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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]《ショート更新Ver.》  作者: 美風慶伍
第2章エクスプレス サイドB① 魔窟の洋上楼閣都市/グラウザー編
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Part11 ――変身――/第2科警研動く

 その日、第2科警研所長の新谷はすでに帰宅の途に付いていた。

 中央高速を走り世田谷方面へと向かう。そもそも第2科警研の全職員は身辺警護の関係上から警視庁管内に居住する事を義務付けられている。新谷はもともとは千葉の方に住んでいたのだが警視庁に促されて夫人と一緒に第2科警研所長に就任する際に引っ越したのである。

 今日はさしたる緊急の研究案件も無かったため夕方6時には帰宅準備ができた。久しぶりに自宅で飯が食えると安堵していた――そんな時である。胸ポケットの中のスマホが着信音を放つ。嫌な予感にかられながら新谷は電動動力仕立ての自家用車の電子コンソールに声をかける。


「電話」


 その声を受けて無線経由で車のコンソールシステムが通話をつなげる。通話の相手も表示されている。

 

【 着信有り                】

【 発信者:第2科警研・大久保       】

 

 新谷は電話の向こうに陽気に声をかけた。

 

〔どうした! 何があった? 大久保〕

〔所長、帰宅中すいません。東京アバディーンのグラウザーから緊急要請です。2次武装システムの遠隔装着を依頼されました。許可願います!〕

〔なんだとぉ?!〕


 大久保から語られる言葉に新谷は驚愕する。

 

〔正気か? まだ自動装着も成功していないんだぞ?!〕

〔それは俺もアイツも解っています! ですが今、現場で〝あの〟ベルトコーネとやり合っているそうです! グラウザーが劣勢で、ベルトコーネを排除できなければ今度こそ終わりです!〕

〔やり合っている――ってグラウザー一人でか?〕

〔はい〕


 新谷は状況の深刻さに肝が冷える思いだった。最大のピンチだが、それはチャンスでもあった。失敗続きだった2次装甲自動装着への緒がつかめるかもしれない。それを技術屋としての勘で悟ると大久保に告げる。

 

〔分かった! 責任はこっちで取る! なんとしても成功させろ! 警視庁本庁にはワシが話す!〕

〔ありがとうございます。早速開始します!〕

〔武運を祈っとるぞ!〕


 通話は大久保の方から切れた。間髪置かずに新谷は呉川主幹に連絡をつなぐ。

 

「呉川に電話だ!」


 車の電子コンソールシステムが音声を判断して電話を呉川技術総主幹へと繋いだ。電話はすぐに繋がる。

 

【 通話接続:第2科警研・呉川友康     】


〔俺だ! どうした? 新谷?〕

〔呉川、今どこだ?〕

〔研究所を出て帰宅途中で飯食ってるよ。ラボには大久保が残ってるぞ〕

〔食事中すまんが急いで戻ってくれ! グラウザーの2次武装システムを遠隔接続で装着する事になった〕


 呉川も新谷から告げられた事実に驚いたのだろう。突拍子もない声を上げた。


〔はぁ!? 何を言っとるんだキサマ、正気か!〕

〔正気だ! 冗談でこんなこと言っとらん! グラウザーが東京アバディーンの現場であのベルトコーネとやり合ってるそうだ! 押され気味で劣勢だそうだ〕

〔そのための切り札ってわけか〕

〔そうだ。今から研究所にもどって大久保のやつをサポートしてくれ。俺はこのまま警視庁に向かって特攻装警運営委員会に説明してくる。なにしろ〝あの〟アーマーはまだ現場運用は未承認だからな!〕

〔わかった。こっちは任せろ。委員会の強面の相手は任せた〕

〔それが一番骨なんだがなぁ〕

〔何を言ってる! それができるのはお前しかおらんだろう!〕


 新谷は、冗談を言い合いながら通話を切ると自家用車のハンドルを一路警視庁へと向けた。そして、車の電子コンソールへと語りかける。

 

「電話だ。警視庁の杉原副総監に繋いでくれ」


 新しく特攻装警運営委員会メンバーに就任した警視庁副総監へとコールする。

 

「やれやれ、また帰宅が遅くなるな」


 今夜もまた深夜までかかるだろう。眠れない夜は終わらないのである。

 

 

