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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/グラウザー編
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Part12 SOLVER―解き明かす者―/喝破される事実

【 全自動装着プロセス作動完了       】

【 ⇒ 最終チェック開始          】

【  装着装備品、2次武装装甲構成要素   】

【  高速チェック完了:エラー確認無し   】

【                     】

【      ――状況終了――       】

【                     】

【 2次武装装甲オプショナルアーマーギア  】

【     全装着プロセス『完成』     】



 今、グラウザーの視界の中をライトグリーンのフォントでインフォメーションメッセージが流れて行く。


――状況終了――


 その言葉の意味が示すところは一つだ。 

 2次武装装甲、オプショナルアーマーギアの完成である。

 急速に意識はクリアになり、制限下にあった変性意識は準トランス状態から極めて高揚し、あらゆる負荷に対して高い抵抗力を持つ高次γ波状態へと移行することとなる。

 周囲状況を速やかに認識し行動を開始する。すなわち――

 

「ベルトコーネ!」


――グラウザーの視線はただ一つの排除対象だけを射抜くように睨みつけていた。

 己の中から湧いてくる〝確かな力〟

 いかなる困難も理不尽も跳ね返し、押し寄せてくる巨大な〝悪意〟をも叩き潰す意思。

 それが今のグラウザーがその身にまとった〝白銀の聖鎧〟の存在意義であった。

 

 白銀とブルーを基調とした鋭角的なシルエット――

 時に頑強で防御力に満ち溢れ、時にスピードを持ってしてあらゆる障害を踏破するだろう。

 両肩にそびえる大型のショルダープロテクター、そこに記された秘文はその聖鎧を建造した者たちによる銘を刻んだものである。

 

[     JAPAN POLICE     ]

[      DEPARTMENT      ]

[                     ]

[       ARMORED       ]

[  ANDOROID OFFICERS  ]

[    ――NUMBER #7――    ]

[     < GLOUSER >     ]

[                     ]

[   MANUFACTURED BY   ]

[    2nd SCIENTIFIC    ]

[ POLICE LABORATORIES ]

[                     ] 

[    The G-PROJECT    ]


 そして、そのアーマーの両肩には日本警察に所属する事を証明する金色の『桜型のエンブレム』が輝いていた。

 今こそ、そのアーマーは威容を持って悪意の権化に立ちはだかろうとしていた。

 両足を大地に突き立ててしっかりと立ち、両拳には精一杯の力が込められている。そして光り輝く2つの怒り目が尽きぬことの無い、清廉な怒りと闘志を現していた。

 犯罪者よ、今こそ識るがいい。

 その姿こそは法執行者による『正義』の象徴である。

 

 グラウザーはそのアーマーシステムのセンサーが提供する拡張された視界の中、冷静に冷徹に周囲状況を把握し行動対象を認識していた。そして無論、今なすべきことを忘れる事もない。グラウザーは今、己がなすべき行動を高らかに退廃の街の片隅の戦場にて宣言したのである。

 

「日本警視庁所属、特攻装警第7号機グラウザー、現時刻を持って2次武装装甲システムの装着に成功、同時刻より2次武装装甲の運用による戦闘行動を開始する」


 そして数歩ずつその全身の機能を確かめるように、グラウザーは歩きはじめる。それはこれからも続くであろう、長く果てしない戦いの日々の始まりでもあった。それを無意識の内に覚悟しつつグラウザー走り始めた。

 

「排除目標、マリオネット・ディンキー一味残党、個体名ベルトコーネ。その犯罪行為による被害者の拡大の阻止のため、今こそ破壊する!!」


 その宣言こそが、グラウザーの闘志のアクセルを全開にするキーであった。

 アーマーの全てにあまねく張り巡らされた力のネットワークが作動を開始する。ほとばしるほどのあふれるパワーは奔流となり稲妻となり、ハイテクメカニカルボディの隅々まで目覚めさせる。見るものを圧倒するほどの気迫と電磁ノイズを放ちながら、グラウザーは一気に走り始めたのである。

 一般捜査活動用の普段の姿のときとは全く異なる、鋭いまでの疾走は〝超人〟と形容するに相応しい速度を秘めていた。排除対象であるベルトコーネをその視界の中に捉えつつも、兄であるセンチュリーの元へと一気に駆け寄っていった。その目に留めた兄の姿は明らかに重篤な負傷をしている。そのシルエットに欠けているのは右腕の部位だった。

 

「センチュリー兄さん!」


 その声に気づいたのはセンチュリーだけではない、ベルトコーネも宿敵が見せた変容に僅かながらも戸惑いと驚きを、その表情の一端に垣間見せていた。センチュリーに対して振り上げようとしていた拳を止めると、闘争本能が発する警戒心からか、後ずさるようにその場から離れて、生まれ変わった姿のグラウザーと一定の距離を取る。その構えが微妙に変化し両の拳を持ち上げて、攻防どちらにも即座に移れるように身構えている。

 センチュリーもベルトコーネのその変化を視界に捉えつつ、背後から現れた生まれ変わった姿の弟分には驚きを隠せなかった。

 

