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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/集結編
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Part22 過去の記憶/闇の商談

 東京アバディーンにそびえる金色の円柱形状の高層ビル。ゴールデンセントラル200。

 その中にセブン・カウンシルのメンバーが集う集会室が有る。

 先程は7つの組織の代表が全て揃っていたが今は違う。

 翁龍(オールドドラゴン)王之神(ワン ツィシェン)王麗莎(ワン リーシャ)

 ファミリアデラサングレのペガソとナイラ

 日本の緋色会は天龍のみで氷室たちは先に帰ったらしい。

 そしてサイレント・デルタが首魁のファイブと言った面々だけが残り――

 新華幇の伍志承(ウー シーチェン)猛光志(モー ガンジ)、ブラックブラッドのモンスターと、ゼラム・ブリトヤのママノーラとウラジスノフは姿を消していた。


 残されたメンツは他愛のない談笑を交わしている。いかなる人物が相手でも身構えずに会話できる王之神やペガソと言った者は当然として、ヤクザ気質の天龍も思わぬビジネスが成功した事もあってかベルトコーネの事で激高したのもつかの間、気さくに会話に応じている。もっともこれらのメンツを前にして護衛役であるはずの氷室たちを先に返してしまう辺り自分自身の戦闘力によほど自信があるのか、まこと豪胆と言うよりほかはなかった。

 話題の中心はもっぱらシノギの事だ。表向き貿易会社を営み、それを隠れ蓑にして非合法ビジネスにも手を染めている翁龍、多数のフロント企業を隠れ蓑にして徹底した地下潜伏を行っている緋色会、そして外国人労働者の供給という合法的な人身売買ビジネスを得意とするサングレ、それぞれの儲け話を自慢すれば、そこにまた新たなビジネスの種が生まれていく。これもまたこのセブン・カウンシルにおける日常的な光景であるのだ。

 円卓の間お付の女官を一人侍らせたペガソが言う。膝の上にのせた女官の衣の胸の合せ目に手を差し入れながら話している。

 

「しかし最近、また空港税関のチェックが厳しくなってきてねえか? 以前は対人スキャナーと金属探知機さえごまかせればあとは人間の目だけだったんだが、日本の洋上国際空港じゃ電磁波探知機なんてのも使ってるんだってな」


 それに答えるのは天龍だ。モルト・ウィスキーをグラスに2フィンガーで注ぐとロックで傾けている。ペガソが気を利かせたのかナイラが天龍のそばによりそい酌をしていた。

 

「あぁ、なにしろ日本は何年か前の成田で偽装サイボーグのテロ事件が起きてから、とにかく神経質だからな。次々に新しいセキュリティをつぎ込んでるって話だ。新技術を避けたいなら洋上空港や大阪は避けた方が良いな。多少不便でも地方空港を使ったり、あとはロシア経由で船便使ったり、中国に直行してフェリーで韓国経由で上陸って手も有る」

「やっぱり、それかよ。それ時間がかかるんだよな。それに旧社会主義国に足を踏み入れるのが難しい連中も居る。なんか良い手ねぇかな」

「あるぜ。これは俺の方の新技術だ。最近、配下に組み入れた民間企業の技術を取り込んだんだ」

「まじかよ? 幾らだ?」


 よほど困っているのだろうか、ペガソは思わず身を乗り出していた。


「不正な電磁波を遮断する新型の人造皮膚だ。100平方センチで2万だな」

「ちいと高えな」

「まだ生産が始まったばかりだからな。歩留まりが下がればもっと安くなる。今、量産向けの地下工場を設立準備中だ」

「へぇ」


 天龍の言葉にペガソがニヤリと笑った。

 

「その話、一口のせろよ天龍のダンナ」

「ほぉ?」

「地下工場となると場所もそうだが、働かせる人間の問題も出てくる。できるだけ安価になおかつ秘密を守れる口の堅さも重要になる。おれも〝向こう〟の方で散々苦労した」


 向こう、とは海の向こうの事だ。故郷の中南米の活動拠点のことだろう。


「だろうな。口が堅いということは本人の性格もそうだが、しがらみとして秘密を守らねば命が無いという事を約定づけられている事が重要になる」

「つまり、心と理性にはめられた手かせ足かせだ。俺の手のサイボーグ労働者が使える。なにしろ秘密を守らねえと命がねえのは分かってる。それに血なまぐさい戦闘より地味な単純労働なら喜んでやるヤツはいくらでもいる。人員の供給ならまかせろよ」

「それは助かるな。今の日本の連中は根性がねえ」


 ふたりで酒を傾けながら談笑している。交渉は順調に進んでいる。そこに声をかけたのは翁龍の王之神だ。

 

「ミスター天龍」


 かけられた声に天龍が視線を向ける。


「時に資金は足りてますかな?」

「なんだ、アンタも興味あるのか。王のだんな」

「えぇ、資金は有効に活用してこそ生きるもの。裏も表も関係ありません。準備資金としていかほど必要ですかな?」

「そうだな――、でも見返りは何がほしいんだ?」


 見返り――、投資した額に見合う利益や価値が得られなければ、金をドブに捨てるのと同じだ。大企業を運営している王ならそれくらい承知のはずだ。静かに微笑みながら王が言った。

 

「地下工場の設立場所を当方に用意させていただきたい」


 場所を用意すると言うことは必然的に製造ノウハウを直に観察すると言うことだ。その事を思案する天龍。ここは彼の人間の見極めが重要になる。

 

「条件がある。麗紗の嬢ちゃんに運営責任者になってもらう。それと利益の10%を受けとって貰おう。その上で15億」


 それは天龍がしかけた『枷』だった。責任者が王の身内なら技術流出について責任を問うこともできる。利益の分与を受け取っているなら、勝手に劣化コピー品を増産しにくくなる。無論、そう言う事を計算しての話だと言うのは王にも十分にわかっているはずだ。


「いいでしょう。その条件で決めましょう。約定について書面に起こしますかな?」

「それは要らんだろう」


 と天龍。

 

「あぁ俺もそう思う」


 とペガソ。そしてペガソの視線は銀のシルエットの彼へと向いていた。

 

「何しろ、アイツが居るからな」


 声をかけられてそれまでネットデータを観察していたファイブが振り向く。

 

「えぇ、今のお話、いつでも再生可能です」


 そこに天龍が鋭い視線を向ける。

 

「暗号化は?」

「トップクラス。僕以外にはけっして復号できません」

「オーケー、いいだろう」


 ペガソが笑って答える。天龍も王もうなづく。そして天龍が麗紗に告げた。

 

「詳しい話は俺の部下の氷室と詰めてくれ、実働指揮はやつにやらせてる」

「承知しました。すぐにでも」


 契約締結だった。皆が満足げにうなづいている。

 空になった天龍のグラスにナイラが胸を揺らしながら酒を注いでいる。ペガソも女官を弄んでいて上機嫌だ。その時、円卓の間の一つの扉が不意に開いたのだ。


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