔騎士として人々の命を守るのは当然のこと! 任せるのである!〕

〔そうだよ。命を大切にしない奴らに負けるわけにはいかないよ〕


 二人の口から出た言葉は素直であり、偽りやごまかしは感じられない。その真っ直ぐな心性にシェン・レイは少なからず感心していた。


〔よし、それでは早速行動を開始しよう。闇に隠れて悪意を行使するあいつらを白日のもとに引きずり出すぞ!〕

〔心得た! 行くのである! パイチェス〕

〔オッケィ。行くよ! シグマ、ゼータ!〕


 イオタとタウが動き出していた。それをネット越しに感じながらシェン・レイは情報を整理していた。だがその時、彼の下へと割り込んでくる通信要請がある。

 

〔聞こえますか? 緊急事態です! シェン・レイ!〕

〔何だ?〕


 ネット越しに問いかければ返ってきたのは聞き慣れた声である。


〔私です。神の雷!〕

〔クラウンか。どうした? 音声通信のみだなんて〕


 そしていぶかしがるように問いかける。

 

〔今しがたお前さんの配下のイオタとタウに指示を出していたところだ。何か起きたのか?〕

〔困ったことが起きました。新たな勢力の介入です〕

〔新たな勢力? なんだ。どこかの軍部か?〕

〔いえ、我々が見知った人物に関与しています。しかも事前情報では痕跡すらありませんでした。あのディンキー・アンカーソンに関わる者たちです〕


 者たち――、その表現に対象者が複数存在することが伺える。

 

〔それで。名前は?〕


 シェン・レイが問えばクラウンはよく響き通る声で告げる。

 

〔〝プロセス〟――ディンキー・アンカーソンが生み出した存在にしてマリオネットとは全く異なる個体です〕

〔プロセス? 人間か? アンドロイドか?〕

〔わかりません。情報不足です。しかし、この戦いに介入して、あのベルトコーネを回収しようとしています。放置できません。いかがしますか?〕


 シェン・レイはクラウンの問いに即座に決断した。

 

〔その件は後回しにしよう。今は情報戦特化小隊を排除しつつ、ベルトコーネの暴走を抑止するのが重要だ。プロセスとやらがベルトコーネを目的としているなら戦場にて鉢合わせるだろう。その際に適時決断すればいい。ただし、情報収集はお互い完璧に行おう〕

〔承知しました。では私も彼の地で監視に当たることにします。得られたデータはネットを介してアナタと共有致します〕

〔それでいい〕

〔では改めて〕


 クラウンとの会話が終わる。そしてシェン・レイは早くもネット上の情報をかき集めようとしていた。プロセス――、その名を手がかりにして。

 

「しかし、あのクラウンを慌てさせるなどどんな連中なんだ?」


 シェン・レイは沸き起こる疑問を制御しつつデータの海へとダイブしていったのである。


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