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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/グラウザー編
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Part14 GUILTY―断罪―/兄弟の絆

 そこは東京アバディーンの場末の辺縁エリアだ。

 メインストリートから離れ、雑多な人種が集まる外周タウンエリアからも離れた倉庫街エリアである。そこから更に南方に行けば未開発の荒れ地が広がっている。その倉庫街エリアを貫く舗装道路の真っ只中、対峙しているのは二体の特攻装警と、テロアンドロイドのベルトコーネだ。

 センチュリーのとっさの機転により視界を奪われたベルトコーネにグラウザーたちが立ちはだかっている。その姿を遠くから眺めているのは〝神の雷〟ことシェン・レイである。

 彼の視界の中で特攻装警が時間稼ぎのための戦闘を開始していた。ベルトコーネに悟られれぬようにするために無言のままで体内回線を通じて会話を試みる。それはまさにアンドロイドならではのコミニュケーション手段である。

 センチュリーがグラウザーに向けて命じる。

 

〔グラウザー! お前の単分子ワイヤーはベルトコーネの超音波視覚には映らない! 俺がアクセルケーブルでフェイントをかける! その隙に徹底的に縛り上げろ!〕

〔はい!〕


 そしてさらに万全を期すためにセンチュリーはグラウザーに命じた。

 

〔それと俺の視覚とお前の視覚を同時共有する〕


 センチュリーの秘した意図。それをグラウザーは即座に察知する。

 

〔双方の位置を正確に把握して、ベルトコーネの裏をかくためですね?〕

〔そう言うこった! やっこさんの目潰しもそう長くは効かねぇ! チャンスは一回こっきりだ! しくじるな!〕

〔はいっ!!〕


 センチュリーの気迫の篭った叫びにグラウザーも俄然集中力が増した。敵が全ての手の内を一切隠さずに全力で全ての能力を開放してくるのだ、今の機会を逃したら次のチャンスはないだろう。ならば逃げも隠れもせずに持てる力を全開にするまでである。

 二人はこの1分間を乗り切るための乾坤一擲の企みのためのシークエンスを作動させた。

 

【 特攻装警・体内基幹通信回線システム   】

【        同時相互共有シークエンス 】

【                     】

【 AUTHER1:2号センチュリー    】

【 AUTHER2:7号グラウザー     】

【 共有回線ID№:            】

【      XBC00232993339 】

【 回線優先度レベル:S+         】

【                     】

【 AUTHER1/AUTHER2     】

【 >体内付加機能固有ID相互交換     】

【 >双方向回線確保            】

【                     】

【 AUTHER1/AUTHER2     】

【 >各自視界情報を相互交換発信      】

【  受信情報の通常視界内での       】

【      スーパーインポーズ再生を開始 】


 双方の情報を共有し、センチュリー主導で受け取った情報を自分の視界エリアの片隅にて即座に再生を完了する。センチュリーの視界の片隅にグラウザーの見ている映像が映り込む。同時にグラウザーの視界の片隅にもセンチュリーから見た映像が表示される。

 

【 3次元空間座標精密数値測位開始     】

【 ①:AUTHER1           】

【 ②:AUTHER2           】

【 ③:ENEMY>ベルトコーネ      】

【                     】

【 相互位置測位3次元シュミレーション   】

【 >ホログラフ表示            】

【   ⇒ START           】

【 >高機能ボディバランスセンスシステム  】

【  相互位置を脳機能感覚野へ反映     】

【   ⇒ START           】


 さらに講じた手段はそれぞれの座標位置と、視覚共有から推察したベルトコーネの位置情報を、特攻装警の二人の中枢頭脳の位置感覚やインスピレーションに作用する領域へと反映させることだった。脳機能への負担はやむを得ないが、敵を裏をかくには最高の奥の手だった。

 それは単独で行動しているベルトコーネにはなし得ない、兄弟機として作られ同様の体構造を持つセンチュリーとグラウザーだからこそできる芸当だったのだ。

 

〔行くぞ!〕

〔はい!〕


 センチュリーの掛け声にグラウザーが答える。そして、センチュリーが意図した位置イメージへとそれぞれは駆け出していく。

 ベルトコーネの正面に位置したのはセンチュリーだ。負傷している身であることを隠さずに、あえて正面から立ちはだかった。残された左腕を腰の裏に回すとアクセルケーブルのグリップを取り出す。そしてそれをあえて敵の前で意味ありげに構えてみせる。センチュリーの放った電磁波閃光弾の目潰しで光を奪われたベルトコーネは正確にセンチュリーの位置を捉えてみせる。それはベルトコーネが光学視界以外の視力を持っていることの証拠でもあった。

 そしてその証拠をセンチュリーは受信していた。聴覚系のセンサーが強いシグナルを捉えている。

 