 @     @     @



 場所は第2科警研内のある部署。大久保率いるG班の専用研究室である。そこには大久保以下12名が配置されている。それぞれが以前の遠隔接続テスト作業の際の配置で持ち場を担当しており全員が緊張をもって事に当たっている。これはテストではない。失敗の許されない一発勝負なのだ。

 そして、持ち場についた部下に対して大久保が宣言する。


「よし! 所長のOKが出た! これよりグラウザーの2次武装システムの遠隔装着を行う。全員所定配置についているか?」

「全員、配置付いてます」

「機材、立ち上げOKです」

 

 部下から返される言葉に頷きながら更に指示を飛ばしていく。


「回線接続状況は?」

「4号ディアリオを経由して接続完了です。回線余裕率は遠隔接続作業中の平均データ量に対して270%を確保。ピークレベル予測もクリアです」

「グラウザーの体内機能モニタリングシステムから得られている現状情報は?」

「頭部を中心に外部衝撃によるエラー多数発生確認、いずれもリカバリー完了済みですが、人工脊椎システムと中枢頭脳部接続系統に自己回復不可能な故障が4%発生しています」

「当該箇所のバックアップ系統は?」

「グリーンです。順調に稼働中。バックアップ系統を含めた中枢頭脳部接続系統のシステム余裕率は137%を確保」

「137か――」


 大久保が不安げな声を漏らす。

 

「できれば150%以上は欲しいところだが2次武装適用状態での稼働保証限界は115%だからまだ余裕はあるか。当該箇所のシステム余裕率が120%を切った段階で作業を打ち切る。接続セクションだけでなくメイン頭脳と人工脊椎やその辺縁系の負荷状況も確認を念入りに頼む」

「了解です」

「他、異常はないか?」

「メインリアクター部、プラズマハート本体部分、及び周辺系、異常ありません。稼働状況グリーンです」

「視聴覚系、外部通信回線制御系、全身皮膚感覚系、深部体内感覚系、いずれも正常範囲内!」

「先程確認された損傷部による痛覚フィードバックは?」

「発生していますが、リミッターにより通常範囲値内に収められてます。グラウザーのメンタルに支障は起こらないと思われます」

「それと骨格系統若干の歪みが発生していますが運動行動に支障はありません。正常誤差範囲内です。まぁ、作戦完了後に補正作業は必要でしょうがね」

「電動性人工筋肉、及び、簡易消化代謝機構異常なし。別部分への影響も発生なしです」

「その他、付加機能系の各デバイスごとのステータス、いずれもグリーン! 問題なし!」

 

 部下からのそれらの回答を耳にすると、大久保はさらに語る。

 

「頭部を集中的にやられたようだが胴体部分に影響が少ないのは僥倖だったな。2次武装周辺系統は?」

「電磁レールガイド発生機構、分子分解再構成機構、分子間隙圧縮収納機構、いずれもOKです」

「拡張系感覚系統OKです!」

「中枢神経系体外接続ターミナル系統に一部異常確認、バックアップ系統に手動で切り替えて再チェックでクリアです」

「メイン動力外部バイパス、及び、外装動力同調機構、問題なし!」

「メイン戦闘プログラム、及び、BOシステム、全ルーチンチェックOK、遠隔強制起動いつでもOKです」

「よし全項目チェック完了。総合判断としてオールグリーンとする。グラウザーの全システムの動作状態のログレコードは記録されているか?」

「ログレコード記録すでに始まっています。頭脳系、人格系、身体信号系、装備系、すべてOKです」

「よし、2次武装の解除までログ記録は続行する。今後の研究開発の重要な資料となる。いかなる情報も漏れなく拾い集めろ」

「了解です」


 今回の遠隔制御作業の記録情報は、グラウザーや他の特攻装警の開発研究を継続するためにも重要な情報資産となる。今後、似たような戦闘プログラム制御システムの開発をよりスムーズなものにしてくれるはずなのだ。

 そして全員に気合を入れるべく、大久保はひときわ高く宣言した。

 

「それではこれより、特攻装警グラウザー専用2次武装装甲システム、装着プロセスの遠隔操作を開始する! 状況スタート!」

「了解!」


 スタッフの意識はそれぞれが担当するモニターへと向いた。

 今まさに乾坤一擲の賭けは始まったのである。


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