Part28 幕が上がる時/ブラックボックス
――72秒―――
――470秒――
――735秒――
それはベルトコーネの体に刻まれたタイムリミットである。徹底的に破壊された身体機構を、彼の中に組み込まれた第2の頭脳システムが再生するための道標だった。
今、彼の体内の総体再生ロジックシステムが活動を開始してから70秒が経とうとしていた。
【 IDNAME:BELTCOUNE 】
【 インターナルフレーム独立機動システム 】
【 総括管理意識体『ブラックボックス』 】
【 インターナルフレームメインスパイン内部 】
【 分散型ナノマシンプロセッサー 】
【 >完全起動完了 】
【 全残存構造機能部分干渉スタート 】
【 】
【 内蔵部動力系:再起動開始 】
【 6連パルス駆動核融合マイクロ炉心 】
【 #1/#3/#4 ⇒ 炉心点火成功 】
【 同系統、安定動力供給スタート 】
【 内部人工筋肉系:稼働開始 】
【 】
【 第2中枢系〔状況判断ログ〕 】
【>現状況判断、身体拘束高レベル 】
【>攻撃者多数確認 】
【>>A体:主要攻撃者・装甲ボディ確認 】
【 第1中枢部記憶履歴より 】
【 過去において敵対的戦闘を確認 】
【 ★敵対可能性レベル高レベル 】
【 ⇒最優先排除機体 】
【>>B体:補助攻撃者・非人間体・損傷確認 】
【 戦闘能力低下中 】
【 第1中枢部記憶履歴にて 】
【 過去履歴に該当対象未確認 】
【 ★敵対可能性レベル低レベル 】
【>>C体:ネットワーク能力者 】
【 スキルレベル極めて高レベル 】
【 自機体への内部侵入、及び、 】
【 一部システムプログラムの 】
【 消去破壊確認 】
【 周囲状況から逃走を確認 】
【 ★敵対可能性レベル極めて高レベル 】
【>>D体:ステルス能力保有サイボーグ歩兵 】
【 複数機体確認、総数未確認 】
【 A体B体への攻撃を確認 】
【 自機体への敵対的攻撃未確認 】
【 D体集団リーダー該当者確認 】
【 同、リーダーの会話内容一部確認 】
【 ★敵対可能性は極めて高レベル 】
【>>補足:他、敵対可能性行動体の存在を推測】
【 同、対処行動の必要性を判断 】
【 適時、行動判断の 】
【 同時並行処理を強く推奨】
【>最優先攻撃対象をA体と決定 】
【 B体は判断材料から排除 】
【 C体は物理的に存在を探知次第 】
【 最優先攻撃対象へと適時変更】
【 】
【 攻撃優先順位プライオリティ 】
【 A体 > C体 > D体 】
【 なお、B体は既破損機体に該当すると判断し】
【 攻撃対象判断から除外 】
【>攻撃行動開始 】
そして時間経過開始から71秒が経った時に状況判断に変化が生じていた。
【>身体拘束用単分子ワイヤーに変化を感知 】
【 同単分子ワイヤー切断を確認 】
【>身体拘束度レベル低下 】
【 行動自由度高レベルと判断 】
【>慣性質量制御系統、現在組織再現作業中 】
【 同系統完全再起動までの間 】
【 マニピュレータ残存機能による 】
【 物理攻撃を選択 】
【 】
【 総合判断:A体への攻撃行動可能 】
【 補助判断:A体を排除の後にD体集団の 】
【 包囲を突破、活動限界点到達まで】
【 周囲物理構造物、及び、 】
【 現住生命体への無差別的攻撃行動】
【 へと移行。 】
【 終了条件:第1中枢体記憶における記憶情報】
【 より得られた情報に基づき、 】
【 現在地点周辺埋立地全域での、 】
【 全ての戦闘行動の完全完了 】
【 】
【 ―行動開始― 】
もう一つのベルトコーネ。それがその極秘の頭脳機構において下された〝判断〟と〝選択行動決定〟――、そこに一切の慈悲はなかった。ただ周囲状況を冷静かつ冷徹に分析し、分類し、自らの機体の保護と生存性の確保と、敵対的存在の完全抹消のみを目的として、最終決定を下すのである。
そこには野心もない。
そこには野望もない。
そこには恩讐もない。
そこには敵愾心もない。
そこには殺意もない。
そこには理想もない。
そこには執着もない。
そう、あるのはただ一つ〝自己の生存可能性の確保〟だけだ。
そしてそれこそが――
〝もう一つのベルトコーネ〟が、世界中の戦場の地において解き放ち続けた最悪の悪夢に他ならなかったのである。
