【 聴覚系情報               】

【 >強レベル音波信号受信         】

【 >超高周波/知覚範囲外周波数      】

【 >超音波定常信号            】

 

 それは声ではない。

 それはましてや機械的な作動音でもない。

 それは超音波と呼ばれる可聴範囲外の音波信号だ。それがレーダーの様に周期的に周囲をトレースしている。それを発してるのは誰であろうベルトコーネ自身でありその体内からである。

 

「よう、どこ見てんだよウスラデカ」


 センチュリーの挑発の言葉はベルトコーネへと確実に届いていた。その顔が振り向きセンチュリーを怒れる形相で睨みつけている。しかし、その瞳はセンチュリーを正確には捉えていない。目で追っているのではないことは明らかだ。

 

「おー、おー、怒髪天をつくってやつだな。そんなに悔しいか。だが――」


 センチュリーは左手を頭上へと上げると斜め下へと一閃させる。その手に握られたアクセルケーブルからマイクロアクチュエーターケーブルが勢い良く振り出される。

 

「ここで完全に終わりにさせてもらうぜ! ベルトコーネ!」


 センチュリーは左腕を振り回し、アクセルケーブルのケーブルを自分の周囲を旋回させるように翻すと、ベルトコーネに向けて一路駆け出した。その姿をベルトコーネも捉えていたのだろう。すでに腕部末端の組織が劣化疲労の限界に達しているにも関わらず、両の拳をしっかりと握りしめ打撃の構えを取る。彼が狙うはセンチュリーの頭部である。

 

「俺を侮ったな! この程度で威力を失うような拳だと思ったか!」


 そのベルトコーネの直前、敵の拳を警戒してステップを踏む。センチュリーは両かかとのダッシュローラーを駆使して体軸を右方向へとずらしながら左手を振るう。アクセルケーブルのワイヤーはそれまで描いていた円の形を崩すとベルトコーネの身体を下方向から上へと狙ってマイクロアクチュエーターケーブルを解き放つ。

 その最中にセンチュリーが一人つぶやく。

 

「侮っちゃいねえよ」


 ケーブルの動きを察知してベルトコーネが後方へと退く。動き回るケーブルで再び捉えられることを警戒しての動きだ。それを追ってセンチュリーが進み出しつつ左手を後方へと振ってケーブルを戻す。ケーブルはコイル状に巻き取られて次の攻撃にスタンバイする。

 

「お前はこの程度で止まるようなタマじゃねえからな」


 進み出てきたセンチュリーにタイミングを合わせるかの様に、ベルトコーネは後方へと退く動きを止める。それはフェイントであり敵を手元へと引き込むための奸計だった。反転して踏み出すと、二人の距離は必然的に一気に縮まることとなった。

 未だ、ベルトコーネの滅びかけの魔拳は完全に潰えてはいない。今なお常識はずれの威力を宿しており、後のダメージを省みることがないのなら、グラウザーやセンチュリーを相手にする事など造作も無いのだ。

 左手を後方へと引き絞る。右手は眼前へと構え二撃目のモーションに備えている。

 引き絞った左の拳はまだまだ健在だ。たとえ一撃でもセンチュリーの急所にヒットさせれば今度こそ再起不能にできるはずだ。そう認識しているベルトコーネは、絶好のチャンスを得てさらなる攻撃を加えようとしていたのだ。

 ベルトコーネが言う。

 

「無論だ」


 左足を前方へと震脚すると体軸の回転を加えて拳へと勢いを加える。そして、ベルトコーネはセンチュリーに言い放つ。


「この街の全てを破壊し尽くすまで止まらんぞぉ!!」


 ベルトコーネの超音波視覚が正確にセンチュリーを捕える中、逃げることは不可能に思えるほどに絶妙なタイミングと位置関係で、ベルトコーネの左拳は放たれようとしていた。

 

「死ねぇ!」


 懐に構えた拳を発射される弾丸のように一気に解き放つ。その魔拳がセンチュリーの頭部にヒットしたならそれは間違いなく悲惨な結果をもたらすだろう。絶望がこの街に襲いかかり、最悪の悪夢でこの戦いを締めくくることになるのだ。


「そいつぁ御免こうむる」


 その言葉がベルトコーネの抱いた邪悪な確信を敢然と拒絶する。そして次の瞬間、ベルトコーネが自らの背後に感じたのは予想外の位置から姿を現したグラウザーである。

 

「まだ終わっちゃいない!」


 グラウザーが両腕を構えている。右腕のブレードは収納され、その構えはボクシングのジャブを思わせるシルエット。肉眼ではない超音波視覚であるがゆえに後方への視界を確保する事は容易いことだった。

 それは思い切り離れた位置からの踏み込みであり、ベルトコーネが光学視界で無いが故に可能だったあまりにダイレクトなフェイント攻撃である。


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