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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/集結編
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Part27 黒い盤古/第2科警研バックアップ

 ここは府中市の第2科警研研究施設内。

 グラウザーの開発スタッフである大久保以下G班の面々が詰めている研究ルーム。そこで大久保は苛立ちと焦りを隠せないでいた。

 

「どうしたっていうんだ? グラウザーのやつ! 再度、緊急コールしろ!」

「だめです! 基本制御信号のハードウェアモニター信号はつながっていますが、視聴覚信号のデータは完全オフラインです! 呼びかけにも応じません!」


 大久保の指示にG班のスタッフの一人が声を発する。それはグラウザーが大久保たちとの情報共有を拒んでいることに他ならなかった。突然の事態に驚き戸惑う大久保たちだったが、そこに割り込むように声をかけてきた者がいる。少しドスの効いた強面声の主で、情報機動隊員で上原と言う。

 

「ちょっといいですか? 大久保主任」

「上原さん?」


 情報機動隊メンバーの中では最年長であり、元公安捜査員として活動したこともある強面のベテランだった。大戸島公安4課課長からも信頼厚く、警察内外の荒事にも対応可能な有能な警察人。ディアリオに次ぐ存在として鏡石隊長のバックアップを任せられる男である。ディアリオを情報戦特化小隊に同行させるに当たって、第2科警研とグラウザーの仲介バックアップを大戸島から任されたのである。

 大久保の方には上原の画像こそ届いていなかったが、上原の声は修羅場を幾度もくぐり抜けてきた猛者としての実力と迫力を匂わせている凄みがあった。大久保もその声に耳をかさないわけには行かなかった。

 

「大久保さんたちもご存知ですよね? 特攻装警の視聴覚データアップロードに関する制限事項の事は」

「――特攻装警自身が認めた場合に限り、日本警察の情報ネットワークにアップロードできる――でしたよね?」

「えぇ、そうです。しかしそれは逆を言えば、特攻装警自身のプライベートを守り、特攻装警を警察の街頭監視カメラ代わりにしないための足かせであり防波堤となる物です。おそらくは今グラウザーは我々に対して明かせない何か重要な状況にあるのだと思われます。それも、今回の対ベルトコーネ制圧戦闘を行うにあたって〝第3者のプライバシー〟を守る必要が出てきたのだと思われます。これは特攻装警の取扱規定に基づいた正当な行為です。こればかりは向こうからの通信再開を待つしか無いでしょう」

「基本情報が送られているだけでも良しとするするしか無いということですか」

「そう言う事です。私も送られてくる必要情報の仲介はこのまま継続します。今は向こうからの反応をじっと待ちましょう」

「はい、分かりました。アドバイスありがとう御座います」


 大久保は上原に丁寧に礼を言う。流石に情報機動隊員として情報犯罪の最前線で戦い続けてきたベテランとしての判断力と胆力に感心するしか無かった。大久保は部下に指示を出す。

 

「回線余裕率は?」

「開始時と変わらずです。安定しています」

「各種バイタルは?」

「オールグリーン。作戦行動に支障なしです」


 その答えに続くように別な研究員が声を発する。


「ですが――」

「どうした何かあるのか?」

「はい。クレア頭脳の情動反応数値で対人シンパシーにまつわる数値が凄い数値を示してます。おそらくとても重要な人物と対話をしているのだと思われます。それと記憶と想像に関する頭脳領域の神経反応が激しい動きを示してます。二人分の記憶情報がいっぺんに動いているようです。まるで別人の誰かが乗り移ったかのようです」

「別人? 技術者ならオカルトはよせ――」


 そう叱咤しつつ研究員が示したデータを見る。

 

「これは? どういう事だ? コレでは多重人格状態じゃないか?」


 大久保が見た頭脳データマップは、通常ではありえない激しい処理反応の痕跡を示していた。それは言うなら一つの脳内に、2人の異なる情報ネットワークの動きがあるような物であった。


「そうですね。基本頭脳部分以外の拡張頭脳部分であるエンジェルレイヤーもフル稼働している状態です。グラウザー自身の記憶と人格の他に、もう一人分の何者かがグラウザーの頭脳を利用して対外コミニュケーションをとっているかのようです」

「ハッキングされたか?」


 大久保の疑問の声に上原が告げる。

 

「いえ、それは有りえませんよ。私の他に3名の情報機動隊員が鉄壁の防壁を張ってます。興味本位のアクセスすら許しませんよ」


 それもその通りだ。むしろ、そのためにディアリオに支援を求めたのだ。だがそれでは今のグラウザーの状態に説明がつかないことになる。大久保はグラウザーが呼びかけに応じてくれない現状を苦々しく思わずには居られなかった。

 

「こんな状況、初めてだ。二人分のメンタルデータが駆動するなんて完全に想定外だ。頼むグラウザー! 早く応答してくれ!」


 大久保たちはレスポンスの得られない現状に苛立ちながらも、反応が返ってくるときをひたすら待ちわびるしかできなかったのである。


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