「大丈夫ですか? 兄さん!」

「グラウザー?!」


 センチュリーの背後から現れると、負傷した兄を背中に庇うようにベルトコーネとの間に割り込み立ちはだかる。その頼もしくも変化した姿にセンチュリーは語りかけた。

 

「随分とかっこよくなったじゃねえか」

「はい、大久保さんたちが力を貸してくれました」

「あとで思いっきり感謝しておけよ」

「もちろんです。でも――」


 センチュリーはグラウザーがすべてを言い終える前に言葉を遮った。

 

「心配すんな。右腕一本くらい安いもんだ。これくらいケガの内に入んねえよ」


 軽々と飄々とした口調で言い切るセンチュリーにグラウザーもそれ以上は何も問い詰める事はできなかった。やせ我慢でしか無いのだが、それすらも今となっては頼もしく見えるのは豊かな経験に裏打ちされた確かな存在感に他ならなかった。


「それより――」


 センチュリーはグラウザーとベルトコーネを交互に眺めながら、よく通る低い声でグラウザーとベルトコーネの双方に語りかけた。

 

「腕一本、コイツにくれてやったかいがあったぜ」


 センチュリーの言葉にグラウザーが反応する。

 

「やっぱり兄さんも気づきましたか」

「あぁ、やっと確証が得られた」

「僕もです。ずっと引っかかっていた疑問が解けました」

 

 特徴的なニュアンスのその言葉にベルトコーネは怪訝そうにセンチュリーを睨みつけた。


「無意味な虚勢だ」

「虚勢じゃねえよウスラデカ! お前に右腕を粉砕されたことでお前がこれまで見せてきた馬鹿げたまで頑丈さや破壊力に仕掛けられた〝トリック〟が解ったんだよ!」


 そしてセンチュリーは会心の笑みで挑発していた。相手への心理的プレッシャーも計算しながらこの場のイニシアティブを掌握する。間髪置かずに一気にまくし立てる。

 

「おめえ手の内見せすぎなんだよ! あれだけ物理法則無視したパンチで何もかも壊しまくれば、お前のその拳のインパクトがあまりに不自然だってのは誰でも分かることだ。そもそもだ――、俺の腕にしこまれた倍力装置による最大インパクトは数十トンくらいは行く。この間の有明1000mビルの戦闘ではコナンの奴とやり合ったが、俺の右腕の打撃で粉砕されたアイツの惨状から俺の拳打の威力はお前にも解っていたはずだ。

 しかしだ――

 今日の俺はタイミングを焦って半分以下のインパクトしか出せてねえ。良いとこ10トンちょっとくらいだろう。だがお前は有明での威力を想定して攻撃してきたはずだ。数十トンと10トン、どっちが重いか、考えなくても一目瞭然だ。圧倒的な質量差に俺の右腕は〝押し潰された〟んだ! 本当なら同程度の質量で弾き飛ばすくらいがおめえとしちゃ理想だったんだろうが予想外の事態で手の内が露見することになっちまった。つまりだ。お前は『質量を自在にコントロール』できるんだよ!!」

 

 大声で喝破するセンチュリーの声に続いて、グラウザーも語り始めた。

 

「しかもお前は、拳だけでなく全身各部で自由自在に仮想質量を発生させられるのみならず、自らの内部で生じさせた質量を任意のベクトルで慣性移動させることも可能なんだ」


 アーマーギアの頭部メットの電子アイ越しにベルトコーネを注視して言葉を続ける。


「例えば、敵から加えられた物理攻撃に対して、それと同等の仮想質量で、敵の攻撃と打ち消し合うようなベクトルの慣性制御を生じさせて、敵の攻撃を無効化することも可能だ。打撃・衝撃・斬撃、あらゆる物理的攻撃に対する鉄壁の防御にもなりうる! 今までお前がどんな攻撃を食らっても致命的な損傷を受けることがなかったのは、質量相殺を駆使することができたからだ! つまりお前は『質量制御能力』が凄いのであって、お前本来のハードウェアボディは一般的なアンドロイドと比べて多少強いと言うだけにすぎない。だからお前は打撃以外の攻撃に対して遅れを取るんだ! お前の焼けただれたその姿が何よりの証拠だ!」


 グラウザーの指摘に続けてセンチュリーがさらに叫んだ。

 

「しかもだ――

 お前は敵の攻撃を防御する際には、敵から加えられるであろう攻撃をある程度認識している必要があるんだ。どんな攻撃が来るか分かっていなければ同等の質量制御で打ち消すことは不可能だからな。しかしそれが故に〝認識できていない予想外の攻撃〟については、打ち消すためのプロセスを行うことが間に合わない! そのためキサマは不意打ちや偶発的に行われた攻撃には徹底的に脆い弱点があるんだ。その脇腹に開いているぶっとい刺し傷のあともそれを証明している!」

 

 センチュリーが鋭い口調を浴びせかければ、グラウザーも負けては居ない。

 

「それに加えてお前は、慣性質量制御のカウンターで打ち消すことのできない火炎瓶攻撃の様な絡めての攻撃には防御する術を持たない! ガチで真っ向から向かい合わずに、お前の慣性質量制御能力の隙をつけば、お前を攻略することは十分可能だ! 今なら! いや、今こそ! 僕の力がお前という災厄を完膚なきまでに破壊する!!」


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