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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/グラウザー編
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Part13 神の雷/恐怖と異変

 グラウザーは一気に駆け出した。

 右手から伸張させたパルサーブレードを左上に胸の前に交差させる様に構えると敵の懐へと一気に飛び込んでいく。センチュリーやアトラスのようにダッシュローラーは無いが、それを補って余りあるフットワークと跳躍力が超人の如き俊足を可能にしていた。

 

「行くぞ!!」


 気合一線、ベルトコーネの前方10m程から跳躍すると至近距離に肉薄してそのまま敵を袈裟懸けに切りつけようと試みる。その際にグラウザーの2次武装装甲アーマーギアに備えられた拡張機能が巧妙に動作を開始していた。

 

【 アーマーギア武器管制システム      】

【        コントロールシークエンス 】

【                     】

【 >膨張性高周波振動サーベル       】

【          〔パルサーブレード〕 】 

【   ⇒展開完了             】

【   ⇒高周波振動開始          】

【 >マルチパーパスレーダーブロック    】

【   ⇒右腕部高周電磁波、出力アップ   】

【   ⇒高周波を内部バイパス       】

【    パルサーブレード全域にて発信開始 】

【 >機能合成               】

【    〔ショックハレーションブレード〕 】

【   ⇒作動開始             】


 パルサーブレードは金属高分子に通電することで膨張する特殊金属でできている。その際、構成金属が通電中に高周波振動を起こすのだが、それがブレードの斬撃力を強化する効果がある。だがグラウザーのアーマーギアにはフィール譲りの高周波発振機能が備わっていた。その機能をパルサーブレードに機能合成してブレード全体で高周波発振を行う。これによりさらなる斬撃の強化が可能となるのだ。

 グラウザーが持っている機能は、何もないところから生まれたわけではない。

 アトラスから始まって一つ一つ積み上げられたものの蓄積のその結果であるのだ

 それに加えてさらなる機能を行使する。


【 >MHDエアロダイン推進装置      】

【     〔エアジェットスタビライザー〕 】

【  ⇒機能作動開始            】

【   全身各部エアダクト内MHDユニット 】

【            <作動スタート> 】

【  ⇒MHDエアロダインジェット     】

【              気流生成開始 】

【  ⇒推進力発生             】

【     ――加速スタート――      】


 それはセンチュリーのウィンダイバー、フィールのマグネウィングの機能開発から生み出された装備だ。アーマーギアの各部に備えられたエアダクト構造。その内部に備えられたMHDエアロダインジェットユニットによるプラズマ電磁推進により常識を遥かに超えた加速移動を可能にする物だ。

 グラウザーはエアジェットスタビライザーの機能を加える事で、さらなる加速を生み出すと瞬時にベルトコーネとの間合いを詰めて斬撃の射程距離に捕える。そして振りかぶったブレードをベルトコーネの首筋へと斬りつける。

 

「ここだぁっ!!」


 破損した右拳を庇うように左腕を構えていたベルトコーネだったが、グラウザーが発揮したその神がかりな速技に防御行動を取るのは、誰が見ても困難だった。グラウザーのブレードを躱しきれずに袈裟懸けに切り捨てられる――、誰の目にもそう写ったに違いない。

 しかし、奥の手を有していたのはベルトコーネも同じである。ブレードを払おうとベルトコーネの左腕が跳ね上がる。その回避行動に加えてベルトコーネはさらなる絶技を繰り出すこととなる。

 

――ブゥゥンッ!――


 鋭い風切音をたててグラウザーの右腕のブレードが空を切った。その切っ先がベルトコーネを捕えることはない。その時、グラウザーの眼前で展開された絶技、それは日本の武術家が発揮する歩法術の一つ〝無足〟にも似ている物で、グラウザーの方を向いたまま姿勢を崩すこと無く、後方へと瞬時に退いて見せたのだ。

 だがそれは秘術でも魔法でもない。ベルトコーネにとって極当たり前の技であり機能であったのだ。

 

「なっ?」

 

 驚きを声にする間も無いくらいに返す刀でベルトコーネへと斬りかかる。だが、それすらもベルトコーネはまるで幽鬼の様に捉えどころのないままに逃げ続けるのだ。

 

「くっ、くそっ!」


 思わずグラウザーが口惜しげに声を漏らした。何度ブレードを振るおうとも、固有機能を駆使して加速しようとも、その剣先はベルトコーネには届かなかった。その理由に気づいたのは離れた位置から二人の戦いを見ていたセンチュリーである。

 

「離れろ!」


 裂帛の気合で怒鳴りつける。戦いの中で焦りを抱くことの危険さをセンチュリーはその長い経験から知り尽くしていた。その兄からの声にハッとなり冷静さを取り戻す。そして逆方向へとステップを踏んでベルトコーネから距離を取る。体制の立て直し、戦略の練り直しが必要な状況なのは明らかである。

 

「――!」


 無言のまま驚きと苛立ちを、その全身から立ち上らせるとグラウザーはベルトコーネに感じた疑問を口にしていた。

 

「何だ今のは?」

 

 グラウザーが疑問を抱くその姿にベルトコーネは一切の焦りも戸惑いも見せない。沈黙したままグラウザーを冷ややかに睨み返すだけだ。

 かたや――、眼前で展開された謎の絶技の正体について、思案を巡らせていたのはセンチュリーであった。彼の目の前で、ベルトコーネとグラウザーの間で繰り広げられていた事実と現実に対して直感を働かせた。

 

「てめぇ、そこまで〝機能〟を使いこなせるのか?」


 センチュリーが勘に基づく判断を口にする。その言葉にニヤリと笑うのはベルトコーネだ。

 

「使って見せれば俺の固有機能の正体がバレる恐れがあるからな。今までは使わなかったが、すでにバレている現状なら隠す意味など無い」


 そして。両の拳を眼前に構えるとフットワークと速度に特化したキックボクシング系のスタンスへとスイッチする。それが意味するのはこれまでのパワーファイトから、スピード重視のラピッドファイトへの、ファイトスタイルの変化である。その事実がすぐに理解できていたセンチュリーの口からは、グラウザーへと何よりも強い警告が告げられたのである。

 

「逃げろ! グラウザー!!」


 それはセンチュリーが初めて見せる〝恐怖〟であったのだ。

 

 その〝異変〟はシェン・レイの方からも即座に見えるものであった。

 ベルトコーネが見せた〝隠し技〟の正体。その事実をにシェン・レイも驚きと不安を口にせざるを得ない。


「まずい――」


 急がねばならない。

 今こそ、あの狂える拳魔の力を封じるために――

 シェンは一気に走り始めた。 


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